俺のチートって何?

臙脂色

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第三章   ― 筆頭勇者と無法者 ―

第87話 最強の盾

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 AUWと呼ばれた兵器の力は、素人目でも凄まじいことが伝わった。

 音速の粋に達しているんじゃないかってスピードで動くし、動き自体かなり変則的だ。たまに雷のようにジグザグに動いたかと思えば、ぐるっと円を描いたりする。
 速い上に動きも予測しづらいなんて、イヤらしい兵器。

 ワイバーンもやられっぱなしというわけではなかった。口から火球を吐いて何台かAUWを大破させていた。けれど、何百とある内の数台を撃破したところでたかが知れている。
 模擬演習は15分程度で決着がついた。


 *


 観戦を終えた俺たちは、当初の目的であるディックのクエストをクリアするため、オカマの開発室に向かっていた。

 「はー、カッコ良かったなぁ」

 再び横に移動するエレベーターに乗っている途中で、ミカが目を閉じて言う。口ぶりからして、さっきの模擬演習を脳内でたっぷりリピート再生しているんだろう。

 「マリンさんもそう思いません?! シュバーッって飛んで、ピュンピュン!ってレーザー出して!」

 「うーん、すごいとは思ったけど、カッコいいっていうのはわからないかな」

 「えー、じゃあじゃあ、ショウマならわかるでしょ! 私の滾る気持ち!」

 「ああ、わかるぞ。メカが高速移動してビーム撃つのっていいよな」

 「でしょ! さっすがショウマ、話がわっかるぅ!」

 バシンッと肩を思い切り叩かれた。地味に痛い。


 そんなこんなで適当に会話している間に、オカマの開発室に到着した。

 「ようこそ。第10開発局、電子兵器開発部へ」

 開発室は演習場みたく特別広大でなかったが、それでも体育館と同じぐらいのスペースがあって、十分な広さが確保されていた。
 真ん中には縦長の机が何台かあり、その上にはと多種多様な機械がゴチャゴチャと無秩序に置かれていた。

 どの機械がどんな機能を持っているのか興味を惹かれたが、それも束の間。
 すぐに、俺は別の物に目が釘付けになった。
 並んだ机の奥にある大きな三角形状の半透明な壁。壁は立体映像で映し出されているかのような見た目で、一見しただけでそれが俺がいた世界にはなかったオーバーテクノロジーだとわかる。

 「ああ! ビージェー博士やっと戻ってきた!」

 ツナギ服を着た一人の女性が機械の海の中から顔を出した。

 「ディック様を迎えに行って、いつまでも帰ってこないから待ちくたびれましたよ!」

 「あらーん、ゴメンゴメン。AUWの演習をちょっぴり参観してきちゃった」

 「してきちゃった、ハートっ。じゃないですよ。私だって見に行きたかったのに。博士が遅いからみんな仮眠室に行っちゃいましたよ」

 「それじゃあ、呼んできてくれるかしら? 私はディックちゃんに改めて説明してるから」

 「はいはい」

 女性は部屋の隅にある扉の方へと小走りに向かって行った。

 「説明も何も、俺は思い切り殴るだけなんだろ。あとちゃん付けすんな」

 「その通りよ、あそこに半透明な板があるのがわかるわね? エレクトロニック・シールド。略称ES。おそらく、この世界で最も硬い盾」

 「そいつの耐久力テストってわけか」

 「そうよ。これまで攻撃力300相当の威力に耐えられることまで確認していてね。今回は攻撃力400にも耐えられるか実践したいの」

 「そうかい。なら、早速――」

 「ああん、まだ待って。ESは強力なフィールドを展開する代わりに準備がいるのよ。ちょーっと待ってて」


 それから、さっきの女性が他のメンバーと共に戻ってきて、半透明な壁の前で作業を始めた。

 改めて三角形の壁をよく見る。
 くすみがかかった黄色のガラスといったところか。正直、見た感じとても硬いとは思えない。それこそハンマーで叩いたらガラスみたいに派手な音を立てて割れそうだ。
 あと、三角形のそれぞれの頂点には、ちょうど人一人分ぐらいの大きさのひし形の平べったい機械が取り付けられていた。
 その部位に何か仕掛けがあるのか、メンバーたちはそこを入念にチェックしている。

 「準備が整いました!」

 「オッケー! 起動させて!」

 オカマの大きな声に反応するかのように、ひし形の機械から機械らしいウィーンという音が鳴り出す。さらに、ブオンと初めて聞く音が鳴ると、くすんでいたガラスがみるみる明るくなる。

 「いいわよ、ぶちかましゃって」

 「壊しちまっても文句ねぇよな」

 「ないわよ。それどころか報酬を倍にしてあげるわん」

 「はっ、言ってくれるねぇ」

 ディックは一人、ゆっくりと壁の前まで歩いていく。

 あいつ、こんなときでも黒いローブを羽織ったままなのか、脱いだ方がやりやすいと思うんだけどな。

 腕を出せばガラスに手が届く範囲のところまで近づいた後、ディックは立ち止まった。

 そして、前触れもなく右拳を突き出した。
 カイイィンッという高音が大ボリュームで響き渡り、堪らず俺たちは耳を塞ぐ。

 ガラスに変化はない。ディックの一撃は効いていないみたいだ。

 「納得がいかないなら続けてもらって――」

 カイイィンッ!
 オカマが言うまでもなく、ディックは片足を大きく蹴り上げていた。
 その衝撃でべコンッとディックの足元の床が凹む。それだけの力がガラスにも伝わっているはずだが、やはりヒビ一つ入らない。

 「助走つけるか」

 ディックが後方へ重力を感じさせないくらい軽やかに飛び、ガラスとは反対側の壁に両足をつける。
 そこからガラスまでの距離はおおよそ30m。
 その距離をディックは壁を蹴って一瞬で詰めた。

 三度目の大音響。
 さながらライダーキックのようなポーズをきめていたディックだったが、これも通用しなかった。

 ディックはガラスから弾かれるようにして離れ、床に着地した。

 「こりゃ無理だな」

 「あら、もういいの?」

 「俺は女の扱いにおいても引き際のわかる男なんでね。これ以上押しても落とせないものは落とせない。それにアンタの開発室を廃墟に変えるのも悪いからな」

 「お気遣いどーも。というわけで、攻撃力400のテスト完了よ、みんな!」

 「「 おおおお!! 」」
 「汗と涙とカフェインの結晶の勝利だ!」
 「今夜はパーティーね!」
 「次は攻撃力500台だ!」

 ツナギ服を着た男女が拍手をして、喜びを分かち合っている。

 ……なんだかよくわかんないけど、とにかくメチャクチャ頑丈なガラス?なんだな。ディックが最後に蹴った壁なんて穴が空いてるし……そんなパワーでも壊れないなんてとんでもねぇな。

 「攻撃力400は約3キロトン級の威力。私たちがちゃんと仕様書に記されている内容を再現できているなら、この程度の攻撃耐えて当然なんだけれどね」

 オカマの発言に耳を疑った。

 「それホントかよ! 今のでギリギリじゃなかったのか?!」

 「そうよん。渡された資料によればESは300メガトンの威力にまで耐えられる設計になってるらしいから」

 「……えーっと」

 「ああ、メガトンって一般の人に言ってもピンとこないわよね。そーねー。渡辺 勝麻君だったかしら、あなた日本人よね?」

 「そうだけど?」

 「なら広島の原爆は知ってるわね」

 「そりゃあな」

 「それが15キロトンの威力よ。つまり、300メガトンっていうのは広島原爆リトルボーイの2万倍の威力ね」

 「はい?」

 2万だって? 全然想像つかないぞ。

 「舌を巻く数値よね。人類史上最強の水素爆弾であるツァーリ・ボンバー。核爆弾の皇帝ですら理論上100メガトンの威力なんだから。実際、この異世界でESを破壊できるものなんてあり得ないわ。どんなチート能力だろうと。例え魔人だろうとね。まったく、このESちゃんのオリジナルを開発した人間は一体どんな事態を想定して造っていたのやら」

 「……さっきも自分で開発してないみたいなこと言ってたけど、それなら誰が開発したんだ?」

 「それが教えてくれないのよねー。王国の技術省から資料を受け取ったんだんだけど、技術の出処は全く不明だわ。ESだけじゃなく、さっき見た無人機もそうだし、このドロップスカイという建造物を構成してる壁だってそう」

 「え、壁にも何かあるのか?」

 「もう二十年近く前の話になるけど、この辺りの壁は私が作ったのね。オリジナルの素材をもとに私の能力『複製デュプリケーション』で増築していったの。その過程で壁を弄っていく内にわかったわ。この壁自体がCPUやメモリと同じ役割を果たしているって」

 CPUとかメモリとかって、確かパソコンの中にある部品だっけ。

 「それって、壁がパソコンみたいな機能を持ってるってことか?」

 「そうね、ドロップスカイという建物はまさに1台の巨大なパソコンよ」

 うわっ、なんかそう聞くとワクワクしてきた。いいなドロップスカイ。

 「本当、こんな代物を開発した人間はニコラ・テスラ並の天才脳というチート能力を与えられた人物じゃないかって思うわ」

 うーん、ニコラ・テスラが誰かは知らないが、とにかくすげぇことに間違いない。
 まさか王国が2018年のよりも進んだ技術をもっていたなんてなぁ。
 まぁ、わけわからん能力がそこら中にある世界たし、あり得なくはないのかな。
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