418 / 453
第3章

第523話 国王の判断

しおりを挟む
「誰か来るぞ。こんな時間に王宮に来客予定だなんてあったか?」
「いや、聞いてないな。」

 門番の番兵たちは、そんな風に話しながらこちらをしっかり見ようと覗き込んでいる。
「お、おい……。なんだあれ。
 まさか──ルーデンス王太子殿下!?」

「ルーデンス王太子殿下が捕縛されてるぞ?
 誰だ、あの先頭の奴は!!」
 門番がこちらを見て叫んでいる。

 僕は一度国に戻って正装し、ドラゴンの国バルヒュモイ王国の従者たちによって捕縛されたルーデンス王太子殿下たちを引き連れ、馬に乗って王宮へと向かっていた。

 同じく馬に乗った護衛と、その横に槍を持った歩兵たちが、ルーデンス王太子殿下たちが逃げないように取り囲んでいる。

「国王に取次を所望する。こちらの者たちは我が国の王族に手出しした罪で捕縛された次第。聞けばそちらの国の王太子及び、その配下とのこと。国として正式に抗議と賠償請求をさせていただきに参った。」
 馬上の従者が巻き紙を開いて見せる。

 それを聞いた番兵は、飛び上がるようにして驚いた。
「そ、それでは取次を確認させていただきますが、どちらの国でいらっしゃいますか?」

「我が国はフルバティエ。
 先日新しく国と認められたばかりだ。」
「フルバティエ……?聞いたことあるか?」
「いや……。まあとりあえず取りつごう。」

 番兵の1人が門の奥に引っ込み、しばらくして僕らは王宮内に通されることになった。
 謁見の間で、赤い絨毯がまっすぐに引かれた先の一段高い場所に国王がいた。

 巻き紙をフルバティエの従者から受け取ったリシャーラ王国の従者が、筆頭補佐官、デニス・アルグーイにそれを手渡した。

 筆頭補佐官、デニス・アルグーイは、巻き紙に目を通すと、驚いた表情で壇上に上がって、国王に何事か耳打ちをした。

「我が国の王太子が、そちらの国の王族に危害を加えたと。……フルバティエ王国、だったか。聞いたことのない国だが。」

 国王、エディンシウム・ラハル・リシャーラ陛下は、不審なものを見る目を隠そうともせずに、僕を見つめていた。

「先日、バルヒュモイ王国、スウォン皇国、エザリス王国の3つの国に、新たな国として認めていただいたばかりです。こちらがその書類の写しになります。」

 僕の指示で再び別の巻き紙を差し出した従者の元に、さっきの従者が駆け寄り、巻き紙を受け取ると、筆頭補佐官、デニス・アルグーイに手渡した。

 筆頭補佐官デニス・アルグーイが巻き紙に目を通すと、それを恭しくエディンシウム・ラハル・リシャーラ陛下へと差し出した。

「……確かに。これは正式な書面になるな。
 して、危害を加えられた相手というのは、そなたなかな?」
 陛下はヒゲを引っ張りながらそう言った。

 なんだろう、すごく感じが悪いな。
 ルーデンス王太子の態度といい、僕はずっと引っかかりを感じていた。

「いえ、僕の妻ヒルデです。彼女はフルバティエの第2王妃。その彼女を無理やりものにしようと、ここにいる6人で襲ったのです。
 ここに証拠の音声と映像もあります。」

「あの女が王妃だと!?」
「そんな……、聞いてない……。」
 ルーデンス王太子たちが騒いでいる。
 このためにわざと隠してたわけだしね。

「それが本当のことならば、他国の王妃を6人もの人間で襲ったとなると……。」
「我が国は他国からの非難を免れない。」
「なんということを……。」

「エザリス王国といえば、最近ルカンタ王国の後ろ盾を得た国じゃないか。ルカンタは我が国など比べ物にならない大国だぞ……。」

「スウォン皇国も獣人の国では1番だ。」
「おまけにドラゴンの国、バルヒュモイ王国だって?ドラゴンが攻めてくるのか?」

 壁に等間隔で並んで立っている兵士たちから、そんな言葉がヒソヒソと漏れ聞こえてくる。これが将来の国王と、その側近候補なんだからね。国民は裏切られた気持ちだろう。

「それだけじゃありません、彼らは複数の女生徒に同様の危害を加えています。被害者は両手ではおさまらないほどです。僕はルーデンス王太子殿下の廃嫡を望みます。」

「アレックス!お前、何を……!」
「静まれ!勝手にこの場を動こうとするな!
 我が王が会談中だ!」

 ハリソン・フェアファクス公爵令息がそう叫んだ途端、僕の従者に頭を押さえつけられて、地面に力ずくでひれ伏せさせられた。

「僕は今、君たちの学友としてでなく、フルバティエの国王として話しているんだ。
 少し黙っていてくれないかな。」

 遠くで魔法大臣としてこの場にいた父さまが、目を丸くして僕を見ている。父さまは何も言えないだろうな。この場で僕と親子の名乗りを上げると、場を混乱させるからね。

「フルバティエ国王……だったか。
 貴殿の言い分はわかった。だが、その願いはかなえることが出来ぬな。」
 陛下は鷹揚に構えてそう言った。

────────────────────

少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収

ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。 彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。 だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。 自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。 「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」 契約解除。返還されたレベルは9999。 一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。 対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。 静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。 「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」 これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。 (本作品はAIを活用して構成・執筆しています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。