260 / 453
第3章
第366話 遅れてきた編入生
しおりを挟む
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「この時期に編入生だって。」
「始業式に間に合わなかったんだね。」
「どのクラス?」
「文官の特待生Ⅰクラス。」
ルカリア学園魔法科、Bクラスのサイラス・フォークナーは、クラスメイトが噂するのを聞き耳立てて聞いていた。
「男?女?」
「男!見かけた子がカッコいいって言ってたの!ああ~。文官じゃ校舎も違うから、滅多に会えないじゃん!」
クラスメイトの女生徒は、机に突っ伏して大げさに嘆いている。男か。ならどうでもいいな。女の子だったらサイラスも見に行きたいと考えていたが、すぐに興味を失った。
それよりも、新入生として留学してきた、魔法科特待生クラスの、ザラ・アウラ・スティビア王女と、エンジュ・マオユ・スティビア王女と、どうやって知り合うかのほうが、サイラスにとっての今後の課題だった。
人目をひく美貌かつ、リーグラ王国の王女である彼女たち。親しくなって損はない。
損はないどころか、ぜひとも近付きたい。
ルカリア学園の生徒たちは、男女問わず、どうやって彼女たちに近付くか、日々頭をひねっており、サイラスも同様に狙っていた。
従兄弟であるオフィーリア・オーウェンズ伯爵令嬢のほうが、サイラスの好みであったが、エンジュ王女だって悪くない。
より好みなほうのザラ王女が既に婚約済みなのは残念だったが、エンジュ王女と結婚すれば、彼女を近くで眺めることは出来る。
2人ともと親しくなることだって……。サイラスの頭の中は、少しでも成績を上げて特待生クラスに上がることよりも、個人的に王女たちと親しくなることにしめられていた。
ルカリア学園は、将来の国政をになう文官科と、国の守りの要である武官科に分かれている。武官科は魔法科と騎士科の2つ。
それが更に、特待生クラス、Aクラス、Bクラスに分かれている。文官科は人数が多い為、特待生Ⅰクラス、特待生Ⅱクラスといったように、クラスが合計6つある。
特待生Ⅰクラスと特待生Ⅱクラスの間に、本来優劣はないことになっているのだが、その実、特待生Ⅰクラスの生徒のほうが、卒業後によりよいところから引き抜きがかかる。
これはリシャーラ王国の貴族であれば常識である。また年6回の実力テストのうち、3回いい成績を取ればクラスが上がったり、逆に下がることもあるのと違い、特待生Ⅰクラスだけは、学年が持ち上がる際のクラス替えでしか入ることが出来ない。
その為、編入早々特待生Ⅰクラスに入れるということは、かなり優秀な頭脳の持ち主であるということになる。
魔法科と違い、騎士科と文官科は、裕福な商人の家の子どもも多くいる。それ以外の平民は文字が読めない為、優秀な魔法使いであっても入学してくることはほぼない。
商人の家に魔法使いが生まれることが少ないということ、また、魔法を学んでも仕事に生きることがないことから、魔法科を希望する商人の子どもが少ないことが理由だ。
移動販売するような商人であれば、街道の魔物を倒す為に、魔法であれ剣術であれ、必要になってくるだろうが、裕福な商人は自分自身が町から出ることが少ない。
リシャーラ王国では町中で魔法を使うことは禁じられている為、万が一の身を守る手段としては、剣術を学んだほうが得なのだ。
また文官クラスの授業は、商人としても役に立つものもあり、将来王宮と関わることを考えた際に、予算を管理する立場につく人間と学生時代に懇意に出来るという面もある。
そんな商人の子どもたちからすれば、特待生Ⅰクラスの生徒というのは、それだけで関わっておきたい生徒だろうな、とサイラスは思っていた。まあその子どもが商人になったら、王宮と関わりが持てないので意味ないが。
昼休みの時間になり、サイラスはいつものように、手下のようにしている男子生徒たちと、食堂で昼食を取ろうと足を運んだ。
食堂は全学年、すべてのクラスが利用するだけあって、ここでクラスや科の違う生徒に近付くことが出来る。
王族であっても食堂を使うか、お弁当を持参して学園内のベンチ等で食べることになっている為、たまにザラ王女とエンジュ王女の姿を見かけることがあるのだ。
サイラスは人垣に囲まれている人物を遠目で発見する。──ツイてる。ルカリア学園内で、あのように人に囲まれる人間は限られている。我が国の王太子か、ザラ王女たちか。
王太子は背が高く、集団に囲まれても頭頂部が飛び出て見える為、中心にいる人物のそれが見えないということは、あそこにいるのはザラ王女かエンジュ王女に間違いない。
「おい、ちょっとどけよ。」
サイラスは人垣を強引に押しのけて、中心部の人物に近付こうと試みた。
「お前……、なんでここに……。」
円の中心部で困ったように眉を下げていた人物は、キャベンディッシュ侯爵家を追放して平民に落とすのに、自分も一役買った、アレックス・キャベンディッシュだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
「この時期に編入生だって。」
「始業式に間に合わなかったんだね。」
「どのクラス?」
「文官の特待生Ⅰクラス。」
ルカリア学園魔法科、Bクラスのサイラス・フォークナーは、クラスメイトが噂するのを聞き耳立てて聞いていた。
「男?女?」
「男!見かけた子がカッコいいって言ってたの!ああ~。文官じゃ校舎も違うから、滅多に会えないじゃん!」
クラスメイトの女生徒は、机に突っ伏して大げさに嘆いている。男か。ならどうでもいいな。女の子だったらサイラスも見に行きたいと考えていたが、すぐに興味を失った。
それよりも、新入生として留学してきた、魔法科特待生クラスの、ザラ・アウラ・スティビア王女と、エンジュ・マオユ・スティビア王女と、どうやって知り合うかのほうが、サイラスにとっての今後の課題だった。
人目をひく美貌かつ、リーグラ王国の王女である彼女たち。親しくなって損はない。
損はないどころか、ぜひとも近付きたい。
ルカリア学園の生徒たちは、男女問わず、どうやって彼女たちに近付くか、日々頭をひねっており、サイラスも同様に狙っていた。
従兄弟であるオフィーリア・オーウェンズ伯爵令嬢のほうが、サイラスの好みであったが、エンジュ王女だって悪くない。
より好みなほうのザラ王女が既に婚約済みなのは残念だったが、エンジュ王女と結婚すれば、彼女を近くで眺めることは出来る。
2人ともと親しくなることだって……。サイラスの頭の中は、少しでも成績を上げて特待生クラスに上がることよりも、個人的に王女たちと親しくなることにしめられていた。
ルカリア学園は、将来の国政をになう文官科と、国の守りの要である武官科に分かれている。武官科は魔法科と騎士科の2つ。
それが更に、特待生クラス、Aクラス、Bクラスに分かれている。文官科は人数が多い為、特待生Ⅰクラス、特待生Ⅱクラスといったように、クラスが合計6つある。
特待生Ⅰクラスと特待生Ⅱクラスの間に、本来優劣はないことになっているのだが、その実、特待生Ⅰクラスの生徒のほうが、卒業後によりよいところから引き抜きがかかる。
これはリシャーラ王国の貴族であれば常識である。また年6回の実力テストのうち、3回いい成績を取ればクラスが上がったり、逆に下がることもあるのと違い、特待生Ⅰクラスだけは、学年が持ち上がる際のクラス替えでしか入ることが出来ない。
その為、編入早々特待生Ⅰクラスに入れるということは、かなり優秀な頭脳の持ち主であるということになる。
魔法科と違い、騎士科と文官科は、裕福な商人の家の子どもも多くいる。それ以外の平民は文字が読めない為、優秀な魔法使いであっても入学してくることはほぼない。
商人の家に魔法使いが生まれることが少ないということ、また、魔法を学んでも仕事に生きることがないことから、魔法科を希望する商人の子どもが少ないことが理由だ。
移動販売するような商人であれば、街道の魔物を倒す為に、魔法であれ剣術であれ、必要になってくるだろうが、裕福な商人は自分自身が町から出ることが少ない。
リシャーラ王国では町中で魔法を使うことは禁じられている為、万が一の身を守る手段としては、剣術を学んだほうが得なのだ。
また文官クラスの授業は、商人としても役に立つものもあり、将来王宮と関わることを考えた際に、予算を管理する立場につく人間と学生時代に懇意に出来るという面もある。
そんな商人の子どもたちからすれば、特待生Ⅰクラスの生徒というのは、それだけで関わっておきたい生徒だろうな、とサイラスは思っていた。まあその子どもが商人になったら、王宮と関わりが持てないので意味ないが。
昼休みの時間になり、サイラスはいつものように、手下のようにしている男子生徒たちと、食堂で昼食を取ろうと足を運んだ。
食堂は全学年、すべてのクラスが利用するだけあって、ここでクラスや科の違う生徒に近付くことが出来る。
王族であっても食堂を使うか、お弁当を持参して学園内のベンチ等で食べることになっている為、たまにザラ王女とエンジュ王女の姿を見かけることがあるのだ。
サイラスは人垣に囲まれている人物を遠目で発見する。──ツイてる。ルカリア学園内で、あのように人に囲まれる人間は限られている。我が国の王太子か、ザラ王女たちか。
王太子は背が高く、集団に囲まれても頭頂部が飛び出て見える為、中心にいる人物のそれが見えないということは、あそこにいるのはザラ王女かエンジュ王女に間違いない。
「おい、ちょっとどけよ。」
サイラスは人垣を強引に押しのけて、中心部の人物に近付こうと試みた。
「お前……、なんでここに……。」
円の中心部で困ったように眉を下げていた人物は、キャベンディッシュ侯爵家を追放して平民に落とすのに、自分も一役買った、アレックス・キャベンディッシュだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
311
あなたにおすすめの小説
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
霜月雹花
ファンタジー
神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。
神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。