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第2章
第338話 男爵令息への罰(?)
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『ちょっと聞かれたくなくて……。
それで用事なんですけど、あそこにいる、グランドール男爵令息という人の記憶を消したいんですけど、お願いできませんか?』
『あいわかった。ぞうさもないことじゃ。』
ミルドレッドさんがツイッと指先を振って回転させる。
その瞬間、グランドール男爵令息が雷に打たれたようにビクーン!となった。
「あれえ?ここぉ、どこぉ?お父さまぁ、お母さまぁ。ウッ、ウッ、ふええ~ん!」
突然小さい子どものように、わんわんと泣き出したグランドール男爵令息に、僕と叔父さんがポカンとする。
『ミルドレッドさん、何をしたんですか?』
『あの者の記憶をなくせと言うたじゃろ?
どのくらいかわからんかったのでな、ちょっと多めに消しておいたわ。』
『ちょっと?
ちょっとって、どのくらいですか?』
『そうさの?ざっと20年くらいかの。』
『それってちょっとじゃないですよね!?』
『ちょっとじゃろ?一瞬のことじゃ。』
ドラゴンからすると、20年はちょっとなのかも知れないけど!
つまりグランドール男爵令息は、かなり小さな子どもの時まで、記憶が消されてしまったということだね。かわいそうな気もするけど、これをあの人の罰ってことにしよう。
最悪僕が彼に殺される寸前になるか、生きていても法に裁かれて死罪になるか、犯罪奴隷になるかも知れない決闘に巻き込んだのだから。おまけにそれをなんの罪もない平民相手に、なんどもしかけて尊厳を奪った人だ。
平民相手だからと今まで裁かれてこなかった彼を、このまま放置も出来ない。
正しく育て直されて、これからは真っ当に生きていってくれたらいいな。
「オリビア、認識阻害魔法をかけてくれ。
ここから離れよう。」
「わかったわ。」
「ミルドレッドさんも、お願いします。」
「あい、わかったのじゃ。」
ミルドレッドさんがツイッと指を動かす。
僕らはそれぞれ認識阻害魔法をかけてもらって──レンジアはもともと隠密で姿を消しているから必要ないけど──この場から急いで離れたのだった。
本当はエンジュ王女の記憶も消せたらいいんだろうけど、僕の記憶だけ消すということが出来ずに、時間が巻き戻ってしまうのがわかったから、さすがにそれは出来ないしね。
僕はその時慌ただしくその場を去ったから気付いてなかったんだけど、彼があのままなことがわかった途端、その場にいた大勢の人たちが、彼の様子に歓声をあげていたとか。
あとでキリカが教えてくれたところによると、グランドール男爵令息の被害にあった人たちが、その場に立ち会っていたらしい。
そんなに大勢被害にあってたのか……。グランドール男爵令息みたいな人ばかりじゃないだろうけど、法律の隙間をつかれないように、現実に即した改正も大切だよねえ。
兄さまたちのところに戻ると、ディダ姉さまがプンプンしていた。
「せっかくお前が喜びそうなものを探していたというのに、どこに行っていたのだ。」
「先にいなくなってしまったのは、ディダ姉さま姉さまたちですよね?僕は皆さんを探しに行っていたんですよ。」
拗ねるディダ姉さまをなだめながら言う。
「私はいいのだ!お前は私から離れるな!」
「ええ……。そんな無茶な……。」
思わずタジタジになってしまう。
「そうじゃ!神だかなんだか知らぬが、アレックスは将来わらわの番いになるおのこ!
独り占めなぞ許さぬぞよ!」
「なんだと!?私はようやく会えたアレックスの姉だぞ!?」
「兄弟なぞ、いずれは離れゆくもの。
その時がきただけであろ。」
ディダ姉さまとミルドレッドさんが、バチバチと火花を散らしている。
「あらあら、大人気ねえ、アレックス。」
それを微笑ましげに見ている母さま。
「笑い事じゃないですよ、母さま……。」
僕、普通に困ってるんだけどな?
「そう言えば、舟遊びをしようと言っていたが、あれじゃ当分無理そうだな。」
叔父さんが空気を変えようと話題を振ってくれる。昔叔父さんと母さまと僕とでレグリオ王国に来た時にやった、舟遊びを3人でしようという話になっていたんだよね。
「そうだね、リーグラ王国の従者たちが降りるのに、まだまだ時間がかかりそうだから、僕らが船に乗る頃には、夕方近くになっちゃうかも知れないね。」
「なら、先に食事に行かないか。
昔アレックスも食べて喜んでいた料理店に、みんなで行こう。オリビアも久しぶりに食べたいだろう?」
「そうね!地上の食べ物は久しぶりだわ。
子どもたちにも食べさせたいし。」
叔父さんの提案に、母さまが嬉しそうに両手のひらを胸の前で合わせて微笑んだ。
────────────────────
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それで用事なんですけど、あそこにいる、グランドール男爵令息という人の記憶を消したいんですけど、お願いできませんか?』
『あいわかった。ぞうさもないことじゃ。』
ミルドレッドさんがツイッと指先を振って回転させる。
その瞬間、グランドール男爵令息が雷に打たれたようにビクーン!となった。
「あれえ?ここぉ、どこぉ?お父さまぁ、お母さまぁ。ウッ、ウッ、ふええ~ん!」
突然小さい子どものように、わんわんと泣き出したグランドール男爵令息に、僕と叔父さんがポカンとする。
『ミルドレッドさん、何をしたんですか?』
『あの者の記憶をなくせと言うたじゃろ?
どのくらいかわからんかったのでな、ちょっと多めに消しておいたわ。』
『ちょっと?
ちょっとって、どのくらいですか?』
『そうさの?ざっと20年くらいかの。』
『それってちょっとじゃないですよね!?』
『ちょっとじゃろ?一瞬のことじゃ。』
ドラゴンからすると、20年はちょっとなのかも知れないけど!
つまりグランドール男爵令息は、かなり小さな子どもの時まで、記憶が消されてしまったということだね。かわいそうな気もするけど、これをあの人の罰ってことにしよう。
最悪僕が彼に殺される寸前になるか、生きていても法に裁かれて死罪になるか、犯罪奴隷になるかも知れない決闘に巻き込んだのだから。おまけにそれをなんの罪もない平民相手に、なんどもしかけて尊厳を奪った人だ。
平民相手だからと今まで裁かれてこなかった彼を、このまま放置も出来ない。
正しく育て直されて、これからは真っ当に生きていってくれたらいいな。
「オリビア、認識阻害魔法をかけてくれ。
ここから離れよう。」
「わかったわ。」
「ミルドレッドさんも、お願いします。」
「あい、わかったのじゃ。」
ミルドレッドさんがツイッと指を動かす。
僕らはそれぞれ認識阻害魔法をかけてもらって──レンジアはもともと隠密で姿を消しているから必要ないけど──この場から急いで離れたのだった。
本当はエンジュ王女の記憶も消せたらいいんだろうけど、僕の記憶だけ消すということが出来ずに、時間が巻き戻ってしまうのがわかったから、さすがにそれは出来ないしね。
僕はその時慌ただしくその場を去ったから気付いてなかったんだけど、彼があのままなことがわかった途端、その場にいた大勢の人たちが、彼の様子に歓声をあげていたとか。
あとでキリカが教えてくれたところによると、グランドール男爵令息の被害にあった人たちが、その場に立ち会っていたらしい。
そんなに大勢被害にあってたのか……。グランドール男爵令息みたいな人ばかりじゃないだろうけど、法律の隙間をつかれないように、現実に即した改正も大切だよねえ。
兄さまたちのところに戻ると、ディダ姉さまがプンプンしていた。
「せっかくお前が喜びそうなものを探していたというのに、どこに行っていたのだ。」
「先にいなくなってしまったのは、ディダ姉さま姉さまたちですよね?僕は皆さんを探しに行っていたんですよ。」
拗ねるディダ姉さまをなだめながら言う。
「私はいいのだ!お前は私から離れるな!」
「ええ……。そんな無茶な……。」
思わずタジタジになってしまう。
「そうじゃ!神だかなんだか知らぬが、アレックスは将来わらわの番いになるおのこ!
独り占めなぞ許さぬぞよ!」
「なんだと!?私はようやく会えたアレックスの姉だぞ!?」
「兄弟なぞ、いずれは離れゆくもの。
その時がきただけであろ。」
ディダ姉さまとミルドレッドさんが、バチバチと火花を散らしている。
「あらあら、大人気ねえ、アレックス。」
それを微笑ましげに見ている母さま。
「笑い事じゃないですよ、母さま……。」
僕、普通に困ってるんだけどな?
「そう言えば、舟遊びをしようと言っていたが、あれじゃ当分無理そうだな。」
叔父さんが空気を変えようと話題を振ってくれる。昔叔父さんと母さまと僕とでレグリオ王国に来た時にやった、舟遊びを3人でしようという話になっていたんだよね。
「そうだね、リーグラ王国の従者たちが降りるのに、まだまだ時間がかかりそうだから、僕らが船に乗る頃には、夕方近くになっちゃうかも知れないね。」
「なら、先に食事に行かないか。
昔アレックスも食べて喜んでいた料理店に、みんなで行こう。オリビアも久しぶりに食べたいだろう?」
「そうね!地上の食べ物は久しぶりだわ。
子どもたちにも食べさせたいし。」
叔父さんの提案に、母さまが嬉しそうに両手のひらを胸の前で合わせて微笑んだ。
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