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第3章
第401話 魔王の封印の仕方
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「すべての生き物にそれぞれ加護を与える神さまがいて、独自に発展するように願っているのに、魔族と魔物だけの世界にしようとしたら、世界が破滅してしまうと思います。」
それって、魔族に加護を与えている神さま──アイバーリュスが、他の兄弟神や親戚の神さまたちに、喧嘩を売っているようなものだよ。人間が同じようなことをしたら、僕はそれを認められないと思う。
「そうね。国家レベルの小競り合いとは、次元の違う話しだわ。自然を作り変えようというのだもの。人間が魔族の国を滅ぼして、土地を手に入れたとしたって、瘴気を完全に消すことなんて出来ないのよ。」
「だけど魔王はそれが出来てしまう……。」
「ええ。その力があるわ。瘴気の多い土地で人間は長く暮らすことが出来ないから、せいぜい素材を採りに行くか、魔族を隷属化して採らせるかのどちらかになるでしょうね。」
「それなら自然は変わりませんね。」
「だけど魔王がいたらそうはいかない。
瘴気を生み出しているのは魔王だから。
魔王が復活したら、世界中に瘴気がどんどん広がっていくのよ。」
「魔族を守護する神さまが強いからですね?
ある時からそうなったと教わりました。」
アイバーリュスが兄弟神を食べて力を増したから、ってことか……。
「昔は違ったらしいわね。
魔王がいたからって、瘴気が広範囲まで広がることはなかったそうよ。」
「そうなると他の種族としては、魔王を倒すか封印するしかなくなるということですね。
世界に瘴気を広めない為に。」
「そうよ。だから私たちも魔王を倒そうと思って挑んだのだけど……。とても無理だったわ。封印に成功こそしたものの、魔王を倒せなかった英雄を、人々は白い目で見たわ。」
「──だから誰も、当時の話を聞いてこないということですか?」
勇者や英雄たちは、人間を、世界を救うために戦ったっていうのに?
「そうね。昔のことだから、私が元英雄だったと聞いても、実感がわかないからなのか、今の人たちには白い目で見られることはないけれど、誰も話を聞いてはこないわね。」
「そんな……。命をかけて封印したんですよね?それなのに、そんなことって……。」
「世界を代表しているのだもの、結果を出せなかったら落胆するのは仕方がないわ。」
エリクソンさんは目線を落として、諦めたような、傷付いたような表情を一瞬見せた。
「エリクソンさん。」
僕の声にエリクソンさんが顔を上げる。
「長い間修練して命をかけて挑んだのに、討伐という結果が出せなかったというだけで、そんな扱いを受けることをわかっていたら、それでも英雄になりたかったですか?」
エリクソンさんはジッと僕の目を見つめてきた。そんなことを聞いてきた人が、今までいなかったのだろう。
だけど僕は英雄を育てている立場だ。
もしもたくさんの英雄を育て上げても、やっぱり魔王を封印しか出来なかった場合、みんなは英雄になったことを悲しむのかな。
それはとても気になるところだよ。
命をかけて戦った見返りがそれじゃ、あんまりにも救われないもの。
「そうね、私は、だけど。
──それでも英雄になったと思うわ。
だって、挑戦してみなければ、何事も始まらないもの。私たちには無理だったけれど、いつかは誰かが成功すると思う。」
「そうですか……。
そうですね、きっとそうなります。」
僕もそう思ってもらえるように頑張ろう。
1番はもちろん、魔王を倒すことだけど。
万が一駄目だとしても、英雄にならなければよかったと思われないように。
それが僕の今後の課題で目標になった。
「そうね、私もそう思うわ。
成し遂げられると信じて戦う心。
それが英雄には大切なんだと思う。」
エリクソンさんはほほ笑みながら言った。
「封印で思ったんですが、魔王の封印って、どうやったんですか?伝承の中には、そういった話はなかったんですが、皆さんは当時、どこかでその方法を知ったんでしょうか?」
魔王は強すぎて封印しか出来ない。僕ら英雄に関わりのない人間が知っているのはそれだけだ。封印の仕方なんて、誰も知らない。
どこかにそれを記した書物なり、古代文字で書かれた石碑なりあったりして、それを英雄だけは読み解くことが出来るとか?
「ああ……。普通の人は知らないわよね。
私たちも、英雄になるまでは、というよりも、魔王討伐に向かうまでは、知らなかったもの。知っていたのは勇者と聖女だけだったの。2人に天啓がおりてきたのよ。」
「ああ、それで皆さんはご存知なかったって言うことですか。」
「というより、……私たちには知られたくなかったんでしょうね。」
「知られたく、なかった?」
「その方法しかないとわかっていたら、私たちだって引き止めたわ。だけど気付いた時には勇者と聖女がそれを実行した後だった。」
僕はゴクリとつばを飲み込んだ。
「それは、いったい、どんな……?」
「魔王を封印するにはね、
──勇者の心臓を使うのよ。」
────────────────────
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それって、魔族に加護を与えている神さま──アイバーリュスが、他の兄弟神や親戚の神さまたちに、喧嘩を売っているようなものだよ。人間が同じようなことをしたら、僕はそれを認められないと思う。
「そうね。国家レベルの小競り合いとは、次元の違う話しだわ。自然を作り変えようというのだもの。人間が魔族の国を滅ぼして、土地を手に入れたとしたって、瘴気を完全に消すことなんて出来ないのよ。」
「だけど魔王はそれが出来てしまう……。」
「ええ。その力があるわ。瘴気の多い土地で人間は長く暮らすことが出来ないから、せいぜい素材を採りに行くか、魔族を隷属化して採らせるかのどちらかになるでしょうね。」
「それなら自然は変わりませんね。」
「だけど魔王がいたらそうはいかない。
瘴気を生み出しているのは魔王だから。
魔王が復活したら、世界中に瘴気がどんどん広がっていくのよ。」
「魔族を守護する神さまが強いからですね?
ある時からそうなったと教わりました。」
アイバーリュスが兄弟神を食べて力を増したから、ってことか……。
「昔は違ったらしいわね。
魔王がいたからって、瘴気が広範囲まで広がることはなかったそうよ。」
「そうなると他の種族としては、魔王を倒すか封印するしかなくなるということですね。
世界に瘴気を広めない為に。」
「そうよ。だから私たちも魔王を倒そうと思って挑んだのだけど……。とても無理だったわ。封印に成功こそしたものの、魔王を倒せなかった英雄を、人々は白い目で見たわ。」
「──だから誰も、当時の話を聞いてこないということですか?」
勇者や英雄たちは、人間を、世界を救うために戦ったっていうのに?
「そうね。昔のことだから、私が元英雄だったと聞いても、実感がわかないからなのか、今の人たちには白い目で見られることはないけれど、誰も話を聞いてはこないわね。」
「そんな……。命をかけて封印したんですよね?それなのに、そんなことって……。」
「世界を代表しているのだもの、結果を出せなかったら落胆するのは仕方がないわ。」
エリクソンさんは目線を落として、諦めたような、傷付いたような表情を一瞬見せた。
「エリクソンさん。」
僕の声にエリクソンさんが顔を上げる。
「長い間修練して命をかけて挑んだのに、討伐という結果が出せなかったというだけで、そんな扱いを受けることをわかっていたら、それでも英雄になりたかったですか?」
エリクソンさんはジッと僕の目を見つめてきた。そんなことを聞いてきた人が、今までいなかったのだろう。
だけど僕は英雄を育てている立場だ。
もしもたくさんの英雄を育て上げても、やっぱり魔王を封印しか出来なかった場合、みんなは英雄になったことを悲しむのかな。
それはとても気になるところだよ。
命をかけて戦った見返りがそれじゃ、あんまりにも救われないもの。
「そうね、私は、だけど。
──それでも英雄になったと思うわ。
だって、挑戦してみなければ、何事も始まらないもの。私たちには無理だったけれど、いつかは誰かが成功すると思う。」
「そうですか……。
そうですね、きっとそうなります。」
僕もそう思ってもらえるように頑張ろう。
1番はもちろん、魔王を倒すことだけど。
万が一駄目だとしても、英雄にならなければよかったと思われないように。
それが僕の今後の課題で目標になった。
「そうね、私もそう思うわ。
成し遂げられると信じて戦う心。
それが英雄には大切なんだと思う。」
エリクソンさんはほほ笑みながら言った。
「封印で思ったんですが、魔王の封印って、どうやったんですか?伝承の中には、そういった話はなかったんですが、皆さんは当時、どこかでその方法を知ったんでしょうか?」
魔王は強すぎて封印しか出来ない。僕ら英雄に関わりのない人間が知っているのはそれだけだ。封印の仕方なんて、誰も知らない。
どこかにそれを記した書物なり、古代文字で書かれた石碑なりあったりして、それを英雄だけは読み解くことが出来るとか?
「ああ……。普通の人は知らないわよね。
私たちも、英雄になるまでは、というよりも、魔王討伐に向かうまでは、知らなかったもの。知っていたのは勇者と聖女だけだったの。2人に天啓がおりてきたのよ。」
「ああ、それで皆さんはご存知なかったって言うことですか。」
「というより、……私たちには知られたくなかったんでしょうね。」
「知られたく、なかった?」
「その方法しかないとわかっていたら、私たちだって引き止めたわ。だけど気付いた時には勇者と聖女がそれを実行した後だった。」
僕はゴクリとつばを飲み込んだ。
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──勇者の心臓を使うのよ。」
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