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狐獣人アコン
ストーンゴーレムとシャドーウルフ
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馬車に揺られて新しい村にやってきた。
「よく来たのぅ。ここはドイナカ村じゃ」
「分かりやすくていい名前ですね」
「クソイナカ村のインパクトには負けるがのぅ。村の規模は、うちの方が大きいのじゃが……」
「目くそ鼻くそって言うんですよ」
コンちゃんとお手々繋いで、冒険者ギルドに入る。
同業者が誰も居ないのは、平和な証拠だと思おう。
でも、コンちゃんと一緒に強くなると決めたから、やべー魔物がうじゃうじゃ居て欲しいところだね。
「コンちゃん、どれがいい? 俺、冒険とか魔物のことは詳しくないんだよね」
「コンは詳しい。ここは指定依頼がない。討伐証明と引き換えに報酬が貰える」
「じゃあ見つけたら即、ぶっ殺せばいいんだね」
今日は森の中を冒険しよう。
思ったより視界は開けているけど、木々が障害物になってる。
魔法は使えるけど、か弱い女の子だから、不意打ちが怖いなぁ……。
「安心して。コンは索敵も得意」
「そっか! コンちゃんは狐獣人! 耳がいいんだ!」
「その通り……むっ、前から気配がする」
「先手必勝! 【ストーンバレット】」
コンちゃんが指を差した茂みに、魔法をぶっ放す。
ウリボーを仕留めた喜びを分かち合おうと、コンちゃんに振り返ると、横から出てきた鹿にぶっ飛ばされていた。
「ココーン!?」
「コンちゃぁぁぁん!?」
この子、索敵もガバガバだなぁ……。
「新しい魔物かな。飛距離はまずまず……ウリボーより強いね!」
【ストーンバレット】を放つと、角に弾かれた。
別のスキルを試すいい機会だね!
「ゴーレム生成っと!」
指に挟んだ魔石を鹿の足元に投げつける。
魔石が光り、お馴染みの泥人形の誕生だ。
「やっちゃって!」
普通に鹿に踏み潰された。
俺のゴーレム、弱すぎ……?
「……ココン。ディアは?」
「おかえりコンちゃん。ディアって、さっきの鹿のこと? ごめんね、逃げられちゃった」
「そう。ディアは逃げ足が早い。臆病な魔物だから、すぐ逃げる」
「ゴーレムのやられ損かぁ。魔石はたくさんあるからいいけどね」
「……リサ。そのゴーレムは素材が悪い」
「ゴーレムにも詳しいの?」
「コンは詳しい。ゴーレムは素材で強さが決まる。リサの使った魔石は、いわゆるクズ魔石。ただの土のマッドゴーレムじゃ戦えない」
クズ魔石は、小動物の死骸が魔石として残り、魔石を好む魔物にとっても価値がないので放置され、風化したものだ。
そのクズ魔石を媒介に、ただの土で生まれたマッドゴーレムは、赤ちゃんにもマウント取られるほど弱い。
「そういえば、俺が乗っただけで崩れていたっけ。数でカバーも厳しいかな?」
「魔石はともかく、素材は選ぶべき。せめて石……ストーンゴーレムがいい」
「んー、小石でいい?」
「大きい方が頑丈になる。一緒に探す」
どこにでもありそうなのに、いざ探すとなると見つからない。
せめて二手に分かれて探せれば早いんだけど、コンちゃんと離れるなんてとんでもない。
「【ゴーレム生成】」
「ココン? 何してるの?」
「ゴーレムに探させるよ。ちょっと休憩しよう」
「それは名案。お弁当作ってくれば良かった」
「携帯食って美味しくないね。この干し肉なんて刃物並みの硬さだよ」
「コンは食べ慣れてる。んぐぐ」
しかしコンちゃんは噛み切れなかった!
悔しいのか、尻尾を地面に叩きつけていた。
その後、ゴーレムに導かれて丁度いい岩を見つけた。
ご褒美にうっかり撫でてしまい、功労者を用済みにしてしまった。
哀れすぎるから、出てきた魔石を使って、ストーンゴーレムに生まれ変わらせることにしよう……。
「おー、少し大きくなったね。うーん、でも何かが足りない」
「気に入らないなら形を変えればいい」
ストーンゴーレムに触れて念じると、石なのに伸びたり縮んだりする。
さっそく理想のゴーレムに変形させた。
「ココン? 椅子……?」
「うん。ちゃんと二人用だよ♡」
「ありがとう。これでお尻が汚れなくて済む」
ゴーレムベンチにコンちゃんと並んで座って、食事する。
携帯食は美味しくないけど、コンちゃんの顔を見てるとよだれがいっぱい出た♡
「リサはゴーレムの戦闘は試さないの?」
「ふふーん。秘策があるんだ。座って喋ってたら、そのうち獲物が来るから待ってるって感じかな」
「ならゆっくりする。食べてすぐ動くとお腹が痛くなる」
「生活感のあるコンちゃんかわいい♡」
「ん、魔物の気配……どうする?」
「危ないから座っててね」
「??? 分かった。でもいざとなればコンは戦う」
コンちゃんが取り出した杖をギュッと握ると同時に、茂みが揺れた。
いつものウリボーだけど、ちょっと大きい。
突進してきたウリボーを引き付けてから、ゴーレムの形を変える。
椅子の一部が針のように突き出て、ウリボーを貫いた。
「座ってるだけでレベルアップだよ」
「なかなかやる。これなら安心して毛づくろいができる」
コンちゃんは自分の尻尾を抱えると、小さな舌でぺろぺろ舐め始めた。
いやちょっとコンちゃんかわいすぎじゃない!?
もう立派な『AV』だね♡
その後もこまめに現れるウリボーを倒し、何もせず確実に強くなっていく。
ディアは何度か見かけたけど、すぐに逃げてしまうから倒せなかった。
「そろそろ帰ろっか」
「……いつもと違う敵の気配。シャドーウルフ」
木の陰から、シャドーウルフが顔を覗かせる。
黄色の瞳は、俺たちを獲物と見ているようだ。
「ねぇ、あれは強い魔物なの……?」
「少しだけ。でも相手は単独。ちゃんと戦えば勝てる」
「んんっ? コンちゃんが単独と言ったら、それは――」
シャドーウルフに囲まれた。
「よく来たのぅ。ここはドイナカ村じゃ」
「分かりやすくていい名前ですね」
「クソイナカ村のインパクトには負けるがのぅ。村の規模は、うちの方が大きいのじゃが……」
「目くそ鼻くそって言うんですよ」
コンちゃんとお手々繋いで、冒険者ギルドに入る。
同業者が誰も居ないのは、平和な証拠だと思おう。
でも、コンちゃんと一緒に強くなると決めたから、やべー魔物がうじゃうじゃ居て欲しいところだね。
「コンちゃん、どれがいい? 俺、冒険とか魔物のことは詳しくないんだよね」
「コンは詳しい。ここは指定依頼がない。討伐証明と引き換えに報酬が貰える」
「じゃあ見つけたら即、ぶっ殺せばいいんだね」
今日は森の中を冒険しよう。
思ったより視界は開けているけど、木々が障害物になってる。
魔法は使えるけど、か弱い女の子だから、不意打ちが怖いなぁ……。
「安心して。コンは索敵も得意」
「そっか! コンちゃんは狐獣人! 耳がいいんだ!」
「その通り……むっ、前から気配がする」
「先手必勝! 【ストーンバレット】」
コンちゃんが指を差した茂みに、魔法をぶっ放す。
ウリボーを仕留めた喜びを分かち合おうと、コンちゃんに振り返ると、横から出てきた鹿にぶっ飛ばされていた。
「ココーン!?」
「コンちゃぁぁぁん!?」
この子、索敵もガバガバだなぁ……。
「新しい魔物かな。飛距離はまずまず……ウリボーより強いね!」
【ストーンバレット】を放つと、角に弾かれた。
別のスキルを試すいい機会だね!
「ゴーレム生成っと!」
指に挟んだ魔石を鹿の足元に投げつける。
魔石が光り、お馴染みの泥人形の誕生だ。
「やっちゃって!」
普通に鹿に踏み潰された。
俺のゴーレム、弱すぎ……?
「……ココン。ディアは?」
「おかえりコンちゃん。ディアって、さっきの鹿のこと? ごめんね、逃げられちゃった」
「そう。ディアは逃げ足が早い。臆病な魔物だから、すぐ逃げる」
「ゴーレムのやられ損かぁ。魔石はたくさんあるからいいけどね」
「……リサ。そのゴーレムは素材が悪い」
「ゴーレムにも詳しいの?」
「コンは詳しい。ゴーレムは素材で強さが決まる。リサの使った魔石は、いわゆるクズ魔石。ただの土のマッドゴーレムじゃ戦えない」
クズ魔石は、小動物の死骸が魔石として残り、魔石を好む魔物にとっても価値がないので放置され、風化したものだ。
そのクズ魔石を媒介に、ただの土で生まれたマッドゴーレムは、赤ちゃんにもマウント取られるほど弱い。
「そういえば、俺が乗っただけで崩れていたっけ。数でカバーも厳しいかな?」
「魔石はともかく、素材は選ぶべき。せめて石……ストーンゴーレムがいい」
「んー、小石でいい?」
「大きい方が頑丈になる。一緒に探す」
どこにでもありそうなのに、いざ探すとなると見つからない。
せめて二手に分かれて探せれば早いんだけど、コンちゃんと離れるなんてとんでもない。
「【ゴーレム生成】」
「ココン? 何してるの?」
「ゴーレムに探させるよ。ちょっと休憩しよう」
「それは名案。お弁当作ってくれば良かった」
「携帯食って美味しくないね。この干し肉なんて刃物並みの硬さだよ」
「コンは食べ慣れてる。んぐぐ」
しかしコンちゃんは噛み切れなかった!
悔しいのか、尻尾を地面に叩きつけていた。
その後、ゴーレムに導かれて丁度いい岩を見つけた。
ご褒美にうっかり撫でてしまい、功労者を用済みにしてしまった。
哀れすぎるから、出てきた魔石を使って、ストーンゴーレムに生まれ変わらせることにしよう……。
「おー、少し大きくなったね。うーん、でも何かが足りない」
「気に入らないなら形を変えればいい」
ストーンゴーレムに触れて念じると、石なのに伸びたり縮んだりする。
さっそく理想のゴーレムに変形させた。
「ココン? 椅子……?」
「うん。ちゃんと二人用だよ♡」
「ありがとう。これでお尻が汚れなくて済む」
ゴーレムベンチにコンちゃんと並んで座って、食事する。
携帯食は美味しくないけど、コンちゃんの顔を見てるとよだれがいっぱい出た♡
「リサはゴーレムの戦闘は試さないの?」
「ふふーん。秘策があるんだ。座って喋ってたら、そのうち獲物が来るから待ってるって感じかな」
「ならゆっくりする。食べてすぐ動くとお腹が痛くなる」
「生活感のあるコンちゃんかわいい♡」
「ん、魔物の気配……どうする?」
「危ないから座っててね」
「??? 分かった。でもいざとなればコンは戦う」
コンちゃんが取り出した杖をギュッと握ると同時に、茂みが揺れた。
いつものウリボーだけど、ちょっと大きい。
突進してきたウリボーを引き付けてから、ゴーレムの形を変える。
椅子の一部が針のように突き出て、ウリボーを貫いた。
「座ってるだけでレベルアップだよ」
「なかなかやる。これなら安心して毛づくろいができる」
コンちゃんは自分の尻尾を抱えると、小さな舌でぺろぺろ舐め始めた。
いやちょっとコンちゃんかわいすぎじゃない!?
もう立派な『AV』だね♡
その後もこまめに現れるウリボーを倒し、何もせず確実に強くなっていく。
ディアは何度か見かけたけど、すぐに逃げてしまうから倒せなかった。
「そろそろ帰ろっか」
「……いつもと違う敵の気配。シャドーウルフ」
木の陰から、シャドーウルフが顔を覗かせる。
黄色の瞳は、俺たちを獲物と見ているようだ。
「ねぇ、あれは強い魔物なの……?」
「少しだけ。でも相手は単独。ちゃんと戦えば勝てる」
「んんっ? コンちゃんが単独と言ったら、それは――」
シャドーウルフに囲まれた。
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