俺のチートって何?

臙脂色

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第二章   ― 争奪戦 ―

第41話 好きな女

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 好きになった女の子も守れないまま……死ぬわけにはいかねぇよな。

 喉元に熊の牙が突きたてられるギリギリで上体を起こし、立ち上がった。
 熊は俺のしぶとさに苛立ったのか低い唸り声をあげて、体をフラつかせている俺へと突進してくる。

 この状態で逃げ切るのは無理だ。
 なら、やるしかない。
 俺は、この熊をぶっ倒して、んでもってマリンを助ける!

 手を握り締める。
 胸の内で、闘志という名の炎が燃え上がったように感じた。

 熊が俺に圧し掛かろうと、その巨体を二足歩行で持ち上げて倒れ込んでくる。


 「だああああああああああ!!!!!!!!」

 雄叫びをあげ、全身全霊で右の拳を下から上へ熊の土手っ腹目掛けてアッパーを叩き込んだ。
 空中を舞うダイアモンドダストが風圧によって乱れるのと同時に、熊の体が空高く飛び上がる。熊はそのまま綺麗な放物線を描いた後、頭から地面に落ちた。

 しばらくアッパーのポーズをとったまま、倒れている熊をじっと見る。

 ……死んだ……のか?

 熊はピクリとも動かない。
 間違いなく生命活動を終えていた。

 「やったぞ……マリン……」

 自分自身が生き残ったこと以上に、マリンを救える喜びを噛み締めた。


 「にしても、あんなでかい熊をぶっ飛ばせるなんて……これが俺のチート能力なのか? 怪力とか、みたいな?」

 しげしげと熊を屠った右腕を見る。

 「う……」

 何だ? 右腕が地味に痛むぞ。 手首の辺りか?

 「あっ!」

 手首を軽く曲げようとすると、激痛がはしる。

 まさか殴った反動で骨が折れたのか?! 何にしろ、さっさと山を降りないとやべぇ。

 ジャージのポケットに、アイヴィール草がしっかりと入っていることを確認してから、来た道を戻り始めた。


 足早に真っ暗な森の中を進む。

 「ゼェ……ハァ……」

 息が切れる。
 足が痒い。
 歩いたときの振動で右手首が痛む。
 流石に走る気力は残っていなかった。

 「……暖かくなってきた」

 雪はちらついているものの、アイヴィール草が咲いていた場所に比べれたら、ここは熱帯地域みたいなものだ。

 手首の痛みのために、来る途中に登ってきた崖を降りることができず、大きく回り道をすることになってしまった。
 とはいえ、夜はまだ明けていない。
 大丈夫、間に合う。


 崖の下へと降りる道を見つけ、ようやく雪が降らない標高まで引き返すことができた。

 あと少しだ。
 へっ、リーとかいうヤツは俺が死ぬとか言ってたっけ。どうだ、生き残ってやったぞ。だいたい大人っつーのはビビリ過ぎなんだよ。臆病風に吹かれず、気合入れりゃ何でも解決できるんだ。

 ガサッと森の奥で草むらの揺れる音が聞こえた。

 「モンスター?!」

 音が発生した方向に目を向けると、光る点が二つ、闇に浮いていた。
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