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第3章
第417話 見覚えのある顔
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「冒険者も、飲みに行く金や、武器や防具の手入れを鍛冶職人に頼む分か、娼館に行く分の金以外は冒険者ギルドに預けてるんだ。」
とテイラーギルド長が言う。
「それ以外は、基本持ち歩かない。持ち歩くとしても、用途別に布袋か革袋に入れて、財布なんて上等なものは持ち歩かないのさ。
こういうのを見たことはないか?」
と、テイラーギルド長が、コインが入っているらしき布袋を、親指と人差し指と中指だけでつまんで、みんなに見せている。
「さ、さっきギルドのクエスト達成でもらったやつだ……。これを使っているのか?」
サイラスが布袋を指さして言う。
「そうよ。これは財布と違う。中身がなくなったら捨てるものよ。それか、支払い先で置いてくるの。支払先がまた他の人に渡す時に使うのよ。まあ個人で同じものを繰り返し使う人も、まれにいなくはないけどね。」
「じゃ、じゃあ、買い食いしたい時はどうするんだ。どこにも寄れないじゃないか。」
そうだね、確かに。帰りに市場をぶらつきながら、店をのぞいて帰るなんて出来ない。
「そもそも計画的にお金を使いますから、こういうところでお金を落とす人は旅行者か、わざわざ来ると決めてここに来ている人たちなので、必要な分しか持ってこないんです。」
「大人でもせいぜい銀貨1枚、ポケットにしのばせておくくらいさ。どこかに寄る用事がないならね。急にお金を使うことがないからね。お金は特別な時に使うものなのさ。」
「うちの肉の焼串屋や、向かいの魚屋に来ているお客さんたちも、一度家に戻ってお金を取りに帰っているか、毎日出ているのがわかっている人は、買う分のお金をもともと持って家を出ているんですよ、旅行者以外は。」
ポーリンさんとラナおばさんが教えてくれる。財布を出すのが貴族だけだなんて……!
どうりで平民の格好をしている僕が、いきなり狙われたわけだよ。
僕が叔父さんに頼まれた一角ウサギの角を売りに来た時、襲ってきた奴らは、最初からずっと僕のことをジロジロと見てた。僕が一角ウサギの納品クエストを受ける前から。
僕がその時貰った一角ウサギの角の代金なんて、新人の稼ぎとしては多いほうだと言われたから、僕がそれだけ稼げると思ったから、様子を伺っていたなんて筈はない。
僕が放逐されたばかりの貴族の子どもだと目をつけて、それで動向を探っていたんだ!
叔父さんが僕を冒険者ギルドに登録させたのは、マジックバッグを持っていてもおかしくないと思わせるためもあったのかな?
それか、ああいう奴らもいると、身を持ってわからせる為とか?一度経験しないと、多分口で教えても実際の恐怖はわからない。
一度経験したことで、僕は気を引き締めたり、物陰から突然手が伸びてこないか、気を付けて生活するようにもなったし。
最初の頃に襲われることがなかったら、気付かないまま過ごして、もっとお金を持つようになってから襲われて、それこそ身代金目当てに誘拐されたり、取り返しがつかない事態になることもあったかも知れない。
実際貴族は襲われることがあると、僕らは子どもの頃から教えられて育って、その為に護衛をつけられて行動しているけれど、護衛っているのが当たり前というか、いるから襲われなかっただけだってわからなかったし。
……多分、貴族のままだったら、一生知ることはなかったかも知れないな。
特に僕の家は上級貴族だから、一人で出歩くってことが基本ないんだもの。
それはサイラスも、オフィーリア嬢も同じだっただろう。だけどオフィーリア嬢は冒険者講習を受けることで、特に冒険者になる貴族が最初に巻き込まれるトラブルなんかを、事前に学べたってことなんだね。
今後僕の店には、どんどん人を増やしていく予定でいるけど、平民から優先的に採用していこうと考えていたんだけど、僕みたいな放逐貴族もありかも知れないね?
戦いに役立つスキルのない子どもの受け入れ先が少ないせいで、放逐された挙げ句冒険者になって、そこで襲われて死ぬか犯罪者になってしまうのなら、受け入れ先がひとつ増えることで、救える命もあるかも知れない。
それに少なくとも、最低限の読み書き計算なんかは、子どもの頃に家庭教師をつけられて、学んている子どもがほとんどだし、そういう点においては人材育成の費用対効果が、安く済むかも知れないなあ。
「放逐された結果襲われて死んだり、自分を襲った人間の真似ごとをして犯罪者になったりして、奴隷落ちなんてことにならないようにな。今うちのギルドを手伝わせている奴隷たちも、もとは放逐貴族だそうだからな。」
そう言って、テイラーギルド長が握りこぶしに立てた親指を、後ろに向かって指し示す先には、あの日僕を襲って、ヒルデにボコボコにされた3人組が立っていた!
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とテイラーギルド長が言う。
「それ以外は、基本持ち歩かない。持ち歩くとしても、用途別に布袋か革袋に入れて、財布なんて上等なものは持ち歩かないのさ。
こういうのを見たことはないか?」
と、テイラーギルド長が、コインが入っているらしき布袋を、親指と人差し指と中指だけでつまんで、みんなに見せている。
「さ、さっきギルドのクエスト達成でもらったやつだ……。これを使っているのか?」
サイラスが布袋を指さして言う。
「そうよ。これは財布と違う。中身がなくなったら捨てるものよ。それか、支払い先で置いてくるの。支払先がまた他の人に渡す時に使うのよ。まあ個人で同じものを繰り返し使う人も、まれにいなくはないけどね。」
「じゃ、じゃあ、買い食いしたい時はどうするんだ。どこにも寄れないじゃないか。」
そうだね、確かに。帰りに市場をぶらつきながら、店をのぞいて帰るなんて出来ない。
「そもそも計画的にお金を使いますから、こういうところでお金を落とす人は旅行者か、わざわざ来ると決めてここに来ている人たちなので、必要な分しか持ってこないんです。」
「大人でもせいぜい銀貨1枚、ポケットにしのばせておくくらいさ。どこかに寄る用事がないならね。急にお金を使うことがないからね。お金は特別な時に使うものなのさ。」
「うちの肉の焼串屋や、向かいの魚屋に来ているお客さんたちも、一度家に戻ってお金を取りに帰っているか、毎日出ているのがわかっている人は、買う分のお金をもともと持って家を出ているんですよ、旅行者以外は。」
ポーリンさんとラナおばさんが教えてくれる。財布を出すのが貴族だけだなんて……!
どうりで平民の格好をしている僕が、いきなり狙われたわけだよ。
僕が叔父さんに頼まれた一角ウサギの角を売りに来た時、襲ってきた奴らは、最初からずっと僕のことをジロジロと見てた。僕が一角ウサギの納品クエストを受ける前から。
僕がその時貰った一角ウサギの角の代金なんて、新人の稼ぎとしては多いほうだと言われたから、僕がそれだけ稼げると思ったから、様子を伺っていたなんて筈はない。
僕が放逐されたばかりの貴族の子どもだと目をつけて、それで動向を探っていたんだ!
叔父さんが僕を冒険者ギルドに登録させたのは、マジックバッグを持っていてもおかしくないと思わせるためもあったのかな?
それか、ああいう奴らもいると、身を持ってわからせる為とか?一度経験しないと、多分口で教えても実際の恐怖はわからない。
一度経験したことで、僕は気を引き締めたり、物陰から突然手が伸びてこないか、気を付けて生活するようにもなったし。
最初の頃に襲われることがなかったら、気付かないまま過ごして、もっとお金を持つようになってから襲われて、それこそ身代金目当てに誘拐されたり、取り返しがつかない事態になることもあったかも知れない。
実際貴族は襲われることがあると、僕らは子どもの頃から教えられて育って、その為に護衛をつけられて行動しているけれど、護衛っているのが当たり前というか、いるから襲われなかっただけだってわからなかったし。
……多分、貴族のままだったら、一生知ることはなかったかも知れないな。
特に僕の家は上級貴族だから、一人で出歩くってことが基本ないんだもの。
それはサイラスも、オフィーリア嬢も同じだっただろう。だけどオフィーリア嬢は冒険者講習を受けることで、特に冒険者になる貴族が最初に巻き込まれるトラブルなんかを、事前に学べたってことなんだね。
今後僕の店には、どんどん人を増やしていく予定でいるけど、平民から優先的に採用していこうと考えていたんだけど、僕みたいな放逐貴族もありかも知れないね?
戦いに役立つスキルのない子どもの受け入れ先が少ないせいで、放逐された挙げ句冒険者になって、そこで襲われて死ぬか犯罪者になってしまうのなら、受け入れ先がひとつ増えることで、救える命もあるかも知れない。
それに少なくとも、最低限の読み書き計算なんかは、子どもの頃に家庭教師をつけられて、学んている子どもがほとんどだし、そういう点においては人材育成の費用対効果が、安く済むかも知れないなあ。
「放逐された結果襲われて死んだり、自分を襲った人間の真似ごとをして犯罪者になったりして、奴隷落ちなんてことにならないようにな。今うちのギルドを手伝わせている奴隷たちも、もとは放逐貴族だそうだからな。」
そう言って、テイラーギルド長が握りこぶしに立てた親指を、後ろに向かって指し示す先には、あの日僕を襲って、ヒルデにボコボコにされた3人組が立っていた!
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