吉田定理の短い小説集（3000文字以内）

『こたつサッカー』561文字 pixiv企画用

　こたつサッカーというスポーツをご存じだろうか。簡単に言うと、選手がそれぞれ一人用こたつに入ったまま行なうサッカーである。
　サッカーは世界中で人気のスポーツだが、「冬は寒いからやりたくない」「キーパーはボールが来ないと特に寒いから最悪だ」などという否定的な意見も以前からあった。そこで誕生したのが、こたつサッカーなのである。試合中、選手はずっとこたつに入ったままで、ボールを蹴るときだけ、ちょっと足を出せばいい。だから、真冬の風が強い日でも寒さを気にすることなくプレーできる。運悪くキーパーになってしまった人も、寒さに凍える心配がない。
　さらに、こたつサッカーは、寒さへの対策だけでなく、安全面でも優れている。時にサッカーでは、体がぶつかり合う激しい接触プレーが見られ、ケガの原因や女性に敬遠される理由になっている。しかし、こたつサッカーは、選手は肩から爪先まですっぽりとこたつに覆われているので、ぶつかり合っても痛くない。ときどき、ぶつかって、こたつが故障することはあるが、予備のこたつを用意しておけば問題ない。
　このように、こたつサッカーは、すべての人が冬でもサッカーを安全に楽しむことができる。少し走りにくいという意見はあるが、慣れれば案外気にならないものだ。こたつサッカーのワールドカップが開催される日も近いかもしれない。