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第3章
第388話 レグリオ王国の判断
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「フレシィティ王妃について?」
次の日、店に行ってザックスさんに、フレシィティ王妃のことを尋ねることにした。
市場はお休みだけど、冒険者たちは活動しているから、お客さんはそれなりに入っていた。従業員は交代でお休みして貰ってる。リリーフィア王女殿下は今日はお休みらしい。
僕に尋ねられたザックスさんは、眉間にシワを寄せて片方の眉を吊り上げて、その名前を反芻した。
「はい、お詳しいかなと思って……。」
「なんでまた、フレシィティ王妃について知りたいんです?坊っちゃん。」
ちなみにザックスさんは僕のことを、オーナーでも会頭でもなく、坊っちゃんと呼ぶ。
人前では一応会頭と呼ぶけどね。
「他の国と交易をするにあたって、歴史的背景は出来るだけ学んでおきたいんだ。最近レグリオ王国のフレシィティ王妃の存在を知って……。それで聞いておきたいんだよ。」
「ああ、確かに、リシャーラ王国では全然話題にものぼってないですね。もうこちらでは忘れられた記憶なんだなと思いましたよ。」
そう言うってことは、ザックスさんたちレグリオ王国民からすると、まだぜんぜん新鮮な話題だってことなのかな。
「うん、僕の親世代は話題にしてたみたいだけど、僕の世代の貴族の子息たちは、そもそもそんなことがあったと知らない人がほとんどじゃないかな。」
「そうなんですね。いつまでも恥だと思っているのは、レグリオ王国だけなのかも知れませんね。……まあ、先々代の話ですしね。」
「レグリオ王国では、まだフレシィティ王妃を恨んでいるの?」
もしもそうだとしたら、ヒルデやそのご家族に危険が及ばないともわからないよ。
「さあ……。偉い人たちの考えることはわかりませんが、国民的にも、イーニオ王国にいい印象がないのは確かですね。──メディオシルクはご存知ですか?坊っちゃん。」
「イーニオ王国特産のシルクだよね?
イーニオ王国にしかいないという、メディオットという虫の繭を使った……。」
「はい、もともとメディオシルク目当ての政略結婚だったんです。
それをあんなことがあったので……。
どこよりも優先的にメディオシルクの取引を優先させたと聞いています。
それを更に加工し販売することで、レグリオ王国は儲けてきたわけです。
ですが最近イーニオ王国が、もう世界はフレシィティ王妃を忘れている、だからいつまでも恥をかかされたと言い続けるのはやめて欲しいと、王族特有のもってまわった言い回しで、こちらに伝えて来たようで。
まあ、ようはイーニオ王国の主要な外貨獲得の手段を、安い値段で大量にレグリオ王国に売ることはもう出来ないと、言ってきたということですね。」
「だから、レグリオ王国では国中がフレシィティ王妃のことを強く覚えているんだね。」
恥をかかされたのは事実でも、その弱みにつけこんで何十年も儲けてきたわけだし、その分はとっくに取り戻していると言える。
イーニオ王国がしびれを切らして、賠償責任とみそぎは済んだ筈としても、おかしくはないね。むしろ長く保証してくれたと思う。
「まあ確かに、フレシィティ王妃の不倫がバレて逃亡してから50年以上が過ぎていますから、その年数だけ考えても、じゅうぶんな保証をしてきたと思いますよ。」
「ザックスさんはそう思うんだ。」
レグリオ王国民でも、一般の人はそう思っているんだね。ならイーニオ王国にいい印象がないとは言っても、過分な保証をしてくれたと考えてはいるわけだ。
「でも、国はそう思っていないわけだね。」
「思っていないというよりも、そう国民に思わせておかないと、メディオシルクで儲けられませんからね。」
「なるほど、自国民はまだ怒っている、だから保証が足りていない、としたいということだね。他国の記憶が薄まっている今、主張出来る部分は国民感情ということか。」
「だと思います。俺は長らく奴隷として閉じ込められていたので、世情にうといですが、それでも新しく入ってきた奴隷や、奴隷商人の話すことを漏れ聞いた限りはそうですね。」
「……もしもフレシィティ王妃の子孫が見つかったら、どうなるんだろう?」
「フレシィティ王妃の子孫、ですか?」
「フレシィティ王妃が殺されたという話はなかったんでしょう?」
「そうですね。逃亡したと聞いています。ずっと国に指名手配書が貼られていますよ。」
「まだ貼られているの!?」
「当時は国中にだったらしいです。
今はそこまでじゃありませんが、貼られているところは貼られていますね。」
うわあ……。全然諦めてないよ。
「フレシィティ王妃が逃げおおせて、その先で子孫を残していたとしたら、今のレグリオ王国なら捕らえるんじゃないでしょうか。」
「……フレシィティ王妃の代わりに?」
「未だに指名手配書を貼っているくらいですからね。子孫を捕らえてイーニオ王国から更なる賠償をせしめようとするか──見せしめに処刑するか、の二択でしょうね。
少なくとも放ってはおかないでしょう。」
ヒルデのお祖母の選択は正しかったわけだね。ヒルデの素性はこの先も、レグリオ王国に知られないほうが良さそうだ。
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次の日、店に行ってザックスさんに、フレシィティ王妃のことを尋ねることにした。
市場はお休みだけど、冒険者たちは活動しているから、お客さんはそれなりに入っていた。従業員は交代でお休みして貰ってる。リリーフィア王女殿下は今日はお休みらしい。
僕に尋ねられたザックスさんは、眉間にシワを寄せて片方の眉を吊り上げて、その名前を反芻した。
「はい、お詳しいかなと思って……。」
「なんでまた、フレシィティ王妃について知りたいんです?坊っちゃん。」
ちなみにザックスさんは僕のことを、オーナーでも会頭でもなく、坊っちゃんと呼ぶ。
人前では一応会頭と呼ぶけどね。
「他の国と交易をするにあたって、歴史的背景は出来るだけ学んでおきたいんだ。最近レグリオ王国のフレシィティ王妃の存在を知って……。それで聞いておきたいんだよ。」
「ああ、確かに、リシャーラ王国では全然話題にものぼってないですね。もうこちらでは忘れられた記憶なんだなと思いましたよ。」
そう言うってことは、ザックスさんたちレグリオ王国民からすると、まだぜんぜん新鮮な話題だってことなのかな。
「うん、僕の親世代は話題にしてたみたいだけど、僕の世代の貴族の子息たちは、そもそもそんなことがあったと知らない人がほとんどじゃないかな。」
「そうなんですね。いつまでも恥だと思っているのは、レグリオ王国だけなのかも知れませんね。……まあ、先々代の話ですしね。」
「レグリオ王国では、まだフレシィティ王妃を恨んでいるの?」
もしもそうだとしたら、ヒルデやそのご家族に危険が及ばないともわからないよ。
「さあ……。偉い人たちの考えることはわかりませんが、国民的にも、イーニオ王国にいい印象がないのは確かですね。──メディオシルクはご存知ですか?坊っちゃん。」
「イーニオ王国特産のシルクだよね?
イーニオ王国にしかいないという、メディオットという虫の繭を使った……。」
「はい、もともとメディオシルク目当ての政略結婚だったんです。
それをあんなことがあったので……。
どこよりも優先的にメディオシルクの取引を優先させたと聞いています。
それを更に加工し販売することで、レグリオ王国は儲けてきたわけです。
ですが最近イーニオ王国が、もう世界はフレシィティ王妃を忘れている、だからいつまでも恥をかかされたと言い続けるのはやめて欲しいと、王族特有のもってまわった言い回しで、こちらに伝えて来たようで。
まあ、ようはイーニオ王国の主要な外貨獲得の手段を、安い値段で大量にレグリオ王国に売ることはもう出来ないと、言ってきたということですね。」
「だから、レグリオ王国では国中がフレシィティ王妃のことを強く覚えているんだね。」
恥をかかされたのは事実でも、その弱みにつけこんで何十年も儲けてきたわけだし、その分はとっくに取り戻していると言える。
イーニオ王国がしびれを切らして、賠償責任とみそぎは済んだ筈としても、おかしくはないね。むしろ長く保証してくれたと思う。
「まあ確かに、フレシィティ王妃の不倫がバレて逃亡してから50年以上が過ぎていますから、その年数だけ考えても、じゅうぶんな保証をしてきたと思いますよ。」
「ザックスさんはそう思うんだ。」
レグリオ王国民でも、一般の人はそう思っているんだね。ならイーニオ王国にいい印象がないとは言っても、過分な保証をしてくれたと考えてはいるわけだ。
「でも、国はそう思っていないわけだね。」
「思っていないというよりも、そう国民に思わせておかないと、メディオシルクで儲けられませんからね。」
「なるほど、自国民はまだ怒っている、だから保証が足りていない、としたいということだね。他国の記憶が薄まっている今、主張出来る部分は国民感情ということか。」
「だと思います。俺は長らく奴隷として閉じ込められていたので、世情にうといですが、それでも新しく入ってきた奴隷や、奴隷商人の話すことを漏れ聞いた限りはそうですね。」
「……もしもフレシィティ王妃の子孫が見つかったら、どうなるんだろう?」
「フレシィティ王妃の子孫、ですか?」
「フレシィティ王妃が殺されたという話はなかったんでしょう?」
「そうですね。逃亡したと聞いています。ずっと国に指名手配書が貼られていますよ。」
「まだ貼られているの!?」
「当時は国中にだったらしいです。
今はそこまでじゃありませんが、貼られているところは貼られていますね。」
うわあ……。全然諦めてないよ。
「フレシィティ王妃が逃げおおせて、その先で子孫を残していたとしたら、今のレグリオ王国なら捕らえるんじゃないでしょうか。」
「……フレシィティ王妃の代わりに?」
「未だに指名手配書を貼っているくらいですからね。子孫を捕らえてイーニオ王国から更なる賠償をせしめようとするか──見せしめに処刑するか、の二択でしょうね。
少なくとも放ってはおかないでしょう。」
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