陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。

沢田美

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陰キャ、文芸部に捕まる ――部活は強制です。逃げ道はありません。

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 校内に入った俺は、ざわつく廊下を抜け、下駄箱で履き替えた。
 見慣れない校舎、知らない顔だらけの新入生。
 三年間ここで過ごすと思うと、胸がちょっとだけ重い。

「俺は三年間、孤高のぼっちを貫く。それが高校生活の目標だ」

 自分に言い聞かせつつ、メールで確認した教室――一年五組へ向かう。

「……どうか、何事も起きませんように」

 祈るようにドアを開けると、すでに何組かの輪ができて談笑していた。
 入学式前からもうグループ?  まずは“ぼっち”から始まるのが普通じゃないのか。

 内心ツッコミを入れながら、教室の隅の自席に腰を下ろす。

 ※

 時間が経つほど空気は賑やかに。
 新しい友人を探して声をかけ合う者、SNS交換を始める者。
 その中で俺だけは、机に突っ伏して“寝たふり”を極めていた。

「ふ……完璧な孤独。ぼっち道、極まれり」

 自分に酔っていると、すぐそばで女の子の声。

「ねぇねぇ、君」

 聞き覚えのある声。まさか……と思いつつ、寝たふり継続。

「寝てるのかな……?」

 小さなつぶやきの直後、俺の肩がそっと揺すられた。
 な、なんだ?  俺に?  俺に話しかけてるのか?

「あの、聞こえますか?」

 耳元のやわらかな声に、思わず反応してしまう。

「う、うわっ!?  な、何ですか!」

 顔を上げると、朝のショートヘアの少女――浅葱。
 彼女はぱっと微笑んだ。

「私たち、同じクラスなんだね!  これからよろしくね!」

 差し出された手。
 動揺しつつも、俺は握り返す。

「えっと、俺は高一賢聖(たかいち・けんせい)。よ、よろしく……」

「うん!  私は浅葱美鶴(あさぎ・みつり)。浅葱でいいよ!」

 春の日差しみたいに眩しい笑顔。だが次の瞬間――

「浅葱ー!  こっちこっち!」

 教室の反対側から男子の声。
 彼女は「あ、ごめんね」と笑って、でき上がってるグループへ走っていった。

「……浅葱さん、彼氏いたよな?  陽キャ……敵だァ!」

 俺は額を机にコツンと落として突っ伏す。

 ※

 その時、教室の扉が開いた。

「はーい、みなさん?  席に着いてくださいね~」

 柔らかな声。
 教壇に立っていたのは、栗色の髪をふわりと揺らす若い女性教師。
 白いブラウスにベージュのカーディガン、包み込むような笑顔。

 教室がどよめく。

「うわ、美人!」
「彼氏いるのかな!?」
「優しそう~」

 男女ともに一瞬で心を掴まれていた。――ただし一名を除いて。

 本当に寝ていた俺だ。

「し、静かにしてくださいね。えっと、私は今日から皆さんの担任をする――四宮(しのみや)アサです。よろしくお願いします!」

 再び歓声。
 その最中、四宮の視線が一点で止まった……らしい。俺は気づかない。

「……高一くん、かな?」

 肩を優しく揺すられる。

「う、うん?」

 ぼやけた視界の先に、微笑む四宮先生。

「授業中に寝るのは、学校が終わってからね?  昨日、眠れなかったの?」

 優しい声――だが教室はドッと笑いに包まれた。

 ――終わった。
 盛大に目立った。悪い意味で!!

 俺の“敵”リストに、また一人追加。

 ※

 入学式が終わり、午後のホームルーム。
 体育館での長い校長話、生徒代表の挨拶、校歌斉唱。
 初日の地獄も終わりが見えてきた。

「それから皆さん、本校では“部活動への参加”を推奨しています。できるだけ何か入ってくださいね」

 四宮先生の言葉に、俺は胸をなでおろす。

「推奨……つまり強制じゃない。よかった……」

 ――その油断を木端微塵にする声が、直後に響いた。

 ガラッ!!

「四宮先生!  ちょっといいか!」

 “生徒指導部”の腕章を巻いた体育教師が乱入。
 筋肉の塊みたいな中年が仁王立ち。

「お前ら、よく聞けぇ!!  この学校では部活は強制参加だ!!  入らん奴は愚か者だァ!!  最低でも週三回は出ろ!  返事はッ!?」

「はいッ!!!」

 怒号で教室が震える。
 俺の希望は一瞬で粉砕された。

「……いや、推奨って言ってたじゃん……」

 頭を抱えて突っ伏す。
 てか生徒指導部の先生、愚か者とか言っていいのかよ。

 ※

 放課後。
 教室は無人。

 俺は一人、机上の紙を見つめる。
 ――朝、瀬良から渡された文芸部の紹介ビラ。

「行くしか……ないのか」

 深いため息をつき、立ち上がる。
 校舎案内を頼りにパソコン室を探し回り、ようやく辿り着いた。

「ここか……めちゃくちゃ迷った」

 ノック――返事なし。
 返事がない。ただの屍のようだ……入っていいのか?

「……失礼しまーす」

 扉を開けた瞬間、息を呑む。

「あ、新入生じゃん!」
「お、高一くんだっけ?」

 朝のあの二人、由良先輩と優花先輩。
 夕陽を反射する白髪と黒髪が、教室の空気を別世界に染め上げる。
 美しさに、思考がフリーズ。

「……帰ります!!」

 反射で扉を閉めようとした俺の背に――

「ちょっと待ってよ、高一くん!」
「そうだそうだ、話くらい聞いてけ!」

 逃げ道は消えた。
 震える手で扉を閉め直し、渋々中へ。

 ――こうして、俺の“予想外すぎる高校生活”が幕を開けたのだった。
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