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二十一章
Ⅶ
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台所のほうから、小気味の良いまな板を叩く音と炒める音。離れた位置にいるけど、それでも穏やかな時間だって再認識する。シエ子は夕食まで一緒になるつもりなのか、そわそわとしている。
「そういえば、シエナはどうでした? 俺はまだ帝都に帰ってから会えてないんだけど」
ピク、と小さく反応しておかしな表情に。
「気になりますの?」
「そりゃあ、一応親友だし。良いやつだし」
「ほほう」
「帝都じゃあ信頼できるやつ、ルウ以外にシエナしかいないしな」
「ふふん、そうなんですのね」
なんでこの子、どや顔してるんだろう。シエナの友達だから嬉しいのか? というか、あいつって女の子には優しいし紳士的だからモテてるんだっけ。もしかして、この子シエナにホの字なんだろうか?
「それで? あなた様はシエナ様のことをどういう風におもっていますの?」
ぐふふ、と面白がっているシエ子に、正直に伝える。
「困ったやつだっておもってるよ」
「ふふふん。そうなんですのね。困ったやつ・・・・・・・・・ってえ?」
「仕事と研究で忙しいのに自分のこと手伝わせるし。それでルウとの邪魔をされたこともあるし。いつの間にか俺のルウと仲良くなってやがるし」
「へ、へぇ~~」
「何度かあいつのこと焼き殺そうか、決闘を挑もうかって考えたくらい」
「そ、そうなんですのね・・・・・・ぐすん」
?! シエ子のテンションががた落ちして涙目になってる?
「へ、へぇ~~。ユーグさんにとってシエナ様は困ったやつだったんですのねぇ~~」
空になったカップをガチャガチャ音をたてるほど動揺しているのは、わざとじゃないんだろう。それだけショックだったのかな。
「それに、使い魔の研究はさせてくれないくらいケチだし。欲で人をつるし。人のことを頭のおかしいやつ扱いするんですよ!? ひどくないですか!?」
「え、ええ。そうですわね・・・・・・」
「まったく。あいつは困ったやつですよ。そもそもなんで知り合ったのかってことすらこっちは覚えていないんですから」
ガァァァン! とショックを受けたようなシエ子。なんだか表情が次々に変ってて面白くなってきたかも。
「まぁ、でもそんなあいつに救われてる部分もあるからしょうがないのかなって」
「え、救われている、ですの?」
年齢も立場も、仕事も地位も違う。普通だったらそんなやつと出会えない。それでも、シエナは俺の夢を笑わなかった。励ましてくれた。一人で家に篭って研究していたりすると、必ず押しかけて一緒に食事をしてくれるし、酒や相談にものってくれる。
それに、ルウと出会ったばかりだって俺の認識の過ちを指摘してくれた。今となっては、どれだけ大切な存在であったか。
「だから、俺にとっては唯一無二の困った大親友なんですよ。あいつは」
「ふ、ふぅ~~ん。そうなんですのね」
「狡い」「そもそも僕の変装にだって気づかないくせに」と唇を尖らせながら独りごちている。
「恥ずかしいし気持ち悪いからあいつには内緒にしてください」
「ふふふ、うふふふふ」
「?」
「シエナ様は幸せ者ですわね。ルウとユーグさん、とても大切なお友達が二人もいるんですもの」
くすくすと笑うシエ子に、なんともいえない照れくささが。
「と、ところでシエ子さんは、今好きな子はいますか?」
「え? 唐突にどうなさったんですの?」
「いや、実は俺ルウに求婚したんですよ」
「あ~~~。そうでしたわね」
「それで、次の手順に進みたくて」
「手順・・・・・・。ははん、なるほどですわ。今の私は気分が大変よろしいので、なんでもお聞きになって?」
いや、でも初対面の女性に聞いていいのかな、これ。
「さぁ。私をシエナ様だとおもって。さぁ!」
「・・・・・・・・・・・・わかりました。それじゃあ」
妙にキラキラと意気込んでいるシエ子のためにも、意を決して質問する。
「初めて手を繋ぐタイミングっていつがいいですか?」
ゴガシャアアアア!! と机に頭を打ちつけた。
「どういうことかな、ユーグ? いや、ですの?」
口調が少しおかしかったような?
「いや。俺とルウって恋人関係すっ飛ばして求婚して、受け入れてもらえて。それで婚約しただろ?」
「うん」
「だから、夫婦になる前に恋人同士でやることを、この際やりたいなぁ~~って」
「うんうん」
「だから、女性からの視点でいつ頃手を繋ぎたいかって。あ、あとそのときって男から聞いたほうがいいですか? それとも無言でやったら嫌がられないですか? あ、最初は右手がいいですか? それとも左手がいいですか? 指を絡ませるのはいつ――――」
「学生かっっっっっ!!!」
「え、えええええええ!?」
「なんなんだ、ですの! そのういういしすぎる欲望は! 二十歳すぎているのに純情すぎてずっこけたよ、ですわ! というか気にしすぎ! ですわ! 一つだけだとおもったらいくつも怒濤の悩みの連続でお腹いっぱいになるわ! ですわ!」
「ちょ、口調おかしくない?」
「おだまり! きょうび、魔法学院、いえ。下手したら普通の学校の子供よりも遅れてますわよ!?」
「え、嘘!?」
普通の学校っていったら俺も通っていた七~十二歳ぐらいの子供が通う!? 嘘だ、だって俺がそれくらいの頃なんて。
「つまり? ルウがいつにも増してあなたの様子がおかしかったのってそれが原因なんですの?」
たしかに。ルウの可愛さに悶えそうになったりルウが好きだって気持ちが溢れそうになったりするのはいつものことだけど。でも婚約者になったっていう幸せからか、穏やかに接する機会が増えた。
でも、だからこそ両想いになったからという焦りと、両想いになったんだしいいよね? でもでも、と迷ったり行動に移せなくて悩む日々はある。そのことをシエ子は聞いているのか・
「あ~~~! じれったい! うじうじ悩む暇があったらさっさと手繋ぐなりベロンチョかますなりおやりなさい!」
「べ、ベロンチョなんてまだ早いだろ! ペロペロのほうだってまだ慣れていないんだぞ!」
「あなた方感覚麻痺しすぎてますわよ! 手を繋ぐよりベロンチョよりもっととんでもないことすっ飛ばしてやってんじゃないですか! なんなんですのペロペロって!」
ぎゃあぎゃあ言い合うようになってしまった。
「じゃあシエ子さんは? どうだったんですか」
「え?」
「体験談を聞かせてくださいよ。それなら参考にできますから」
「え、ええ~~~? なんなんですの? ルウにも同じことを聞かれますわよ」
あ、ルウも聞いたんだ。でも、同じことを質問してるなんて以心伝心で嬉しいな。考えることは一緒なんだね。ふふ。
「女性にならともかく、男性になんて言えやしませんわよそんなこと」
「まぁ、わかりました」
・・・・・・とかなんとか言ってるけど。本当は体験したことがないから言えないんじゃないか?
「じゃあいつ肩に手を回していいですか?」
「だから!! なんで!! そんな初心者的などうでもいいこと相談するんだ!! ですの!」
「いや、だって。恥ずかしいし(カァァァッ)」
「あ~~、もう! じれったい! これじゃあルウも愛想を尽かしちゃいますわよ! 女性はなんだかんだで男性にリードされたいものなんですのよ! いいこと!? 普段優しくて大人しい人にリードされてキュン♪ ときちゃったり! 逆にうじうじと気にしすぎて手を出されないと不安になったり幻滅したり冷めちゃったりするんですわよ!」
ま、まじか? それってこの子だけの意見だけじゃなくて?
「私だって普段は自分本位で相手に頼りきりになっているけど、だからこそ情時を終えたあとそっと毛布をかけてくれる優しさや立場が逆転してしまったときや責められているときや酷い言葉をぶつけられるときはどうしようもなく燃えてキュンときて――――」
この子、興奮してるから自分がなにを口走っているかわかってないのか? 変に生々しすぎるし、その相手ってもしかしてシエナのこと? でもあいつネフェシュと恋人同士なんじゃ?
「だから! うじうじ悩む暇があったらさっさと行動に移しなさい!」
「お、おおう・・・・・・」
「はぁ、まったく」「こんなことで、なんで・・・・・・」とブツブツ呟く。さっきからこの子独り言多いな。
「あ、そうだシエナ様。お酒はどうなさいますか?」
「あ、もらうよ~~」
「はい。かしこまりました。ご主人様は?」
「俺は夕食のときはいいかな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
「なぁ、ルウ。今シエナって?」
「えっ。あっ」
「シエ子も、今普通に答えてたような?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
単なる聞き間違えか? いや、指摘された二人が「やっちまった」感を醸しだしている。つまり?
「申し訳ございません。間違えてしまいました」
「わ、私も聞き間違えましたわ。ごめんあそばせ」
いや、二人揃って間違えるなんてそんなミラクルあり得るか?
「考えてみてください。あのシエナ様が。騎士で男の子のシエナ様が。任務でもないのに女装をなさるとおもいますか?」
ん? ウウウウ~~~ン・・・・・・?
「それだとシエナ様が使い魔好きのホモの女装好き。つまり変態ということになりますよ。ご主人様の親友がそんな変態だとおおもいで?」
いや、魔物か生物かどうか怪しいネフェシュの恋人って時点で大分変態なんじゃ?
でも、ルウが嘘をつくはずないし。
ガチャ。
「おい、ユーグの旦那よ。それか奴隷の。うちの馬鹿主きてないか? あのやろうまだ仕事が残ってるってのに」
あれ、ネフェシュが来たのか? ノックもしないで入ってくるなんて。でも、今はそれどころじゃ――――。
「あれ? なんだここにい――――」
「チエェリオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ブグゥ!?」
「え!?」
「えいさああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
目にもとまらぬ速さで、即座にネフェシュとの距離を詰めたルウ。頭をがっしりと掴むとそのままぐるぐる回して放り投げ、シエ子がそのまま力強く受取った。そのまま口を塞ぐ。
二人の目も言葉も交さないコンビネーション。それより、二人の動きが追えなかった。なんて素早い動きだ。
「おいごら。てめぇどういうつもりだこの――――むぎゅ!?」
「今喋ったらただじゃおかないお前を始末して僕も身を投げる」「羽根と手足を縛って城からジャンプさせる」「角削るというか折る」。ぼそぼそとだけど、ネフェシュにしか聞こえない声量。腕と手に血管が浮きでている。背景に幾たびの死地を越えた歴戦の戦士特有の空気がゆらゆら立ち上ってきてる。こわい。
「お、おほほほほほ。シエナ様に呼ばれたみたいですわ。ネフェシュは私を探しに来てくれたんですのねごめんあそばせルウユーグさん夕食はまたの機会ということでそれではああああああああああ!!」
ピュ~~! とあっという間に去っていってしまった。なんとなく、シエ子かシエナか尋ねるのがこわい。
「夕食はチキンです。香辛料たっぷりの」
さっきまでのやりとり、シエ子のことなんて気にする素振りのなさに、なんとなく察してしまう。あ、これもう聞いちゃだめなやつだ。この子はなかったことにしたいんだ。
「ルウの友達って、個性的だね」
「ご主人様のお友達には負けます」
忘れよう。シエ子かシエナなんてどうでもいいことじゃないか。
ルウの作ってくれた料理に舌包みを打って、二人で穏やかな時間をすごして。それでいい。
「そういえば、シエナはどうでした? 俺はまだ帝都に帰ってから会えてないんだけど」
ピク、と小さく反応しておかしな表情に。
「気になりますの?」
「そりゃあ、一応親友だし。良いやつだし」
「ほほう」
「帝都じゃあ信頼できるやつ、ルウ以外にシエナしかいないしな」
「ふふん、そうなんですのね」
なんでこの子、どや顔してるんだろう。シエナの友達だから嬉しいのか? というか、あいつって女の子には優しいし紳士的だからモテてるんだっけ。もしかして、この子シエナにホの字なんだろうか?
「それで? あなた様はシエナ様のことをどういう風におもっていますの?」
ぐふふ、と面白がっているシエ子に、正直に伝える。
「困ったやつだっておもってるよ」
「ふふふん。そうなんですのね。困ったやつ・・・・・・・・・ってえ?」
「仕事と研究で忙しいのに自分のこと手伝わせるし。それでルウとの邪魔をされたこともあるし。いつの間にか俺のルウと仲良くなってやがるし」
「へ、へぇ~~」
「何度かあいつのこと焼き殺そうか、決闘を挑もうかって考えたくらい」
「そ、そうなんですのね・・・・・・ぐすん」
?! シエ子のテンションががた落ちして涙目になってる?
「へ、へぇ~~。ユーグさんにとってシエナ様は困ったやつだったんですのねぇ~~」
空になったカップをガチャガチャ音をたてるほど動揺しているのは、わざとじゃないんだろう。それだけショックだったのかな。
「それに、使い魔の研究はさせてくれないくらいケチだし。欲で人をつるし。人のことを頭のおかしいやつ扱いするんですよ!? ひどくないですか!?」
「え、ええ。そうですわね・・・・・・」
「まったく。あいつは困ったやつですよ。そもそもなんで知り合ったのかってことすらこっちは覚えていないんですから」
ガァァァン! とショックを受けたようなシエ子。なんだか表情が次々に変ってて面白くなってきたかも。
「まぁ、でもそんなあいつに救われてる部分もあるからしょうがないのかなって」
「え、救われている、ですの?」
年齢も立場も、仕事も地位も違う。普通だったらそんなやつと出会えない。それでも、シエナは俺の夢を笑わなかった。励ましてくれた。一人で家に篭って研究していたりすると、必ず押しかけて一緒に食事をしてくれるし、酒や相談にものってくれる。
それに、ルウと出会ったばかりだって俺の認識の過ちを指摘してくれた。今となっては、どれだけ大切な存在であったか。
「だから、俺にとっては唯一無二の困った大親友なんですよ。あいつは」
「ふ、ふぅ~~ん。そうなんですのね」
「狡い」「そもそも僕の変装にだって気づかないくせに」と唇を尖らせながら独りごちている。
「恥ずかしいし気持ち悪いからあいつには内緒にしてください」
「ふふふ、うふふふふ」
「?」
「シエナ様は幸せ者ですわね。ルウとユーグさん、とても大切なお友達が二人もいるんですもの」
くすくすと笑うシエ子に、なんともいえない照れくささが。
「と、ところでシエ子さんは、今好きな子はいますか?」
「え? 唐突にどうなさったんですの?」
「いや、実は俺ルウに求婚したんですよ」
「あ~~~。そうでしたわね」
「それで、次の手順に進みたくて」
「手順・・・・・・。ははん、なるほどですわ。今の私は気分が大変よろしいので、なんでもお聞きになって?」
いや、でも初対面の女性に聞いていいのかな、これ。
「さぁ。私をシエナ様だとおもって。さぁ!」
「・・・・・・・・・・・・わかりました。それじゃあ」
妙にキラキラと意気込んでいるシエ子のためにも、意を決して質問する。
「初めて手を繋ぐタイミングっていつがいいですか?」
ゴガシャアアアア!! と机に頭を打ちつけた。
「どういうことかな、ユーグ? いや、ですの?」
口調が少しおかしかったような?
「いや。俺とルウって恋人関係すっ飛ばして求婚して、受け入れてもらえて。それで婚約しただろ?」
「うん」
「だから、夫婦になる前に恋人同士でやることを、この際やりたいなぁ~~って」
「うんうん」
「だから、女性からの視点でいつ頃手を繋ぎたいかって。あ、あとそのときって男から聞いたほうがいいですか? それとも無言でやったら嫌がられないですか? あ、最初は右手がいいですか? それとも左手がいいですか? 指を絡ませるのはいつ――――」
「学生かっっっっっ!!!」
「え、えええええええ!?」
「なんなんだ、ですの! そのういういしすぎる欲望は! 二十歳すぎているのに純情すぎてずっこけたよ、ですわ! というか気にしすぎ! ですわ! 一つだけだとおもったらいくつも怒濤の悩みの連続でお腹いっぱいになるわ! ですわ!」
「ちょ、口調おかしくない?」
「おだまり! きょうび、魔法学院、いえ。下手したら普通の学校の子供よりも遅れてますわよ!?」
「え、嘘!?」
普通の学校っていったら俺も通っていた七~十二歳ぐらいの子供が通う!? 嘘だ、だって俺がそれくらいの頃なんて。
「つまり? ルウがいつにも増してあなたの様子がおかしかったのってそれが原因なんですの?」
たしかに。ルウの可愛さに悶えそうになったりルウが好きだって気持ちが溢れそうになったりするのはいつものことだけど。でも婚約者になったっていう幸せからか、穏やかに接する機会が増えた。
でも、だからこそ両想いになったからという焦りと、両想いになったんだしいいよね? でもでも、と迷ったり行動に移せなくて悩む日々はある。そのことをシエ子は聞いているのか・
「あ~~~! じれったい! うじうじ悩む暇があったらさっさと手繋ぐなりベロンチョかますなりおやりなさい!」
「べ、ベロンチョなんてまだ早いだろ! ペロペロのほうだってまだ慣れていないんだぞ!」
「あなた方感覚麻痺しすぎてますわよ! 手を繋ぐよりベロンチョよりもっととんでもないことすっ飛ばしてやってんじゃないですか! なんなんですのペロペロって!」
ぎゃあぎゃあ言い合うようになってしまった。
「じゃあシエ子さんは? どうだったんですか」
「え?」
「体験談を聞かせてくださいよ。それなら参考にできますから」
「え、ええ~~~? なんなんですの? ルウにも同じことを聞かれますわよ」
あ、ルウも聞いたんだ。でも、同じことを質問してるなんて以心伝心で嬉しいな。考えることは一緒なんだね。ふふ。
「女性にならともかく、男性になんて言えやしませんわよそんなこと」
「まぁ、わかりました」
・・・・・・とかなんとか言ってるけど。本当は体験したことがないから言えないんじゃないか?
「じゃあいつ肩に手を回していいですか?」
「だから!! なんで!! そんな初心者的などうでもいいこと相談するんだ!! ですの!」
「いや、だって。恥ずかしいし(カァァァッ)」
「あ~~、もう! じれったい! これじゃあルウも愛想を尽かしちゃいますわよ! 女性はなんだかんだで男性にリードされたいものなんですのよ! いいこと!? 普段優しくて大人しい人にリードされてキュン♪ ときちゃったり! 逆にうじうじと気にしすぎて手を出されないと不安になったり幻滅したり冷めちゃったりするんですわよ!」
ま、まじか? それってこの子だけの意見だけじゃなくて?
「私だって普段は自分本位で相手に頼りきりになっているけど、だからこそ情時を終えたあとそっと毛布をかけてくれる優しさや立場が逆転してしまったときや責められているときや酷い言葉をぶつけられるときはどうしようもなく燃えてキュンときて――――」
この子、興奮してるから自分がなにを口走っているかわかってないのか? 変に生々しすぎるし、その相手ってもしかしてシエナのこと? でもあいつネフェシュと恋人同士なんじゃ?
「だから! うじうじ悩む暇があったらさっさと行動に移しなさい!」
「お、おおう・・・・・・」
「はぁ、まったく」「こんなことで、なんで・・・・・・」とブツブツ呟く。さっきからこの子独り言多いな。
「あ、そうだシエナ様。お酒はどうなさいますか?」
「あ、もらうよ~~」
「はい。かしこまりました。ご主人様は?」
「俺は夕食のときはいいかな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?
「なぁ、ルウ。今シエナって?」
「えっ。あっ」
「シエ子も、今普通に答えてたような?」
「・・・・・・・・・・・・・・」
単なる聞き間違えか? いや、指摘された二人が「やっちまった」感を醸しだしている。つまり?
「申し訳ございません。間違えてしまいました」
「わ、私も聞き間違えましたわ。ごめんあそばせ」
いや、二人揃って間違えるなんてそんなミラクルあり得るか?
「考えてみてください。あのシエナ様が。騎士で男の子のシエナ様が。任務でもないのに女装をなさるとおもいますか?」
ん? ウウウウ~~~ン・・・・・・?
「それだとシエナ様が使い魔好きのホモの女装好き。つまり変態ということになりますよ。ご主人様の親友がそんな変態だとおおもいで?」
いや、魔物か生物かどうか怪しいネフェシュの恋人って時点で大分変態なんじゃ?
でも、ルウが嘘をつくはずないし。
ガチャ。
「おい、ユーグの旦那よ。それか奴隷の。うちの馬鹿主きてないか? あのやろうまだ仕事が残ってるってのに」
あれ、ネフェシュが来たのか? ノックもしないで入ってくるなんて。でも、今はそれどころじゃ――――。
「あれ? なんだここにい――――」
「チエェリオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」
「ブグゥ!?」
「え!?」
「えいさああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
目にもとまらぬ速さで、即座にネフェシュとの距離を詰めたルウ。頭をがっしりと掴むとそのままぐるぐる回して放り投げ、シエ子がそのまま力強く受取った。そのまま口を塞ぐ。
二人の目も言葉も交さないコンビネーション。それより、二人の動きが追えなかった。なんて素早い動きだ。
「おいごら。てめぇどういうつもりだこの――――むぎゅ!?」
「今喋ったらただじゃおかないお前を始末して僕も身を投げる」「羽根と手足を縛って城からジャンプさせる」「角削るというか折る」。ぼそぼそとだけど、ネフェシュにしか聞こえない声量。腕と手に血管が浮きでている。背景に幾たびの死地を越えた歴戦の戦士特有の空気がゆらゆら立ち上ってきてる。こわい。
「お、おほほほほほ。シエナ様に呼ばれたみたいですわ。ネフェシュは私を探しに来てくれたんですのねごめんあそばせルウユーグさん夕食はまたの機会ということでそれではああああああああああ!!」
ピュ~~! とあっという間に去っていってしまった。なんとなく、シエ子かシエナか尋ねるのがこわい。
「夕食はチキンです。香辛料たっぷりの」
さっきまでのやりとり、シエ子のことなんて気にする素振りのなさに、なんとなく察してしまう。あ、これもう聞いちゃだめなやつだ。この子はなかったことにしたいんだ。
「ルウの友達って、個性的だね」
「ご主人様のお友達には負けます」
忘れよう。シエ子かシエナなんてどうでもいいことじゃないか。
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