238 / 453
第2章
第344話 国内唯一の店
しおりを挟む
「いつもとても幸せそうに私の料理を食べて下さるお客様です。忘れる筈がありません。
オーナーより伺っております。わざわざ私を尋ねていらして下さったとか。」
「実はその時連れていた子どもが、僕だったんですよ、ザックスさん。
……僕もさっき知りました。」
「そうでしたか!これも何かの御縁ですね。
腕によりをかけて作らせていただきます。
今日はぜひゆっくりとお楽しみ下さい。」
元レグリオ王国1番の店のオーナーシェフだっただけあって、ザックスさんはこういう立場にいると、実に堂々としたものだね。
誰も彼が奴隷だなんて思わないだろうな。お店の売上が順当に増えていったら、毎月の賃金とは別にお手当を出して、少しでも早く身分を取り戻せるようにしてあげたいな。
「オーナーからよいマッカクを入れていただいているのですが、いかがですか?
いつも必ず召し上がっていらっしゃいましたよね。」
ザックスさんが叔父さんに言う。
「覚えていて下さったんですね!
ええ、ぜひお願いしたいです。」
「生魚はありますか?
私いつもあれが楽しみで。」
「はい、ございますよ。」
母さまの言葉にザックスさんが微笑む。
ザックスさんが逮捕されるきっかけになった生魚だけど、リシャーラ王国でも当然生魚を食べる習慣はない。
海から遠いから、新鮮な状態で魚が届かないから、加熱前提なんだよね。
だけど漁港に近いレグリオ王国ですら、それが禁止されていた。
お腹を壊しちゃうことがあるからなんだって。かなり野蛮な食べ方だとされているらしい。美味しいのにもったいないね。
だけどザックスさんは、安全に生魚を食べせることの出来る技術があったんだ。僕はそれを商人ギルドで、薬師ギルド、錬金術師ギルドまで巻き込んで、証明してみせたんだ。
ザックスさんのやり方は、ザックスさんの持つ水魔法で、一度魚を凍らせて、解凍するというやり方だ。
一度凍らせることで、まず危険な寄生虫が死滅することを、錬金術師に証明してもらった。これで生で食べられるようになるんだ。
そしてここからが凄いんだけど、凍らせると毒を生成する魚もいる、そしてその魚を加熱して食べると、人間の体内の毒消しになるという事実を、新しく証明してみせたんだ。
これには薬師も仰天していたよ。
凍らせると毒になることも、凍らせてから加熱すると、逆に薬になることも、誰にも知られていなかったことだからね。
毒消し効果については、薬師が確認して証明してくれた。
ただの料理人が、ここまで魚に精通していることに、惜しみない称賛が贈られたよ。
薬師ギルドにも錬金術師ギルドにも、客員として招かれることが正式に決まった。魚の専門家として、研究に協力する形だね。
これにより、ザックスさんは正式に生魚を販売出来ることが決まったんだ。ただし今のところはザックスさんだけだね。他の人は専門知識がないから、それを商人ギルドで学んで許可が降りたら、ということになった。
リシャーラ王国はそもそも生魚が販売されることがないし、生で食べられることを知らない人が殆どだ。だから販売してはいけないという法律そのものがない。
だけど今はないというだけで、僕の店が繁盛してきたら、やっかみから危険だとか言い出す人たちがいないとも限らない。特にザックスさんはそれて捕まったことがあるしね。
貴族との決闘に関する法律を平民が知らないように、貴族だって日頃関わることのない法律は、専門家に聞かないとよくわからないんだ。知らないからないってわけでもない。
ザックスさんは料理の専門家だけど、そこらへんに疎かったんだよね。わざわざ調べてみようとまでは思い至らなかった。
漁港の近くに住んでて生魚を提供する店がないのは、単純に生魚を活かした料理法を、他の料理人が知らなかったからということだけらしい。誰がやってもおかしくなかった。
料理人は師匠から教わった料理を提供するのが基本で、ザックスさんみたいに新しいレシピを研究する人は少ないんだそうだ。
たまたまザックスさんがそれに挑戦して、提供出来るだけの腕前があった。他の国に旅行した際に食べた生魚料理を、自分流にアレンジした結果、自国では禁止されていた。
注意勧告等もなく、いきなり捕縛されてしまったらしい。知識のない人たちが危険だとか騒ぎ立てたら、法律が作られる可能性だってあるからね。
それをあらかじめ潰しておく為に、安全性を証明してみせたってわけだね。おかげで僕の店はリシャーラ王国で、現時点で唯一生魚が食べられる店になったんだ。
────────────────────
タラなんかが実際そういう魚ですね。
冷凍すると毒を生み出し、その後加熱すると体内の毒素を排出してくれます。
生き物って不思議。
オーナーより伺っております。わざわざ私を尋ねていらして下さったとか。」
「実はその時連れていた子どもが、僕だったんですよ、ザックスさん。
……僕もさっき知りました。」
「そうでしたか!これも何かの御縁ですね。
腕によりをかけて作らせていただきます。
今日はぜひゆっくりとお楽しみ下さい。」
元レグリオ王国1番の店のオーナーシェフだっただけあって、ザックスさんはこういう立場にいると、実に堂々としたものだね。
誰も彼が奴隷だなんて思わないだろうな。お店の売上が順当に増えていったら、毎月の賃金とは別にお手当を出して、少しでも早く身分を取り戻せるようにしてあげたいな。
「オーナーからよいマッカクを入れていただいているのですが、いかがですか?
いつも必ず召し上がっていらっしゃいましたよね。」
ザックスさんが叔父さんに言う。
「覚えていて下さったんですね!
ええ、ぜひお願いしたいです。」
「生魚はありますか?
私いつもあれが楽しみで。」
「はい、ございますよ。」
母さまの言葉にザックスさんが微笑む。
ザックスさんが逮捕されるきっかけになった生魚だけど、リシャーラ王国でも当然生魚を食べる習慣はない。
海から遠いから、新鮮な状態で魚が届かないから、加熱前提なんだよね。
だけど漁港に近いレグリオ王国ですら、それが禁止されていた。
お腹を壊しちゃうことがあるからなんだって。かなり野蛮な食べ方だとされているらしい。美味しいのにもったいないね。
だけどザックスさんは、安全に生魚を食べせることの出来る技術があったんだ。僕はそれを商人ギルドで、薬師ギルド、錬金術師ギルドまで巻き込んで、証明してみせたんだ。
ザックスさんのやり方は、ザックスさんの持つ水魔法で、一度魚を凍らせて、解凍するというやり方だ。
一度凍らせることで、まず危険な寄生虫が死滅することを、錬金術師に証明してもらった。これで生で食べられるようになるんだ。
そしてここからが凄いんだけど、凍らせると毒を生成する魚もいる、そしてその魚を加熱して食べると、人間の体内の毒消しになるという事実を、新しく証明してみせたんだ。
これには薬師も仰天していたよ。
凍らせると毒になることも、凍らせてから加熱すると、逆に薬になることも、誰にも知られていなかったことだからね。
毒消し効果については、薬師が確認して証明してくれた。
ただの料理人が、ここまで魚に精通していることに、惜しみない称賛が贈られたよ。
薬師ギルドにも錬金術師ギルドにも、客員として招かれることが正式に決まった。魚の専門家として、研究に協力する形だね。
これにより、ザックスさんは正式に生魚を販売出来ることが決まったんだ。ただし今のところはザックスさんだけだね。他の人は専門知識がないから、それを商人ギルドで学んで許可が降りたら、ということになった。
リシャーラ王国はそもそも生魚が販売されることがないし、生で食べられることを知らない人が殆どだ。だから販売してはいけないという法律そのものがない。
だけど今はないというだけで、僕の店が繁盛してきたら、やっかみから危険だとか言い出す人たちがいないとも限らない。特にザックスさんはそれて捕まったことがあるしね。
貴族との決闘に関する法律を平民が知らないように、貴族だって日頃関わることのない法律は、専門家に聞かないとよくわからないんだ。知らないからないってわけでもない。
ザックスさんは料理の専門家だけど、そこらへんに疎かったんだよね。わざわざ調べてみようとまでは思い至らなかった。
漁港の近くに住んでて生魚を提供する店がないのは、単純に生魚を活かした料理法を、他の料理人が知らなかったからということだけらしい。誰がやってもおかしくなかった。
料理人は師匠から教わった料理を提供するのが基本で、ザックスさんみたいに新しいレシピを研究する人は少ないんだそうだ。
たまたまザックスさんがそれに挑戦して、提供出来るだけの腕前があった。他の国に旅行した際に食べた生魚料理を、自分流にアレンジした結果、自国では禁止されていた。
注意勧告等もなく、いきなり捕縛されてしまったらしい。知識のない人たちが危険だとか騒ぎ立てたら、法律が作られる可能性だってあるからね。
それをあらかじめ潰しておく為に、安全性を証明してみせたってわけだね。おかげで僕の店はリシャーラ王国で、現時点で唯一生魚が食べられる店になったんだ。
────────────────────
タラなんかが実際そういう魚ですね。
冷凍すると毒を生み出し、その後加熱すると体内の毒素を排出してくれます。
生き物って不思議。
372
あなたにおすすめの小説
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。