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第1章 俺もチートキャラになりたいんですけど…

21話 第2階層

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「うーん。雲耀。いや、雷切もいいわね。」

 先ほどの俺の新技お披露目で戦闘とマッピングを交代してから、先を歩く舞がうんうん何やら考え事をしていた。

「マイはどうしたんじゃ?」
「さあ?聞いてみるか。」

 どうやらローズも気になっていたらしい。

「なあ、さっきからそんなに唸って何を考えているんだ?」
「何って風舞くんの必殺技の名前よ。」
「名前じゃと?」
「そうよ。必殺技には名前が必要なのよ!」
「必殺技っていうけどまだ未完成なんだぞ?」

 俺の転移魔法を使った攻撃はまだ転移魔法と剣術の練度が低いために未完成だ。

「そうね。それなら進化の余地がある名前が良いわね。」
「別になんでも良いんじゃないか?」
「ダメよ!そんなんじゃ風舞くんの箔がつかないわ!」
「す、すまぬ。」

 ローズが舞に質問をしたがその迫力に思わ怯んでしまった。
 隣で涙目になってしまったローズを撫でて慰めながら、俺もぶっちゃけ何でもいいなぁと思う。

「うーん。神速はぱっとしないのよねぇ。」
「なあ風舞。マイはなんで名前にこだわるんじゃろうか?」
「オタクだからだろ。」
「オタク?」
「生きづらくも愛おしい生き物だよ。」
「なんじゃそれは?」

 その後も舞は俺の必殺技(仮)の名前を考えながらダンジョンを突き進んでいった。
 索敵も戦闘も十分にこなせているので問題はないのだろう。
 俺的にはあまり変な名前をつけられないことを願うばかりだ。



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 舞が心ここにあらずの無我の境地で突き進むことしばらく、俺達は遂に第2階層への階段を見つけた。

「遂に第1階層も終わりか。」
「うむ。そうじゃな。第2階層はホーンラビット以外の魔物も出てくるようになる。気を引き締めていくのじゃぞ。」
「ええ、わかったわ。それじゃあ早速行きましょう。」

 舞を先頭に俺達は第2階層に到達した俺達は探索を開始した。
 流石の舞も新しい階層とあっては考え事をしながら探索をしないらしい。
 第2階層は第1階層とあまり見た目が変わらずに洞窟のままだったが、少し空気が変わった気がする。

「第2階層へ降りる階段もいくつかあるのか?」

 俺はマッピングを続けながらローズに疑問に思ったことを聞いてみた。

「いや、第1から第2階層に行く階段は一つじゃな。上の階段があった広間への入り口がいくつかあったじゃろ?あの全てがいずれかの入り口につながっておるんじゃ。」
「そうなのか。じゃあここから先は他の冒険者に会うかもな。」
「どうじゃろうな。妾達は朝からダンジョンに入って結構なスピードで第1階層を抜けたからの。おそらくじゃがこのあたりに冒険者はいないと思うぞ。」
「なるほどな。ベテラン冒険者は転移魔法陣を使うし、初心者はまだここまで辿りついてないって訳か。」
「そういうことじゃの。」

 転移魔法陣は外に出て来た時に冒険者ギルドの職員さんに冒険者証を使って登録してもらえるまで、外から中に入ることは禁止されているらしい。確かに入る時、冒険者証を確認されるよな。

 俺も早く金属の光輝く冒険者証を首から下げながら転移魔法陣を使いたいものだ。
 今は木製なのでとりあえず早く鉄製の冒険者証が欲しい。
 因みに鉄製は一つ上のDランクのものだ。

「あ、見たことない魔物だわ。」

 俺とローズが歩きながら話していると舞が新しい魔物を見つけたようだ。
 舞の立ちはだかる先を見てみると、太ももの少し下くらいの大きさの猪がいた。
 その口の端からは鋭そうな牙が覗いている。

「おお、ホーンラビットより大分強そうだな。」
「あれはタスクボアじゃな。突進を攻撃に多用する魔物じゃ。」

 ローズ博士が俺にのみ聞こえるように魔物の情報を教えてくれた。
 これから初見の魔物と戦闘の舞には情報を伏せておくようだ。
 次新しい魔物が出たら変わってもらおう。
 俺も始めてみる魔物と戦ってみたい。

「ふふふ、腕がなるわね。」

 舞が剣を両手で構えてタスクボアに近づいて行き、途中で足を止めた。
 どうやら今回は速攻ではなく、相手に攻撃をさせてみるらしい。
 舞が近づいていることに既に気がついていたタスクボアは地面を数回蹴った後、舞に向かって勢いよく突進をした。

 あの大きさで突っ込んでくるのはなかなか迫力がありそうだ。
 一方の舞はというと剣を中段に構えたまま動こうとしない。
 おいおい、あの突進を受け止めるつもりなのか?

 と、タスクボアが舞にぶつかりそうになったその時、舞は半身をずらしてそれを躱し、横から剣を振り下ろしてタスクボアを腰のあたりで真っ二つにした。

「ふう。なんとかなったわ。」

 舞は剣についた血を払いながらそう言った。

「なんとかなったって言うけど圧勝じゃないか。」
「剣術スキルを試してみたかったけど、オーバーキルしてしまわないか不安だったのよ。でも上手くいったみたいで良かったわ。」
「うむ。程よい力加減じゃったぞ。あれより強かったら霧になっておったの。」
「もう少し余裕があると思ったけど、私もまだまだね。」

 舞としては満足できない戦いだったようだ。
 曰く剣術スキルの型で威力と斬撃の速度が上がっているらしいが、戦いのキレと精度が落ちてしまうそうだ。

 スキルに振り回されるんじゃなくて、使いこなせるようにならなくてはいけないわねと舞は語っていた。
 どういうこっちゃ。


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 その後舞がホーンラビット4匹、タスクボア3匹を倒した後で俺の戦闘の番がまわって来た。

「さて、そろそろ交代にするかの。」
「頑張ってね。風舞くん。」
「おうっ!」

 俺の初戦の相手はタスクボア2匹だった。
 2匹ともまだこちらに気づいていないため、片方は確実に攻撃を当てられる。
 俺の攻撃力は高くないので頭を狙いにいって良いだろう。

「テレポーテーション。」

 俺は小さく呟いて転移魔法を使った。
 これを言うだけで気持ち転移魔法の精度が上がる気がする。

 俺は予定通り転移魔法を使いタスクボアの頭を横から狙い、斬りおろした。


 ゴアッ!!


 タスクボアが短く鳴き声をあげたが、俺の斬りつけた位置が頭から少しずれていたため、分厚い首の毛皮によって刀身が肉にめり込み半ばで止まってしまった。
 俺に剣で斬られたタスクボアが怒って頭を大きくふるう。

「うわっと。」
「手伝いましょうか?」
「大丈夫だ!もう少しやらせてくれ。」

 舞の支援を断り俺はタスクボア2匹と距離をとった。
 既に両方とも俺に気づいていて、攻撃体制に入っている。
 俺の剣はタスクボアに刺さったままなので今の俺は手ぶらだ。
 恐らくあのタスクボアは既に死の直前だろうが、怒りによってまだ意識を保っているようだ。
 多分あと一撃で倒せるはず。

「かかってこいや!!」

 俺が2匹のタスクボアに発破をかけると両方とも俺に向かって突進をしてきた。

 まだだ。焦ってはいけない。
 俺にぶつかる直前でタスクボアの真後ろに転移だ。
 さっきの舞のギリギリの間合いを思い出せ。
 転移が使える俺ならあのタイミングで転移すれば攻撃は間違いなく当たらないはずだ。

「ここっ!」

 俺はタスクボアの真後ろに転移をして剣が刺さっている方のタスクボアのケツを蹴りつけた。
 俺に蹴りつけられたタスクボアは標的を急に失いブレーキをかけていたところだったため、バランスを崩してそのまま頭から地面に突っ込み動かなくなった。
 また、俺の剣も今の衝撃で外れて地面に転がっていた。

「よし、あと1匹。」

 転移魔法を使って剣を手元に喚び出し、残った一頭と向き合う。

 残ったタスクボアは仲間を失ったためか俺を威嚇してきたため、その間に真横に転移して頭を斬りつけた。
 今回はしっかり頭に当たったため、一撃で倒せた。

「だーっ。疲れたー。」

 俺は2匹のタスクボアに剣を刺して起き上がらないのを確認してから地面に座り込んだ。

 今回の戦闘は予想外の事態になったため、普段よりも緊張の度合いが違った。
 戦闘の中で考える事がここまでキツイとは思いもしなかった。

「お疲れさま。風舞くん。」
「ふむ。剣術を鍛えんといかんな。明日から稽古をつけてやろう。」
「ああ、頼む。もうあのドキドキは勘弁だ。」
「そうね。私も冷やっとしたわ。私もお稽古手伝うわね。」
「え?マジで?」
「あら、何か不満でも?」

 舞がにっこりと微笑んで俺に問いかける。
 舞の庭での訓練を見て思ったのだが、彼女は結構ストイックだ。
 この前は素振り千回を休憩の後のウォーミングアップで3セットやっていたし、そんな彼女に教わるのは大分怖い。
 ただ、舞の笑顔の圧にやっぱり勝てる訳もなく、

「い、いやぁ。舞に稽古をつけてもらえるなんて嬉しいなぁ。」
「あらそうなの?みっちり鍛えてあげるわね!!」

 舞が満面の笑みで笑う。ああ、やっぱり断りたかった。

「ドンマイ。」

 ローズが俺を励ましてくれた。
 ローズ、お前はいつも優しいな。


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 その後、舞の水魔法で俺が出したコップに水を注ぎ、それを飲んで休憩をした俺達は今日はいい時間だし帰ろうということになった。
 ダンジョンを出る途中で何度か魔物に遭遇したがホーンラビットは俺が、タスクボアは舞が難なく倒して無事にダンジョンから帰還できた。

 今日の探索は俺はレベルが2つ上がったし得るものも多かったが、沢山の改善点が見つかった充実した内容だった。
 因みに舞のレベルも1上がったらしい。

 はあ。それにしても舞の稽古怖いなぁ。
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