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第3章

第366話 遅れてきた編入生

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「この時期に編入生だって。」
「始業式に間に合わなかったんだね。」
「どのクラス?」
「文官の特待生Ⅰクラス。」

 ルカリア学園魔法科、Bクラスのサイラス・フォークナーは、クラスメイトが噂するのを聞き耳立てて聞いていた。

「男?女?」
「男!見かけた子がカッコいいって言ってたの!ああ~。文官じゃ校舎も違うから、滅多に会えないじゃん!」

 クラスメイトの女生徒は、机に突っ伏して大げさに嘆いている。男か。ならどうでもいいな。女の子だったらサイラスも見に行きたいと考えていたが、すぐに興味を失った。

 それよりも、新入生として留学してきた、魔法科特待生クラスの、ザラ・アウラ・スティビア王女と、エンジュ・マオユ・スティビア王女と、どうやって知り合うかのほうが、サイラスにとっての今後の課題だった。

 人目をひく美貌かつ、リーグラ王国の王女である彼女たち。親しくなって損はない。
 損はないどころか、ぜひとも近付きたい。

 ルカリア学園の生徒たちは、男女問わず、どうやって彼女たちに近付くか、日々頭をひねっており、サイラスも同様に狙っていた。

 従兄弟であるオフィーリア・オーウェンズ伯爵令嬢のほうが、サイラスの好みであったが、エンジュ王女だって悪くない。

 より好みなほうのザラ王女が既に婚約済みなのは残念だったが、エンジュ王女と結婚すれば、彼女を近くで眺めることは出来る。

 2人ともと親しくなることだって……。サイラスの頭の中は、少しでも成績を上げて特待生クラスに上がることよりも、個人的に王女たちと親しくなることにしめられていた。

 ルカリア学園は、将来の国政をになう文官科と、国の守りの要である武官科に分かれている。武官科は魔法科と騎士科の2つ。

 それが更に、特待生クラス、Aクラス、Bクラスに分かれている。文官科は人数が多い為、特待生Ⅰクラス、特待生Ⅱクラスといったように、クラスが合計6つある。

 特待生Ⅰクラスと特待生Ⅱクラスの間に、本来優劣はないことになっているのだが、その実、特待生Ⅰクラスの生徒のほうが、卒業後によりよいところから引き抜きがかかる。

 これはリシャーラ王国の貴族であれば常識である。また年6回の実力テストのうち、3回いい成績を取ればクラスが上がったり、逆に下がることもあるのと違い、特待生Ⅰクラスだけは、学年が持ち上がる際のクラス替えでしか入ることが出来ない。

 その為、編入早々特待生Ⅰクラスに入れるということは、かなり優秀な頭脳の持ち主であるということになる。

 魔法科と違い、騎士科と文官科は、裕福な商人の家の子どもも多くいる。それ以外の平民は文字が読めない為、優秀な魔法使いであっても入学してくることはほぼない。

 商人の家に魔法使いが生まれることが少ないということ、また、魔法を学んでも仕事に生きることがないことから、魔法科を希望する商人の子どもが少ないことが理由だ。

 移動販売するような商人であれば、街道の魔物を倒す為に、魔法であれ剣術であれ、必要になってくるだろうが、裕福な商人は自分自身が町から出ることが少ない。

 リシャーラ王国では町中で魔法を使うことは禁じられている為、万が一の身を守る手段としては、剣術を学んだほうが得なのだ。

 また文官クラスの授業は、商人としても役に立つものもあり、将来王宮と関わることを考えた際に、予算を管理する立場につく人間と学生時代に懇意に出来るという面もある。

 そんな商人の子どもたちからすれば、特待生Ⅰクラスの生徒というのは、それだけで関わっておきたい生徒だろうな、とサイラスは思っていた。まあその子どもが商人になったら、王宮と関わりが持てないので意味ないが。

 昼休みの時間になり、サイラスはいつものように、手下のようにしている男子生徒たちと、食堂で昼食を取ろうと足を運んだ。

 食堂は全学年、すべてのクラスが利用するだけあって、ここでクラスや科の違う生徒に近付くことが出来る。

 王族であっても食堂を使うか、お弁当を持参して学園内のベンチ等で食べることになっている為、たまにザラ王女とエンジュ王女の姿を見かけることがあるのだ。

 サイラスは人垣に囲まれている人物を遠目で発見する。──ツイてる。ルカリア学園内で、あのように人に囲まれる人間は限られている。我が国の王太子か、ザラ王女たちか。

 王太子は背が高く、集団に囲まれても頭頂部が飛び出て見える為、中心にいる人物のそれが見えないということは、あそこにいるのはザラ王女かエンジュ王女に間違いない。

「おい、ちょっとどけよ。」
 サイラスは人垣を強引に押しのけて、中心部の人物に近付こうと試みた。
「お前……、なんでここに……。」

 円の中心部で困ったように眉を下げていた人物は、キャベンディッシュ侯爵家を追放して平民に落とすのに、自分も一役買った、アレックス・キャベンディッシュだった。

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