俺のチートって何?

臙脂色

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第二章   ― 争奪戦 ―

第45話 フーフー

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 「な、何なんだって言われても、そんなもんこっちが聞きたいくらいだ」

 俺とオルガは互いに黙って顔を見合う。

 「あの、オルガさん。ショウマ様も意識を取り戻したばかりですし、話し合いはまた今度にしていただけませんか?」

 おっ、ナイス、マリン!

 「……フッ」

 マリンの申し出に、オルガは小さく鼻で笑うと立ち上がる。
 何がおかしいんだか。

 「これは気が利いてなかったな、すまん。ナベウマ、帰る前に一つ言っておく、もう二度と今回のような真似はするな。助かったからいいものの。死ねば何もかも終わりなんだからな」

 俺にとっちゃマリンがいなくなっても終わりだよ、と言ってやりたかったが、マリンの言う様に目覚めたばかりのせいか、かなり疲労感があり、早いところ話を終わらせて休みたかった。
 なので「わかった」と適当に返事をした。
 オルガはその返事に満足したのか、何も言うことなく病室を後にした。


 「マリン、気遣ってくれてありがとな。実際すげー疲れてるから寝転がりたかったんだ」

 「はい。ゆっくり横になってください」

 微笑むマリンの顔を見つつ、ベッドの上に仰向けになる。

 「『回復魔法リカバリー マジック』は傷を治す代わりに、患者の体力をかなり消耗するってお医者さんがおっしゃっていました。ショウマ様が感じているのはそれですね」

 「へぇ、『回復魔法』も万能じゃないんだな」

 「ですから、治療も回数を分けて行うみたいです」


 病室の扉が開く。
 落ち着けると思ったら、今度は誰だ? と、扉の方を見るとリーが医者を連れて戻ってきた。

 「渡辺はん、昼飯や!」

 リーが、料理が盛り付けられた皿たちが乗っているプレートを両手で持っている。
 自らの体重に対して、プレートが重いのか足元をフラつかせている。
 その様子を、マリンも危ないと思ったのか、プレートを一緒になって支えた。
 マリンが座る椅子の側に、小さな四角い机があって、その上にプレートが置かれる。

 「渡辺さん、調子はいかがです? 食欲ありますか?」

 医者が尋ねてくる。
 プレート上の料理内容を確認したところ、牛乳のような味がする飲み物に、ほかほかの白米に味噌汁らしきもの、焼き魚、キャペツっぽいものをみじん切りにしたもの、あと見覚えのあるキノコが大量に盛り付けられていた。
 腹がグーッっと鳴り出した。

 「どうやら、食欲あるみたいですね」

 俺の腹と医者の一言に、リーは吹き出しそうになる口を押さえ、マリンは後ろを向いてクスクス笑っていた。
 恥ずかしい……。

 「点滴外しますね」

 医者が左肘の包帯を取ると、刺してあった注射を抜いた。


 「よっしゃ、メシだ! ……って、そうか左手で食わなきゃいけないのか」

 皿の側にはスプーンとフォークが置いてあることから、これを駆使して食えってことなんだろうけど。

 左肘を軽く曲げたり伸ばしたりしてみる。

 「痛みますか?」

 マリンの問いかけに。

 「ああ。動かせないってほどじゃないけど、チリチリ痛むな」

 「んー、痛むのかー、両手がつかえんのかー、そーかそーか」

 意味ありげに、リーが首を縦に何度も振り、眼鏡を光らせる。

 うわ、こいつ何か企んでるぞ。
 しかも眼鏡を光らせるあたり、碌なことじゃない。

 「マリンちゃん、こいつにアーンしてやり」

 やっぱ碌でもねぇ!

 「あーん?」

 マリンはきょとんと首を傾げる。

 「マリンはんが、渡辺はんにご飯を食わしてやるってことや」

 「それはいい考えですね!」

 ま、マリンまでそんなノリノリに……。


 マリンは早速、右手でスプーンを持ち、ご飯を掬う。

 「あー、ご飯あっついでなぁー。ふぅふぅして冷ましてやらんと」

 「はい!」

 ニヤニヤしているリーに言われるがまま、マリンはスプーンの下に左手のひらを添えつつ、スプーン上のご飯をフーフーした後、そのまま俺の口へと運んでくる。

 「はい、ショウマ様!」

 や、ヤバイ。
 心臓がめっちゃバクバク鳴ってる。
 マリンのこと好きだって自覚した今は、余計に……。
 うおおお、ギャルゲーマニア友達のA君! 俺はどうしたら!

 俺は強く目を瞑る。
 すると、友達のA君の声が聞こえてくるような気がした。

 『いいんじゃね? お前が愛した女なんだろ。 なら、彼女の全てを受け入れるんだ』

 導きの声に従い、俺はマリンから差し出されたご飯を咥え込んだ。

 「ふふっ」

 マリンは嬉しそうにしている。

 全く、マリンは何とも思ってないのかよ……俺はもうご飯を味わう余裕すらないっていうのに…………マリンは俺に好意を持っているように見えるけど、それって”好き”っていうのとは違うんかな……。
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