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二十一章
Ⅵ
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住む慣れた我が家に戻る。愛しのルウと二人っきりの愛の巣だとはっきり自覚するとドキドキがとまらない。
「じゃあこれなんていいんじゃないかな?」
ルウではない誰かとの話し声に、盛り上がっていた気分が一息に鎮火していく。下がりすぎて殺意に切り替わりかけた。
「ルウ、誰か来てるのか?」
居間に踏み入れると同時に、誰かの正体なんて頭からすっぽ抜けていた。
「あ、ご主人様。お帰りなさいませ」
ルウはいつもの奴隷の服ではなく違うものを身に纏っていた。貴族の令嬢にふさわしいドレス。決して派手すぎず、かといって地味ではない。白一色ではあってもあちこちに装飾されている花の刺繍とフリフリとしたレースが実によく似合っている。
え、絵画?
「ご主人様?」
「うわぁ!! 芸術が喋った!!」
「なにをとんちきなことをほざかれているので?」
あ、間近で見るとルウだ。ぴょこんとしている耳に半分閉じられた瞼。けど、唇はいつもより赤くなっていて艶々としている。それだけじゃなくて化粧もしている。それに、いつものルウとは違った香りが鼻腔を擽って、胸が弾む。
「んんんんん・・・・・・・・・結婚したい・・・・・・」
「なにゆえ泣いているのですか?」
俺としてはずっとこのまま幸せ心地のままルウの姿を拝んでいたいんだけど、当のルウが許してくれない。
「どうしたんだ、その格好は? それにさっき誰かの声が聞こえたけど」
「って僕の姿が見えてなかったの!?」
机を叩く音に、ビクついてしまう。見覚えのない女性が座っていた。
「こちらはシエ――――シエ子様です。シエナ様のお友達で私の相談にのってくれていました。この服も元々はシエ子様のものです」
「ちょ、ルウ!?」
「へぇ。シエナの。はじめまして。シエナの友達のユーグです。いつもお世話に」
「あっさり信じちゃってるし・・・・・・」
? なんか一人で叫んでるけどどうしたんだろう。
「第一どうして嘘なんてついたのさ」
「それではシエナ様が任務以外で女装をしている変態になりますがよろしいので? 私の心配りなのですが」
「それは・・・・・・ありがたいけどさ。それにしてもユーグのやついくらなんでも信じ杉じゃないかな?」
「それだけシエナ様がいつもと違って可愛らしい女性にしか見えないということです。自信を持ってくださいな」
「え、えへへへ・・・・・・。ありがとう」
二人でなんかこそこそと内緒話をしているけど、とてつもない疎外感で寂しい。
「こ、こほん。改めまして。私シエ子と申します。シエナ様を通じてルウとは親しくお友達としてお付き合いをしております。以後、よろしくお願いいたしますわ」
ルウに友達。それも女性の。こんなにしっかりとした子がいたなんて。あれ? また泣きそう。
「あの、ユーグさん? 私にどこか見覚えは?」
「え、初対面でしょ?」
「はああああぁぁぁぁぁ・・・・・・(クソデカ溜息)」
「それで、どうしてルウがあなたの服を?」
「・・・・・・ええ。それは僕――――私が提案いたしましたの。普段と違う服装をなさってみては? と。この子は遠慮したのですが」
「ははぁ、なるほど」
「そうしてみたらお化粧もしたくなりまして。私も途中から楽しくなってまいりましたわ」
「ありがとうございます。バッチグーな仕事してくれましたね」
「まぁ。そのサムズアップを叩き落としたいくらい嬉しいですわ」
「ところで、いつあなたとルウは知り合ったんですか?」
「え~~っと、それは・・・・・・」
「今日買い物帰りにシエナ様にお会いしまして。そのときシエ子様もご一緒だったのです。それから意気投合しまして」
「そう! そのとおりですの! ええ!」
「へぇ。あいつ隊長になったのに相変わらず女の子と遊んでいるのかぁ」
それにしても、ルウがあっさり意気投合するなんて。それだけこの子が良い子だってことだろうか。俺とルウとの関係を振り返ると、嫉妬してしまいそうだ。
「あなた様のことも、ルウとシエナ様より聞き及んでおります。それについての悩みも」
ルウに聞かれたくないのか、そっと耳打ちしてきた。
「悩み? ルウのですか?」
「ええ。そうですわね。そういったことを相談してくれるくらい、私達仲がよろしくなったんですのよ。ある意味主であるあなた様よりもこの子のことは理解できていると」
「あ"?」
なにをふざけたことを。
「シエ子様? もしかしてご主人様に怒ってますか?」
「え? あらやだなにをおっしゃっていますの? 私がどうしてこの人に怒るのですの? この人が例え親友がいつもと変っていてもルウの変化のほうが大事だからと気づかなかったとしても笑って許すくらいの度量ですわよ?」
「ああ、やっぱり」とルウは漏らしたけど。それよりこの子のほうが俺よりルウを理解しているっぽいことは例え夢幻でも妄言でも認められないな。
「まぁ、たしかに? 出会ったばかりの友達になら話せる悩みというのもあるんでしょうねぇ。けど、俺はあなたよりずっとルウと長くいますから。ルウの尻尾の毛の数だって正確に当てられますよ?」
出会ったばかりの、というところに力が入ってしまった。俺の意図を察したのか、シエ子の眉尻がぴくぴく、と痙攣する。
「まぁ性別が一緒だから悩みを打ち明けやすいという一面もあったからなんでしょうけど。それにしてもやっぱり俺のルウは誰とでも仲良くなって愛される素晴らしい子なんだなって再認識させられましたよ。お礼を言わせてください」
「あの、ご主人様?」
「ええ。ええ。それには同意見ですわ。ルウは素敵な子ですわ。友達である私の秘密もきちんと守って慮ってくださるんですもの。どこかの頭のおかしい親友にも話せない秘密を。主従とは違って強引に命令で繋がっている関係とは違って友情で結ばれておりますもの」
「あの、シエナ様?」
「俺ルウの好きなところ永遠にあげられますよ?」
「数も時間も意味なんてありませんわ。大事なのはどれだけ相手を理解できているかではなくて?」
「お二人とも、なにか変な方向に進んでいませんか?」
「俺、ルウに尻尾触らせてもらえますよ? 時々ペロペロされちゃってますよ?」
「私なんて二人で喫茶店でお茶しましたわよ? 一緒にお着替えもしてお化粧を施しましたわよ?」
「お茶とお菓子を用意してくるのでどうぞご自由に~~」
こうなったら徹底的に話しこまないといけないみたいだな。自然とむかいあって座ると、どちらからともなく、話をはじめる。想い人。婚約者。友達。性別。立場はお互いに違う。
それでも、譲れない一線はある。
婚約者が友達に負けたくないっていう意地。いつ終えるかもしれない白熱した討論。いつしか楽しささえ覚えはじめている。これだけ誰かとルウについて話せるのなんて初めてだ。
そして、討論は予想外の形で幕を閉じた。
「私だったらルウが今一番あなたにかけられたい言葉もわかっておりますわよ?」
「な、んだと・・・・・・?」
「それも魔法なしで」
「く、なんてことだ・・・・・・! 反則じゃないか!」
脳天に雷が落ちた。頭をかかえてる俺に、シエ子は「お~~~ほっほっほっほ!」と高笑いを浴びせる。
く、悔しいが俺の負けなのか・・・・・・!?
「お話は終わりましたか?」
いつの間にか、お茶菓子とお茶を持ってきてくれていたルウ。そんなルウにニコニコとシエ子は抱きつき、あ~~んをし合っている。それは勝者のみの特権で負けた俺にはする資格がないとありありと示していて、
「フッ(鼻で笑う)」
徹底的に、俺は負けたのだと自覚せざるをえない光景だった。
「ちょ、シエ子様。暑苦しいです。離れてください。いつまでなりきっているのですか?」
「あらあら~~。照れなくてもよろしいのよ~~? 私とあなたの仲じゃない~~」
くそ、悔しいぃぃぃぃぃぃ・・・・・・!
爪を噛みながら歯軋りをしてしまう。
「さぁ、シエ子様もご主人様もくだらないことでいつまでもはしゃがないでください。私はもうこの服を脱ぎますので。それで終わりにしてください」
「え!? もう脱いじゃうの!?」
「ええ。動きにくいですし。それにスカートが慣れませんし」
なんてもったいない。シエ子のことは抜きにしても、ずっとその服のままでいいのに。
「可愛くて似合っているのに」
俺の何気ない呟きに、まずシエ子が、そしてルウが反応した。
「今、なんと?」
「え? あ。だからその服をしてるルウはいつも以上に可愛いなって」
「ちょ、ユーグ!?」
「好きだなって。最高に愛してるなって。そうおもったら自然と口から出ていたんだ」
「・・・・・・」
「くそ、負けましたわ!」とその場に崩れ落ちているシエナと反対に、ルウは俯いてしまう。
くるり。ルウがその場で一回転する。しなやかさと鋭さ。とてつもない破壊力を伴った尻尾が顔に直撃する。じいぃぃぃん、としたひりつく痛みを味わう間もなく膝、爪先が腹部、次いで鳩尾に突き刺さる。上体がぐらりとそのまま開かれた拳の真ん中が顎にクリーンヒットして、体が宙に浮いた。
「食事の用意をしてまいります」
スタタタタタァ!! と颯爽と去っていく。シエ子はおろおろとした風に、俺の元へ。
「あ、あの。ユーグ――――さん? 大丈夫ですの?」
「なぁ、シエ子さん。気づいたか?」
「え? なにが?」
「ルウの尻尾がぐるんぐるんしてただろ・・・・・・?」
「え? え?」
「つまり・・・・・・照れ隠し、さ」
「照れ隠しにしては激しすぎませんこと!?」
ふふ、まだまだシエ子は甘いな。あの激しさはつまり俺の気持ちが嬉しかったってことに相違ない。そう考えればこんな痛みなんて屁でもない。むしろ喜ばしすぎて気持ちよさすらある。
「あなた達、この一ヶ月なにがありましたの?」
不安そうなシエ子の声が、頭上から聞こえた。
「じゃあこれなんていいんじゃないかな?」
ルウではない誰かとの話し声に、盛り上がっていた気分が一息に鎮火していく。下がりすぎて殺意に切り替わりかけた。
「ルウ、誰か来てるのか?」
居間に踏み入れると同時に、誰かの正体なんて頭からすっぽ抜けていた。
「あ、ご主人様。お帰りなさいませ」
ルウはいつもの奴隷の服ではなく違うものを身に纏っていた。貴族の令嬢にふさわしいドレス。決して派手すぎず、かといって地味ではない。白一色ではあってもあちこちに装飾されている花の刺繍とフリフリとしたレースが実によく似合っている。
え、絵画?
「ご主人様?」
「うわぁ!! 芸術が喋った!!」
「なにをとんちきなことをほざかれているので?」
あ、間近で見るとルウだ。ぴょこんとしている耳に半分閉じられた瞼。けど、唇はいつもより赤くなっていて艶々としている。それだけじゃなくて化粧もしている。それに、いつものルウとは違った香りが鼻腔を擽って、胸が弾む。
「んんんんん・・・・・・・・・結婚したい・・・・・・」
「なにゆえ泣いているのですか?」
俺としてはずっとこのまま幸せ心地のままルウの姿を拝んでいたいんだけど、当のルウが許してくれない。
「どうしたんだ、その格好は? それにさっき誰かの声が聞こえたけど」
「って僕の姿が見えてなかったの!?」
机を叩く音に、ビクついてしまう。見覚えのない女性が座っていた。
「こちらはシエ――――シエ子様です。シエナ様のお友達で私の相談にのってくれていました。この服も元々はシエ子様のものです」
「ちょ、ルウ!?」
「へぇ。シエナの。はじめまして。シエナの友達のユーグです。いつもお世話に」
「あっさり信じちゃってるし・・・・・・」
? なんか一人で叫んでるけどどうしたんだろう。
「第一どうして嘘なんてついたのさ」
「それではシエナ様が任務以外で女装をしている変態になりますがよろしいので? 私の心配りなのですが」
「それは・・・・・・ありがたいけどさ。それにしてもユーグのやついくらなんでも信じ杉じゃないかな?」
「それだけシエナ様がいつもと違って可愛らしい女性にしか見えないということです。自信を持ってくださいな」
「え、えへへへ・・・・・・。ありがとう」
二人でなんかこそこそと内緒話をしているけど、とてつもない疎外感で寂しい。
「こ、こほん。改めまして。私シエ子と申します。シエナ様を通じてルウとは親しくお友達としてお付き合いをしております。以後、よろしくお願いいたしますわ」
ルウに友達。それも女性の。こんなにしっかりとした子がいたなんて。あれ? また泣きそう。
「あの、ユーグさん? 私にどこか見覚えは?」
「え、初対面でしょ?」
「はああああぁぁぁぁぁ・・・・・・(クソデカ溜息)」
「それで、どうしてルウがあなたの服を?」
「・・・・・・ええ。それは僕――――私が提案いたしましたの。普段と違う服装をなさってみては? と。この子は遠慮したのですが」
「ははぁ、なるほど」
「そうしてみたらお化粧もしたくなりまして。私も途中から楽しくなってまいりましたわ」
「ありがとうございます。バッチグーな仕事してくれましたね」
「まぁ。そのサムズアップを叩き落としたいくらい嬉しいですわ」
「ところで、いつあなたとルウは知り合ったんですか?」
「え~~っと、それは・・・・・・」
「今日買い物帰りにシエナ様にお会いしまして。そのときシエ子様もご一緒だったのです。それから意気投合しまして」
「そう! そのとおりですの! ええ!」
「へぇ。あいつ隊長になったのに相変わらず女の子と遊んでいるのかぁ」
それにしても、ルウがあっさり意気投合するなんて。それだけこの子が良い子だってことだろうか。俺とルウとの関係を振り返ると、嫉妬してしまいそうだ。
「あなた様のことも、ルウとシエナ様より聞き及んでおります。それについての悩みも」
ルウに聞かれたくないのか、そっと耳打ちしてきた。
「悩み? ルウのですか?」
「ええ。そうですわね。そういったことを相談してくれるくらい、私達仲がよろしくなったんですのよ。ある意味主であるあなた様よりもこの子のことは理解できていると」
「あ"?」
なにをふざけたことを。
「シエ子様? もしかしてご主人様に怒ってますか?」
「え? あらやだなにをおっしゃっていますの? 私がどうしてこの人に怒るのですの? この人が例え親友がいつもと変っていてもルウの変化のほうが大事だからと気づかなかったとしても笑って許すくらいの度量ですわよ?」
「ああ、やっぱり」とルウは漏らしたけど。それよりこの子のほうが俺よりルウを理解しているっぽいことは例え夢幻でも妄言でも認められないな。
「まぁ、たしかに? 出会ったばかりの友達になら話せる悩みというのもあるんでしょうねぇ。けど、俺はあなたよりずっとルウと長くいますから。ルウの尻尾の毛の数だって正確に当てられますよ?」
出会ったばかりの、というところに力が入ってしまった。俺の意図を察したのか、シエ子の眉尻がぴくぴく、と痙攣する。
「まぁ性別が一緒だから悩みを打ち明けやすいという一面もあったからなんでしょうけど。それにしてもやっぱり俺のルウは誰とでも仲良くなって愛される素晴らしい子なんだなって再認識させられましたよ。お礼を言わせてください」
「あの、ご主人様?」
「ええ。ええ。それには同意見ですわ。ルウは素敵な子ですわ。友達である私の秘密もきちんと守って慮ってくださるんですもの。どこかの頭のおかしい親友にも話せない秘密を。主従とは違って強引に命令で繋がっている関係とは違って友情で結ばれておりますもの」
「あの、シエナ様?」
「俺ルウの好きなところ永遠にあげられますよ?」
「数も時間も意味なんてありませんわ。大事なのはどれだけ相手を理解できているかではなくて?」
「お二人とも、なにか変な方向に進んでいませんか?」
「俺、ルウに尻尾触らせてもらえますよ? 時々ペロペロされちゃってますよ?」
「私なんて二人で喫茶店でお茶しましたわよ? 一緒にお着替えもしてお化粧を施しましたわよ?」
「お茶とお菓子を用意してくるのでどうぞご自由に~~」
こうなったら徹底的に話しこまないといけないみたいだな。自然とむかいあって座ると、どちらからともなく、話をはじめる。想い人。婚約者。友達。性別。立場はお互いに違う。
それでも、譲れない一線はある。
婚約者が友達に負けたくないっていう意地。いつ終えるかもしれない白熱した討論。いつしか楽しささえ覚えはじめている。これだけ誰かとルウについて話せるのなんて初めてだ。
そして、討論は予想外の形で幕を閉じた。
「私だったらルウが今一番あなたにかけられたい言葉もわかっておりますわよ?」
「な、んだと・・・・・・?」
「それも魔法なしで」
「く、なんてことだ・・・・・・! 反則じゃないか!」
脳天に雷が落ちた。頭をかかえてる俺に、シエ子は「お~~~ほっほっほっほ!」と高笑いを浴びせる。
く、悔しいが俺の負けなのか・・・・・・!?
「お話は終わりましたか?」
いつの間にか、お茶菓子とお茶を持ってきてくれていたルウ。そんなルウにニコニコとシエ子は抱きつき、あ~~んをし合っている。それは勝者のみの特権で負けた俺にはする資格がないとありありと示していて、
「フッ(鼻で笑う)」
徹底的に、俺は負けたのだと自覚せざるをえない光景だった。
「ちょ、シエ子様。暑苦しいです。離れてください。いつまでなりきっているのですか?」
「あらあら~~。照れなくてもよろしいのよ~~? 私とあなたの仲じゃない~~」
くそ、悔しいぃぃぃぃぃぃ・・・・・・!
爪を噛みながら歯軋りをしてしまう。
「さぁ、シエ子様もご主人様もくだらないことでいつまでもはしゃがないでください。私はもうこの服を脱ぎますので。それで終わりにしてください」
「え!? もう脱いじゃうの!?」
「ええ。動きにくいですし。それにスカートが慣れませんし」
なんてもったいない。シエ子のことは抜きにしても、ずっとその服のままでいいのに。
「可愛くて似合っているのに」
俺の何気ない呟きに、まずシエ子が、そしてルウが反応した。
「今、なんと?」
「え? あ。だからその服をしてるルウはいつも以上に可愛いなって」
「ちょ、ユーグ!?」
「好きだなって。最高に愛してるなって。そうおもったら自然と口から出ていたんだ」
「・・・・・・」
「くそ、負けましたわ!」とその場に崩れ落ちているシエナと反対に、ルウは俯いてしまう。
くるり。ルウがその場で一回転する。しなやかさと鋭さ。とてつもない破壊力を伴った尻尾が顔に直撃する。じいぃぃぃん、としたひりつく痛みを味わう間もなく膝、爪先が腹部、次いで鳩尾に突き刺さる。上体がぐらりとそのまま開かれた拳の真ん中が顎にクリーンヒットして、体が宙に浮いた。
「食事の用意をしてまいります」
スタタタタタァ!! と颯爽と去っていく。シエ子はおろおろとした風に、俺の元へ。
「あ、あの。ユーグ――――さん? 大丈夫ですの?」
「なぁ、シエ子さん。気づいたか?」
「え? なにが?」
「ルウの尻尾がぐるんぐるんしてただろ・・・・・・?」
「え? え?」
「つまり・・・・・・照れ隠し、さ」
「照れ隠しにしては激しすぎませんこと!?」
ふふ、まだまだシエ子は甘いな。あの激しさはつまり俺の気持ちが嬉しかったってことに相違ない。そう考えればこんな痛みなんて屁でもない。むしろ喜ばしすぎて気持ちよさすらある。
「あなた達、この一ヶ月なにがありましたの?」
不安そうなシエ子の声が、頭上から聞こえた。
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