先パイッ!「ビーエル」って何ですかっ?

AnnA

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第36話 夏休み明け一発目

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今日から大学が始まる。敢えて残した無精髭のおかげで、モサい感じが増してる。「むさ苦しい」がピッタリかも。

この 夏休み明けの怠さに 気温は30度を軽く超えて 湿度もヤバイ中、俺の側に来たい人間はいないだろう。

GW明けは朝一で アイツは飛んで来た…いや、漢字は「跳んで」の方が正しいくらいの 弾む様に走って来るからな…そんでもって スピードも落とさずに…。

でも、今日アイツは朝一で来なかった…というか退学した?分かんないけど。

連れ2人は1限から同じ講義だから、「おはよ」「久しぶり」と一言かわし、アイツの事には触れず

俺の無精髭に「どうした?」「珍しいな~?つか初めて見たかも~」と、まあ、こんな感じで

2人は 俺が夏休み終了を一日勘違いして剃り忘れたくらいにしか思って無いみたいだ。

そのまま2限目も終わり、カリキュラムが変わったから面倒臭いけど、3限は空きで4限がある。

昼飯食って、3限の間は図書室だな。資格の勉強しようと思いつつ…

昼飯の時、アイツが退学したかどうか分かるだろう。

一応相談された身だからな。
そこはチェックしとかないと。

茹だる様な暑さだから、俺ら含めて学生全員サラッとした麺類が人気だ。

体育会系の部活の人達が、ガッツリ食べてるくらい。

ほとんどの人間は夏休みが終わって テンションダウン中だ。一部には また友達と会えて楽しい陽キャもいるけどな。

連れ2人は何か言いたそうだけど…というか、もう思い当たるのは一つしか無い訳だけど。

俺が あの日ビシッと線引きしたから言い難いんだろうけど。

さすがに退学してたら 朝一で言うかな?2人とも ぎこちなく話しながら空いたテーブル探してるけど…。

テーブルが見つかって、3人で座るのに丁度いい。テーブルに 持っていたお盆を置いて、昼飯を食べる…久しぶり過ぎる…これで良いんだよ。これで。

あのアイツの仲良しグループや取り巻きに囲まれず、普通にストレスゼロの食事…!最高すぎ…!

連れ2人は物足りなさそうだけど、俺はこれが良い。

「あ…なぁ、俺 もう一杯お茶飲むけど お前らの分もコップに入れて来ようか?」

「おー サンキュー 暑いよな~頼むわ~」

「あ、それ俺が行こうか?3限空くから、水かお茶のペットボトル買おうと思って」

「お、じゃ、頼んで良い?」

「サンキュー 嵯峨…あのさ?」

「ん?お前も 何かペットボトルのいる?」

「あ、いや それもあるけど…」

あ、アイツの件か…じゃ、聞くか このまま。どうなったかを…立ち上がって2歩テーブルから離れていたけど、もう一回席に…

「先パ~~イッ!嵯峨先パ~~イッツ!!見っけ~~~っ!」

「⁈」

「おっひっさっしぶっりでぇぇぇ~~っすっっ!!めっちゃ会いたかったぁぁあ~~~っっ!!」

「へっ?」

振り返ると、そこには…5m先に…いやもう、衝撃に備えなきゃ…間に合わな…ぐっ…!

これか?宮崎、長崎…見えてんだったらッ 簡潔に注意喚起しろよッ!!!

俺は、振り向きざまに ドンっという衝撃と二人分の体重かかるし…当然後ろに傾いて テーブルの角…丸くなってはいるけど…に よろけた。

でも…いつもよりは?衝撃は全然そこまでは無いな?

偉いじゃん…ちゃんと加減覚えて…いやいやいや…!待て待て待て…!!そうじゃねぇッ!!!

「ッ ちょッッ!嵯峨っっ!大丈夫かっ…⁈た…(玉)っ⁉︎」

「嵯峨ッ…たっ(玉)…いや、お前 股下…長過ぎんかッ⁈」

「心配したっつーか…!冷や汗出たわ!俺!自分にも痛み来たわ!」

「俺も!!!汗が今…!ひゅんってしてる…!」

これを見ていた男達は 全員同じ気持ちだったようで、表情が物語っている。冷や汗出て 体が冷えたようだ。

俺じゃ無かったら…玉とは サヨナラだった…かもな……。

「さささささっ…嵯峨先輩ッ 大丈夫です……ッ⁈」

そう言って、この前 会議…的なのした アイツの仲良しグループもアイツの後ろから来て、男は全員同じ反応。

教授達すらも…嗚呼…腐女子も…漏れなく…分かってるみたいだ…。

夏休み前の 昼時のメンバー勢揃いなんだけど…。

「先パ~~イ!」

と言いつつ、あの時みたいに 胸に顔埋めてんだけど…いやいやいや!お前なぁ!!!

「…元気だな…」

「はい!お蔭様で!!先パイに会って さらに元気になりましたっ!!へへへっ!」

そう言って、顔をあげて 俺を見上げたコイツは確かに、あの時とは別人。

いつもの元気いっぱいのコイツに戻ってる。演技じゃ無くて。素の状態だな。

「めっちゃ会いたかった~~~ッッ!!」

この顔は…あの時…初めて会った あの時と同じ…顔に「本当に最高に嬉しい」って書いてる…。

お前…持ち直したのか…帰らずに…。

「あっ⁈先パイ!ヒゲっ?いいなぁ~~ッ!カッケー!俺ヒゲ薄いけん、そんなんならんもんっ」

「…お前も髭 薄そうだもんな…」

「うん!それ どんくらい伸ばしたん?」

「1週間ちょい?」

「はっ?1週間でそれっ⁈いいなぁ嵯峨~!そんなん俺なら2日かからねぇ」

「俺も2日くらい!」

「いいな~先輩!毎日剃らなくて それか~!」

…いやいや、問題はそこじゃねぇよな?
もちろん、毎日髭剃りとかクソ面倒なのは共感するが…。

つーか…髭に気付いて 何でタトゥーに見える 神戸さんのアートはスルーなの?コイツは?

…配慮か?見て見ぬふりの大人の対応か…精神的に色々 気付く余裕も無い状態だったのか…?

いや待て、そんなんよりも、早く離れさせ…「ちょ、離」まで言うと、それに被せるように、女子の甲高く甘える様な虫唾が走る声が 俺の声を遮った。

「え~~っ ナオ君てぇ~ホントに先輩と仲いいんだねぇ~~」

「他校の あたし達でも知ってるよぉ~~?」


いや、待て。今日は始業日だぞ?お前らの大学はまだか?

コイツのファンか?それとも…

チラッと漫研の連中の方を向くと、「ドキィッ!」っと絵に描いた様になってるし…

これは漫研のBLファン…特に三ヶ尻先輩の…俺にそっくりな…やつのせいか?

夏のイベントで利益出てたしな…。

クソ…どっちか分からねぇけど…さっさとコイツ離れさせてが一番…

コイツは 俺にくっついたまま、その女達を見て無反応…というか 知らない人間だったんだろうな?「知らない人とは口きかない」が分かりだして…?

成長してる…けど、何か言え。何か返せ。固まってるじゃん、キメ顔っぽい笑顔のまま。

でも…ふふ…コイツの好みの容姿の女は、ここには いないな。

「あっ、はじめましてだよね!ごめん!」

「いきなり ゴメンね~?」

俺は「ちょ、暑い…お終い」と言った。

この前まで ダメージMAXだったからな、「離れろ」単品で言うのは良くないだろう。あの状態見てるしな。

コイツは 俺を見上げてニコッとして、「は~い♪」と言い、コクンと頷いて離れた…けど…お前…それを日本人はゼロ距離の間合いって言うんだよ…。

あ…そう言えば…あのマリンノートの匂いじゃ無いな。

部活生とか体育の後に10代の男子が使うような 汗拭きシートっぽい匂いになってる。

夏っぽい爽やかな柑橘のような、清潔感ある石鹸のような…お前は やっぱ そんなんでいいんだよ…


コイツは女子達をチラ見しただけで 何も言わないし、コクッと頷いたかな?くらいの微妙な反応だけして、笑顔も無しのまま。

全員が「ええええええッ⁈どうしたッッ⁈⁈」「いつものニコニコ笑顔はッッ⁈⁈」「天真爛漫な あの感じはッッ⁈⁈」と心の中で叫んでるのが分かる。

俺も…まぁ…あれ聞いてるから…でも、ここまで爆速で 塩対応仕様になるとは…。

お前…今まで相当我慢して 無理してたのか……?

この対応というか、予想外の反応に全員驚いたけど、さっきの発言をした女子達をフォロー…というか

話を繋げようと、その友達であろう うちの学生が「アハハ~」と乾いた笑いをしつつ、コイツにさっきの女子達を紹介し始めた。

あの時 一緒に海に行ってたメンバーだったらしい。

うちの学生の方は、何となく見覚えあるかな?昼に集まってた集団の中に居たような?

コイツは「あー、あの時 居たんですか?」とだけ言って…

完全にいつもと違うから…話が広げられず。女子達の顔には「こんなハズじゃなかったのに…!!」と書いてるし、ここに居る全員が同じだろう。

夏休みデビュー、2学期デビューの思いもよらぬバージョンだなッ⁈と思うしかない。

連れ2人もコイツの仲良しグループも漫研も驚いてるし……オイ、俺に「どうしたんでしょうか?」「なんとかして?」的な眼差しを向けんな。知らねぇよ。

このままじゃ、会話終了と思い、コイツに野心を持って近づこうとしてるタイプの人間達が学内外合わせて「え~と…」とか言いつつ。

後で知ったが、夏休みの一件で更にコイツは知名度が上がってたらしい。

駅での事もコイツの評価はプラスだったようで、是非とも会いたい人間になっていた。

コイツには、それがウンザリだろうけど。

漫研のイベント参加もBLファンを爆増させていた。

このカフェテリアに居る 学外の人間達は かなり多いみたいで(自分の大学の講義はどうした)

さすが?学外の人間というか、「知らないから、教えて?聞かせて?」の戦法でコイツに話しかける作戦にしたんだけど…

質問の一発目…まさかの最初の質問が、全ての人間が知りたい質問だった。

俺ですらも。学内の人間は、思っててもスルーして来たやつ…そう……


「ねぇ~?朝日君はさぁ~、嵯峨先輩?と仲いいけど~ 何がキッカケなのぉ~?」

「初めて会ったの いつ~?すっごく仲いいよねぇ~?聞きたいなぁ~♡」

その言葉を聞いて、コイツは スルーというか「あんたらに言う義理無し」な感じで無言…返事無しだったけど

カフェテリアに居た全員が喰いつき、それこそ教授やキッチンスタッフさん達までも。

昼時に集まる いつものメンバーに、連れ2人、漫研、コイツの仲良しグループ…本当に全員が喰いついて…

コイツも言うしかない…と諦めた?のか…何故か 俺にお伺いを立てる様な目で見てきて「言っても良いですか?」的な感じで じっと見てる。

「何?」

「…言っても良いかなって…思って…」

「えっ?何⁈嵯峨は もう聞いてんのっ⁈」

「いや、知らないけど…」

「え~~っ、つーか本当に 人違いか聞きたい~~!!!」

「もう、ここでハッキリさせようぜ~~ッ!」

と、全ての人間が盛り上がって大合唱し、その質問をした女達はスーパーヒーローさながらに、天下を取った様になってるし。

「…先パイ…」

「…別に俺は構わないけど。言ったろ?人違いって。ハッキリさせた方が良いかもな」

「人違いじゃ無いと思うんやけど~…」

そうして、新学期一発目、人違いの真相が 明かされる事になったのだった。
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