養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第55話 アデラ・フォン・ロイエンタール前伯爵夫人の訪問①
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ずいぶんと図々しいことになっているようじゃないの、……あの生意気な嫁は。」
「……お久しぶりですお母さま。久々にいらっしゃったかと思えばまた唐突ですね。」
イサークの母親、アデラ・フォン・ロイエンタール前伯爵夫人は、着てきた上着を侍女に脱がされつつ預けながら歩いて来た。
なんの先触れもなく、突然ロイエンタール伯爵家を訪問したのだ。アデラが屋敷に来る時はいつもそうだった。
商会の権利はイザークが有しているが、前ロイエンタール伯爵亡きあと、屋敷の権利も領地の権利もまだアデラが有している。
法律的に、先代とその配偶者、双方が亡くなるまでは、息子夫婦は伯爵家を借りて住んでいるという立場となる。その自分の家に来るのになぜ先触れなど必要だというのか。
アデラはそう考えていた。特に領地やロイエンタール伯爵家の屋敷の管理を息子の嫁に引き継がず、現役で対応していることから、自分のものであるという意識が強い。
「ご健勝でいらっしゃいましたか?」
「まぁね。あなたも元気そうだこと。」
お互い形だけの挨拶をかわした。
「……一応お伺いしますが何用でしょう?」
普段でも別に実母の来訪を歓迎しているわけではないが、今日は一段とそのようだ。
「あら、ご挨拶だこと。母親が息子の顔を見に来ることになんの問題があると言うの?」
だいぶ年齢による皺が刻まれたとはいえ、まだまだ美しいアデラは、そう言って柳眉を潜めながら皮肉げに笑う。
若い時のアデラと、前ロイエンタール伯爵が並んだ姿は、それはそれは美しい、1枚の絵画のようだと言われたものだ。
その為、地味で暗い息子の妻を疎ましく思うと同時に嘲っていた。この年齢の自分よりも、美しいと言われることの出来ない嫁。
──成人した息子がいても、自分のほうがはるかに美しい……。アデラはそう自負していた。だからこそ、最近聞こえてきた、現ロイエンタール伯爵夫人が美しいという噂に納得がいっていなかったのだ。
最初は美しいロイエンタール伯爵夫人、という言葉を聞いて、てっきり自分のことだと思い込み、顔に出さずにほくそ笑んでいた。
だがどうやら息子の嫁のことだとわかった途端、なんて見る目のない人たちかしら、とまるで自分が息子の嫁と比較されて貶められたかのような不快感をあらわにした。
それに加えて、魔法絵師としてのスキルを開花させたとまで聞く。魔法絵師は花形職業だ。アデリナ・アーベレ公爵令嬢のこともあり、特に女性の憧れの仕事なのである。
そんなアデラですらも憧れる、特別な仕事の魔法絵師に息子の妻がなっただけでなく、アデリナ・アーベレ嬢とも親しくしていると聞く。あの社交嫌いがどうしたことか。
イザークにいいつけて、本人が参加したがる社交はことごとく潰させてきた。
いったいどこで親しくなったというのか。
イザークには、あなたの仕事に必要のない社交は意味がないのよ、と言っていたが、少しでもあの見苦しい嫁が、自分の視界に入る可能性を潰したかったのだ。
そう言っておけば、派手な社交を嫌うあの嫁は、アデラが参加するパーティーなどにはそもそも顔を出さないし、万が一にも王妃さまが主催する読書サロンなどにも、顔を出せなくなり、心穏やかに生活が出来るのだ。
アデラの記憶の中のイザークの妻といえば、常にうつむきがちで、両手を前で揃えて、暗い表情をしているつまらない女だった。
イザークが文句を言わない妻を、と求めただけあって、何も主張をしてこない。
だから伯爵夫人としての、領地経営などの仕事を、アデラは手放さなかった。
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「ずいぶんと図々しいことになっているようじゃないの、……あの生意気な嫁は。」
「……お久しぶりですお母さま。久々にいらっしゃったかと思えばまた唐突ですね。」
イサークの母親、アデラ・フォン・ロイエンタール前伯爵夫人は、着てきた上着を侍女に脱がされつつ預けながら歩いて来た。
なんの先触れもなく、突然ロイエンタール伯爵家を訪問したのだ。アデラが屋敷に来る時はいつもそうだった。
商会の権利はイザークが有しているが、前ロイエンタール伯爵亡きあと、屋敷の権利も領地の権利もまだアデラが有している。
法律的に、先代とその配偶者、双方が亡くなるまでは、息子夫婦は伯爵家を借りて住んでいるという立場となる。その自分の家に来るのになぜ先触れなど必要だというのか。
アデラはそう考えていた。特に領地やロイエンタール伯爵家の屋敷の管理を息子の嫁に引き継がず、現役で対応していることから、自分のものであるという意識が強い。
「ご健勝でいらっしゃいましたか?」
「まぁね。あなたも元気そうだこと。」
お互い形だけの挨拶をかわした。
「……一応お伺いしますが何用でしょう?」
普段でも別に実母の来訪を歓迎しているわけではないが、今日は一段とそのようだ。
「あら、ご挨拶だこと。母親が息子の顔を見に来ることになんの問題があると言うの?」
だいぶ年齢による皺が刻まれたとはいえ、まだまだ美しいアデラは、そう言って柳眉を潜めながら皮肉げに笑う。
若い時のアデラと、前ロイエンタール伯爵が並んだ姿は、それはそれは美しい、1枚の絵画のようだと言われたものだ。
その為、地味で暗い息子の妻を疎ましく思うと同時に嘲っていた。この年齢の自分よりも、美しいと言われることの出来ない嫁。
──成人した息子がいても、自分のほうがはるかに美しい……。アデラはそう自負していた。だからこそ、最近聞こえてきた、現ロイエンタール伯爵夫人が美しいという噂に納得がいっていなかったのだ。
最初は美しいロイエンタール伯爵夫人、という言葉を聞いて、てっきり自分のことだと思い込み、顔に出さずにほくそ笑んでいた。
だがどうやら息子の嫁のことだとわかった途端、なんて見る目のない人たちかしら、とまるで自分が息子の嫁と比較されて貶められたかのような不快感をあらわにした。
それに加えて、魔法絵師としてのスキルを開花させたとまで聞く。魔法絵師は花形職業だ。アデリナ・アーベレ公爵令嬢のこともあり、特に女性の憧れの仕事なのである。
そんなアデラですらも憧れる、特別な仕事の魔法絵師に息子の妻がなっただけでなく、アデリナ・アーベレ嬢とも親しくしていると聞く。あの社交嫌いがどうしたことか。
イザークにいいつけて、本人が参加したがる社交はことごとく潰させてきた。
いったいどこで親しくなったというのか。
イザークには、あなたの仕事に必要のない社交は意味がないのよ、と言っていたが、少しでもあの見苦しい嫁が、自分の視界に入る可能性を潰したかったのだ。
そう言っておけば、派手な社交を嫌うあの嫁は、アデラが参加するパーティーなどにはそもそも顔を出さないし、万が一にも王妃さまが主催する読書サロンなどにも、顔を出せなくなり、心穏やかに生活が出来るのだ。
アデラの記憶の中のイザークの妻といえば、常にうつむきがちで、両手を前で揃えて、暗い表情をしているつまらない女だった。
イザークが文句を言わない妻を、と求めただけあって、何も主張をしてこない。
だから伯爵夫人としての、領地経営などの仕事を、アデラは手放さなかった。
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