魔道士(予定)と奴隷ちゃん

マサタカ

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二十章

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 ルナと二人で、モリクを拘束しながら話しあう。エルフに魔法士の封じるやり方がどこまで通用するか。できるだけ念入りに越したことはない。

「なぁ、ルナ。そういえばモリクの外見が変化した理由って結局なんだったんだ?」
「え? あ~。それはですねぇ。ある意味呪いの副作用によるものです」
「?」
「呪いというのは、ずっと使い続けていれば心身を蝕んでしまいます。そのせいで外見が醜く変貌していってしまうのですよ」
「うん?」
「誰かが許せない。呪ってやるという汚い感情を用いていますから、術者本人にも影響を与えてしまうんです。ある意味誰かを呪うという行為を続けることで、性根の腐り曲がりきって心が反映されてしまうのではないか、と」
「興味深いな。けど、現に俺達が最初会ったときはもっと違ったろ?」
「それは幻惑の魔法か別のやり方で姿を変えていたのでしょう。『呪い返し』の影響でそれが維持できなくなった、本当の姿が晒されてしまったと私はかんがえました」

 そういうことか。けど、自身の姿すら変えてしまうなんて。改めて呪いはおそろしい。安易に手を出さないほうがいいんだろうな。

 けど、もし。もしも魔法に応用できたら。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ぐるぐる巻にされた上で何重にも魔法・呪い封じの印を施されていくモリクを、何気なしに見つめてしまう。モリクはこの後、ガーラ様に引き渡す。どんな罪で罰せられるかは不明だが街の反乱を誘発し、大混乱をおこしたんだから下手したら死刑もありえる。

 許せない相手だが、それはそれでもったいない。こいつからエルフの魔法、そして呪いを聞き出せれば。俺の研究に利用できるのでは?

「報酬の代わりにこいつを――――」
「ところで先輩。私も聞きたいんですけど。どうして最後モリクはなにもしないまま苦しんでいったんですか? 魔法が弱くなっていったんですか?」
「あ? ああ。あれは『呪い返し』だ」

 そんなことより、今後モリクを――――

「それじゃあ意味がわかりません。先輩アホですか?」
「・・・・・・・・・モリクの魔法に呪いが含まれているのはわかってたろ? それでおもいついたやり方だ」

 呪いと魔法の組み合わせである『逆探知』を発動できるということは、隅々まで理解しているということ。つまり、同時に逆のこともできる。分解だ。

「え? エルフの魔法を分解したんですか・・・・・・?」

 厳密には違う。分解に導いたってだけの簡単な方法。勿論、モリクの放ってきた魔法を全部理解して分解できるわけがない。『逆探知』を創るとき覚えられたエルフ文字にはかぎりがあったし、なにより流れこんできた呪いに阻まれた。

 けど、俺が『逆探知』で覚えたエルフの構築法。文字。くせ。完全に理解できている、一部分。それと同じ箇所と照らし合わせていった。照らし合わせた部分だけ制御を奪い、消し去ったんだ。

 魔法の構築法が所々欠けてしまったらどうなるか? 魔法は維持できずに段々と崩れていき、最後には分解され、消滅してしまう。


「なるほど、そこまではわかりました・・・・・・・・・言いたいことはたくさんありますけど・・・・・・」

 そして、あえて完全に消滅しきる前に制御をとめた。そうすれば制御はエルフに戻る。形的には、エルフが自分の魔法を分解し消滅させたということになる。残っている呪いも消滅していく。

 本人の意図しないやり方で。

「・・・・・・つまりモリク自らが呪いを壊させるという風にして、呪いの反動を引き起こさせる。呪具を壊したときの『呪い返し』を再現したってことですか・・・・・・!?」
「そういうことだ」

 ルナが蒼白になりながら、唖然としている。

「あとは『呪い返し』のせいで、モリクは徐々に弱っていった。最後には魔法も呪いも使えないくらいにな。逆に俺は弱くなって制御しやすくなった魔法と呪いに同じようなことを繰り返したってことだ」
「え。あの『逆探知』魔法って初めての試みでしたよね? それ覚えられたんですか?」
「ああ」
「エルフの魔法の理論も大まかに掴めたと?」
「全部じゃねぇよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・それで、呪いの反動に苦しみ続けながら分解に必要な要素を満たしていったと? 構築に必要な箇所を消していくこともできたと?」
「死にそうだったけどな」

 いつの間にかルナの手が止まっている。いやいやいや。そんなこと、とブツブツと呟いている。

「ちなみにそれっていつおもいつきました?」
「建物から出てモリクの魔法の制御奪おうとしたとき」
「ほぼ土壇場ってことじゃないですか! 失敗してたら私死んでたかもしれないってことじゃないですか!」
「たしかに。もうちょっと様子見してじっくり観察してたほうがもっとスムーズにできたかもな。まぁでももし次があったとしたら通用するかどうか自信がない。モリクの魔法と呪いだったからできたけど、他のエルフは同じじゃないだろうし」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そもそも『逆探知』もまだまだ応用できそうだし。なんだったら俺の魔法にも組み入れられるかもしれないし。どっちにしろ今後の課題だ。呪いの仕組みも改めて調べたいし」
「・・・・・・・・・先輩。あなた頭おかしいです」
「なんでだよ!」

 ルナに抗議するけど、なんかドン引きしてる。顔が引き攣ったまま固まってしまってて愛想笑いすらない、恐怖をいだいてるって顔。

「いや。だって。普通自分も痛いおもいをする、苦しむってわかってるのにそこまでできませんよ? 軍人さんじゃあるまいし。私だったら絶対お断りです。無理です。命じられても脅されてもしません」

「普通は自分の身と命が第一優先でしょう?! 死んだら研究もできないし魔道士にもなれないし幸せな人生も遅れないんですよ!?」
「それでも・・・・・・自分の命だけですむんだったら安いものじゃないか?」
「だめだぁ! この人話が通じない! こわい! 誰かあああ! 通訳を呼んでくださいいいい! もしくはお医者様をををを!」
「うるさい。さっさと手を動かせ」
「うわああああああ! それでいて変に常識兼ね備えているところがタチ悪いいいいい!」

 そうやって一方的に騒いでいたルナを叱って作業を再開。なんとか終わったけど、最後まで明らかに警戒してるって距離を保っているのが解せない。

「先輩って絶対早死にします。賭けてもいいです。それか偉大な魔道士になるか危険人物になるかのどっちかです」 

 失礼な。

「先輩に付き合っていたら命がいくらあっても足りません。あの奴隷ちゃんが不憫です。いつか先輩の無茶に付き合わされて命を落としそうです」
「しないよ。あの子にそんなことさせない」

 あ、そうだ。ルウは今どこにいるんだろうか。ガーラ様を連れてどこに行ったのかわからない。『念話』で、ルウに語りかける。



       ―――――ルウ、いまどこにいるんだ?―――――― 
 

   ――――――――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・――――――――

「あれ?」

 返事がない。というかルウから拒否されている?

「先輩、ところでこれからどうします? お屋敷に戻ります?」
「あ!」

 まだ屋敷にやってきていた暴徒達を忘れていた。まさか、と最悪の状況を想定してしまう。ルウとガーラ様は移動中に暴徒に襲われたんじゃないか?

 それか呪いと化しているガーラ様自身がモリクを倒したことで暴走を? それでルウが『念話』できない状況に陥っているとしたら?

 サァ~ッと顔から血の気が失せていく。

「ルナ! こうしちゃいられない! モリクを下ろせ!」
「ほえ?」
「『逆探知』でガーラ様を探すんだ! 急げ!」
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