クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美

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夜の勉強会

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 注文したミルクコーヒーを持ちながら、比較的空いているカウンター席に向かった。

 席は、神木さん、俺、佐々木さん、春樹の順で並ぶ形になった。

 席に着くと、佐々木さんと神木さんはすぐに勉強道具を取り出し、黙々とノートに向かう。
 一方の春樹も、特に何か言うこともなく参考書を広げた。

 俺もバッグの中に手を突っ込み、教科書とノートを取り出す。



 勉強を始めて1時間ほど経った頃、俺は半分ほど残っていたミルクコーヒーを口にした。
 この範囲は、不登校時代に家庭教師と一緒に学んでいたから、それなりに理解できる。

 ふと隣を見ると、佐々木さんは真剣な表情でペンを走らせていた。
 集中している時の彼女は、いつもとは違う雰囲気がある。

 もう一方の神木さんに視線を向けると、どうやらある問題に引っかかっているようだった。

「どうしたの?」

「あ、いや、これが分からなくて……」

 彼女は少し困った顔で、数式の文章問題を指さした。

「どれどれ」

「わ、分かるのか?」

「数式は得意な方だから、任せて」

 俺はそう言って、神木さんの方に体を寄せた。

 近づいた瞬間、ふわりと心地よい香りが鼻をくすぐる。
 俺は少し意識しながらも、数式の解き方を説明した。

「お! すごいな裕貴!」

「まぁ俺でも分かる問題で良かったよ」

 俺がそう言うと、神木さんはムスッとした顔をする。

「その言い方だと、私がバカみたいじゃん」

「い、いや! 別にそういう意味じゃ!」

 俺は慌てて弁明するが、神木さんはクスッと笑い、軽く肩をすくめた。

「冗談冗談。でも、じゃあここも教えてくれないかな?」

 彼女が指さしたのは、ノートの端に書かれた『難問!』の文字。

「ウゲッ」

「数式得意なんでしょ? だったら、これも解いてみてよ?」

「……えぇ、意地悪だな~」

 そう言いながら、俺は難問に取り掛かった。

 しかし……。

「難しい、難しすぎる! これ、本当に数式問題なのか!?」

 何度試行錯誤しても、答えが導き出せない。
 ……いや、そもそもこの問題、本当に授業で扱うレベルなのか?

「む、無理だ。分からない!」

 俺は残ったミルクコーヒーを飲み干しながら、ギブアップを宣言する。

 その瞬間、神木さんがニヤリと笑った。

 ヤバい、完全に遊ばれてる……!

 そんなことを考えながら「完敗」と言おうとした時——。

 俺と神木さんの間に、佐々木さんが顔を出す。

「この問題が分からないの?」

 彼女が指さしたのは、俺が苦戦していた難問だった。

「そうなんだけど、これ難しくてさ……」

「これはね、こう解くんだよ。裕貴くん、シャーペン貸して」

 俺がシャーペンを渡すと、佐々木さんはスラスラとノートに数式を書き込んでいく。
 流れるような筆致で、見事に難問を解き明かした。

「これが正解かな?」

 そう言って、佐々木さんは答えを確認する。

「……うん、正解!」

「す、すごい! 佐々木さん、凄いよ!」

 思わず俺は感嘆の声を上げる。

 その瞬間、神木さんの表情が一瞬だけ曇った。

「そ、そうかな? えへへ……」

 佐々木さんは少し照れた様子を見せながら、突然時計を確認し——。

「……みんな、そろそろ帰らない? 日も暮れてきたしさ」

「それもそうだね」

 神木さんも静かに頷き、片付けを始める。

「帰るのか、おい、春——樹!?」

 俺が春樹の方を向くと、彼は完全に燃え尽きた顔をしていた。

「もう無理、手が死んだ、頭痛い……」

「あれ、どういうこと?」

 俺が佐々木さんに聞くと、彼女は苦笑しながら答えた。

「なんかね、解いた問題の数で勝ったら、とあるお願いを聞いてもらうって言われたから、私と勝負したんだけど……気づいたら私が2倍の差をつけて勝ってたみたいで」

「……何の勝負をしてんだか」

「もう無理……」

 春樹はブツブツと呟きながら、机に突っ伏した。



 どうしてこうなった……。

 俺は今、自分の家で佐々木さんと夜の勉強会をしている。

 しかし、どう見てもただの勉強会じゃない。

 佐々木さんは、なぜかメイド服……しかも薄着。
 しかも、俺の肩に寄りかかるように寝ている。

 一体……どうしてこうなった!?

「……んぅ」

 佐々木さんが、寝ぼけたように小さく唸る。

 長い髪がふわりと揺れ、頬がほんのり赤い。

 ヤバい、心臓が爆発しそうだ!!

「さ、佐々木さん……?」

「……んー? 裕貴くん……」

 眠そうに目をこすりながら、彼女が俺の顔をじっと見つめる。

「……おやすみなさい」

 そう言って、再び俺の肩に寄りかかる。

 ……いやいやいや!! どうすればいいんだこれ!?

 俺は焦りながらも、佐々木さんの寝顔を見つめる。

 ——落ち着け。何も起きない。何も起こさせない。

 ……はずだよな!?
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