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二十七章
Ⅵ
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「はじまってしまったか・・・・・・・・・」
突如として出現した、巨大な狼が咆哮している。黄金に毛並みに輝く瞳の色。圧倒的なオーラは魔獣、オスティンと遜色ない。
オスティン様が予測されたとおりだ。
ユーグの奴隷、ルウは純粋なウェアウルフではない。古の時代の狼型の魔獣の血を継いでいる。
魔獣の痕跡は至るところにある。世界を巡りながら様々な魔獣がいた痕跡を発見していたオスティンは、本来の研究目的とは別にある推測をたてていた。
魔獣の子孫はまだこの世界にいるのではないか。
魔獣とて生物だ。どれだけ同じ種類の魔獣がいたのかはわからないが、つがいを作り、子供を産むことはできる。しかし、現代では魔獣はいない。絶滅した。
純粋な魔獣は。
人間でもそうだ。生きる術を身につけ、場合によっては変化をさせる。命を守るため、争いに勝つため武器を作り、城を築いた。その過程で魔法を扱える術を手に入れて、今日まで繁栄している。それも長い長い時間をかけて。
世界で生き残る術を、知識と積み重ねで確立させた。
なら、魔物や生き物は生き残るために別の方法を使った。環境に合わせて自らの生態を変化させた。寒い地域では体温を下げないよう体毛を増やし、熱い地域では逆。
草木が生い茂る地域で暮らす生き物は草を食べて生きられる。高いところに生えている果実や草を食べるために首を伸ばし、木々を飛び移る体に。害敵に見つからないように地形に合わせた体色に。
長い長い、途方が暮れるほどの時間をかけて体を変化させていった。なら魔獣にも当てはまるのではないか? 絶滅したのは変化させられなかった魔獣。であるならまったく別の姿で魔獣が生き残っていても不思議ではない。
生き物として。あるいは魔物として。あるいは獣人の姿となっているのではないか?
目に見えない魔法を感知することができた。既に死んでいる魔獣の魔力を感じとった。通常のウェアウルフにはそんなことできない。
魔獣の力を受け継いでいる、ある意味末裔であるならば納得ができる。オスティンは珍しく喜んでいた。自分の推論が当たっていた。自分の研究が進む。だけではない。
もっと個人的な理由だ。
「だが、いきなりこれは・・・・・・・・・」
魔獣の姿となった奴隷、金色に輝く狼の魔獣は正気を失っているのか。魔獣だけではなくオスティンにまで襲いかかっていく。下手に攻撃できないオスティンは防戦一方。
そして鼻と口から漏れでている黒い炎。黒い炎は消えない。対象物が燃え尽きても残り、自分の『復元』で戻しても意味がない。森がまた蹂躙されていく。規模が大きくなった人智の及ばない人外達の饗宴に、それが及ぼす破壊は際限がない。
牙が魔獣の骨を砕き、激しく首を捩りながら噛みつきあう。じゃれあいなどという生易しい表現では足りない。魔獣の体内に掬う魔力源を、臓物を貪るように散らかし、自らを染めていく。狂気と野生の本能に任せた二匹の魔獣は人間の常識では測れない。
このままではここだけではない。国も、世界さえ終わってしまうのではないか。それほどに強大で尋常ならざる暴れっぷり。人など、魔法でさえ意にも介さない。ただ己が巻きこまれないようにし、最小限のダメージを負いながら守るのが関の山だ。
「すばらしいっっっっ・・・・・・・・・!」
仮初めの主であるオスティンの、できるだけ押さえたらしい大音声が響き渡る。魔獣にすっかり興奮している。
「くそ、だからあいつなんて嫌なんだ・・・・・・!」
逃げてしまいたい。しかし、命令に背くことはできない。元々はオスティンが魔獣を倒すまで森の被害を食止めるだけだったのに、事情が変ってしまった。オスティンは大丈夫だろう。だが、自分のことを配慮なんてしていないだろう。蛇の魔獣は倒せたとしても、奴隷のほうはいつまで。
もうこの際、さっさとあの魔獣達をなんとかしてくれ。いや、しかしそうなればユーグが・・・・・・・・・。
「?」
魔法士ユーグは、今なにをしているのか。自分の奴隷、愛する女がああなっているのだとしたら是が非でもとめるはず。あいつはそういう男だ。
「ああ、あれは一体なんだぁ!?」
意外な男達の登場に、おもわず二度見した。グレフレッドの付き人達だ。
「おい、詳しい説明はあとだ。魔法士ユーグを探せ!」
「お、おいなんだよいきなり!」
「そうだそうだ! なんで俺達があんなやつを!」
「私達はグレフレッド様の――」
戦いの余波が地震の呈をなし、地面を断裂させる。ただ魔獣とオスティン達が倒れただけで。付き人達は腰を抜かす勢いで断裂部から離れた。
「死にたくなければ、言う通りにしろ。そうでないとグレフレッドも試験も、どうなるかわからんぞ! ついでにグレフレッドを探してかまわん!」
あろうことかこの状況を終わらせることができる唯一の可能性がある男が、よりによってあいつとは。
突如として出現した、巨大な狼が咆哮している。黄金に毛並みに輝く瞳の色。圧倒的なオーラは魔獣、オスティンと遜色ない。
オスティン様が予測されたとおりだ。
ユーグの奴隷、ルウは純粋なウェアウルフではない。古の時代の狼型の魔獣の血を継いでいる。
魔獣の痕跡は至るところにある。世界を巡りながら様々な魔獣がいた痕跡を発見していたオスティンは、本来の研究目的とは別にある推測をたてていた。
魔獣の子孫はまだこの世界にいるのではないか。
魔獣とて生物だ。どれだけ同じ種類の魔獣がいたのかはわからないが、つがいを作り、子供を産むことはできる。しかし、現代では魔獣はいない。絶滅した。
純粋な魔獣は。
人間でもそうだ。生きる術を身につけ、場合によっては変化をさせる。命を守るため、争いに勝つため武器を作り、城を築いた。その過程で魔法を扱える術を手に入れて、今日まで繁栄している。それも長い長い時間をかけて。
世界で生き残る術を、知識と積み重ねで確立させた。
なら、魔物や生き物は生き残るために別の方法を使った。環境に合わせて自らの生態を変化させた。寒い地域では体温を下げないよう体毛を増やし、熱い地域では逆。
草木が生い茂る地域で暮らす生き物は草を食べて生きられる。高いところに生えている果実や草を食べるために首を伸ばし、木々を飛び移る体に。害敵に見つからないように地形に合わせた体色に。
長い長い、途方が暮れるほどの時間をかけて体を変化させていった。なら魔獣にも当てはまるのではないか? 絶滅したのは変化させられなかった魔獣。であるならまったく別の姿で魔獣が生き残っていても不思議ではない。
生き物として。あるいは魔物として。あるいは獣人の姿となっているのではないか?
目に見えない魔法を感知することができた。既に死んでいる魔獣の魔力を感じとった。通常のウェアウルフにはそんなことできない。
魔獣の力を受け継いでいる、ある意味末裔であるならば納得ができる。オスティンは珍しく喜んでいた。自分の推論が当たっていた。自分の研究が進む。だけではない。
もっと個人的な理由だ。
「だが、いきなりこれは・・・・・・・・・」
魔獣の姿となった奴隷、金色に輝く狼の魔獣は正気を失っているのか。魔獣だけではなくオスティンにまで襲いかかっていく。下手に攻撃できないオスティンは防戦一方。
そして鼻と口から漏れでている黒い炎。黒い炎は消えない。対象物が燃え尽きても残り、自分の『復元』で戻しても意味がない。森がまた蹂躙されていく。規模が大きくなった人智の及ばない人外達の饗宴に、それが及ぼす破壊は際限がない。
牙が魔獣の骨を砕き、激しく首を捩りながら噛みつきあう。じゃれあいなどという生易しい表現では足りない。魔獣の体内に掬う魔力源を、臓物を貪るように散らかし、自らを染めていく。狂気と野生の本能に任せた二匹の魔獣は人間の常識では測れない。
このままではここだけではない。国も、世界さえ終わってしまうのではないか。それほどに強大で尋常ならざる暴れっぷり。人など、魔法でさえ意にも介さない。ただ己が巻きこまれないようにし、最小限のダメージを負いながら守るのが関の山だ。
「すばらしいっっっっ・・・・・・・・・!」
仮初めの主であるオスティンの、できるだけ押さえたらしい大音声が響き渡る。魔獣にすっかり興奮している。
「くそ、だからあいつなんて嫌なんだ・・・・・・!」
逃げてしまいたい。しかし、命令に背くことはできない。元々はオスティンが魔獣を倒すまで森の被害を食止めるだけだったのに、事情が変ってしまった。オスティンは大丈夫だろう。だが、自分のことを配慮なんてしていないだろう。蛇の魔獣は倒せたとしても、奴隷のほうはいつまで。
もうこの際、さっさとあの魔獣達をなんとかしてくれ。いや、しかしそうなればユーグが・・・・・・・・・。
「?」
魔法士ユーグは、今なにをしているのか。自分の奴隷、愛する女がああなっているのだとしたら是が非でもとめるはず。あいつはそういう男だ。
「ああ、あれは一体なんだぁ!?」
意外な男達の登場に、おもわず二度見した。グレフレッドの付き人達だ。
「おい、詳しい説明はあとだ。魔法士ユーグを探せ!」
「お、おいなんだよいきなり!」
「そうだそうだ! なんで俺達があんなやつを!」
「私達はグレフレッド様の――」
戦いの余波が地震の呈をなし、地面を断裂させる。ただ魔獣とオスティン達が倒れただけで。付き人達は腰を抜かす勢いで断裂部から離れた。
「死にたくなければ、言う通りにしろ。そうでないとグレフレッドも試験も、どうなるかわからんぞ! ついでにグレフレッドを探してかまわん!」
あろうことかこの状況を終わらせることができる唯一の可能性がある男が、よりによってあいつとは。
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