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五章

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 女神が現れなくなって、一週間が過ぎた。なんの問題もなく、普通の高校生活を謳歌できている。いやぁ、もう楽しい。クラスメイトと談笑したり、連絡先交換したり昼食も一緒に食べたり。まさに俺が憧れていた普通の幸せそのものだ。

「う、」
「ちょ、どうしたのよ」
「いや。幸せだなぁって」
「はぁ?」

 意味不明だというあかり。彼女も最近は落ち着いている。女神による弊害が消えて、あれは気のせいだったという雰囲気になりつつある。というか俺がしている。

 いつでもどこでも、もう大丈夫なんじゃないか。寝ぼけていただけじゃないか。勘違いしていただけじゃないかって言い続けている。他に相談している相手がいないのもあって、あかりは信じこんでいる。ちょっと暗示みたいだけど、しょうがないよね。

 でも、油断しちゃいけない。いつまた女神が現れるか。もう自殺は通じない。完全に諦めさせるにはあと一押しが必要なんだ。だとするなら、やっぱり聖剣だろう。

 女神は聖剣を雑に扱うことを嫌っているし、女神に託された聖剣が勇者たらしめている原因だし、それを持っているのが俺一人だけしかいない。聖剣を女神が回収せざるをえない状況にするか。もしくは聖剣を壊すしかない。

 この一週間、聖剣を壊す方向で動いているけど効果はない。そもそも異世界にいたときも、折れたことなんてなかったほど丈夫だった。ガスレンジで熱したあとに金槌で叩いても、冷凍庫で冷やして熱して冷やして熱してを繰り返しても、長時間水に浸して錆びさせようと試みても意味はなかった。

「なぁあかり。今度桜島行かないか?」
「桜島って鹿児島県の? なんでよ」

 火口に投げこんでも溶けないかどうか試してみたいとは口が裂けても言えない。まぁそっちのほうはついでで、どっか遊びに行きたいってのも理由にある。普通に話せるようになったけど、あかりと遊びになんて高校に入学してから皆無だし。

 途中でどこか観光したり遊べるようなところがあれば、楽しめるだろう。

「火山ってどんなかんじなのか観光してみたいんだよ。特に火口。こないだテレビでやってたし」
「あんたって変な物に興味持つわね……。無理よ無理。旅費だってお小遣いじゃたりないでしょ。それに二人っきりなんて両親ズが許可しないわよ」
「え、俺二人っきりなんて言ってないけど」
「あ……(カァァァ)」

 釣られて何故か俺もカァァァと顔が真っ赤になる。なんだこのむずむずした心地のいい恥ずかしさ。

 そうか、これが青春か。

「なんか、いいな」
「なにを想像してんのよ変態。ばか」
 
 なにを勘違いしたのか、いきなり罵倒してくるあかりがおかしくて吹きだしてしまう。

「でも、別に鹿児島まで行かなくても近場に火山があったら見に行けるんじゃない? 日帰りとか」
「あ~~~。かもな」

 というか高校生が日帰りで火山の観光ってどうなんだろう。

「高校生が日帰りで火山の観光ってどうなのよ……」

 あかりも同意見だったことがなんだか嬉しくて面白い。
 
「やっぱりいいなぁ」

 平和が一番だ。こんな日々をずっと送りたいな。

 勿論女神抜きで。
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