上京して一人暮らし始めたら、毎日違う美少女が泊まりに来るようになった

さばりん

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第一章 出会い編

第十三話 天使のような勧誘 

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 俺たちは講堂の出口の方へと戻り、行きに通って来た正門へと続く一本道の前まで到着した。そこには、縦横無尽に人が入り乱れており、部活・サークルの勧誘活動を行っている光景が広がっていた。

「うわ、すげぇ……」
「確かにこれはすごいな、前に進むのも大変そうだ」

 俺と厚木あつぎが、少し怖気づいていると、高本たかもとが俺と厚木の肩を叩いてきた。

「何してんの? 早く行くよ!」

 俺と厚木は、高本に押されながら、人混みの中へと突入していく。

「テニスサークルですー。可愛い女の子いっぱいです! よろしくお願いします!」
「どうですかダンスサークル。みんなで俺達と踊らない?」
「そこの可愛い仔ウサギちゃん、演劇とか興味ない?? 僕たちと一緒に、美女と野獣やってみない?」
「飲み会ウェーイ! オナシャス!」

 歩いているだけで、各先輩たちから次々に声を掛けられ、半ば強引に勧誘のチラシを配られる。ってか、大学生の勧誘ってこんな感じなの? なんでみんなナンパしてるみたいになってるわけ? 

「あ、ありがとうございます……」

 俺は目が回りそうになりながらも、人混みをかき分けて進んでいく。
 そんな人混みを掻き分けていきながら、俺はこの勧誘活動で、とある一つの目標を決めていた。

 列に並んでいる時に見た、あの使を探し出すこと。これはなんとしても今日俺が達成しなければならないミッションだ。

「ごめん、俺ちょっとあっちの方見てくる」
「おっけ、わかった。じゃあ俺と詩織はここの漫才研究会のところ見てからそっち向かうわ」
「おっけ、じゃあ後でまた連絡する!」

 俺は人混みの中で、厚木と高本と別れ、それぞれお互いの目的場所ごとに分散した。

「よしっ!」

 俺は気合いを入れ直して、チラシを配る先輩たち=ウェーイを掻き分けながら、使に出会ったブースへと進んでいく。
 
 すると、とあるブースの前に大量の人だかりが出来ていた。俺はなんとかその人だかりの前まで到着する。
 
背伸びして間から様子をうかがうと、その人だかりの中心にいた人物こそ、先ほどの使だった。
 その使は、新入生ににこやかな笑顔を振りまいて、チラシを配りながら一人一人丁寧に対応していた。この人だかりもすべて、目の前にいる使目当てで群がっている集団のようだ。

 俺はその集団を見て愕然とする。そりゃそうだよな……あれだけ美人で可愛ければ、人だかりが出来てもおかしくないわな。俺と彼女との距離は、一向に縮まるわけがない。
 落胆ともとれるため息をついて、半分諦めかけてきた時だった。後ろから声を掛けられた。

「南くんいた」

 振り返ると、そこには先ほどまで囲み取材を受けていたはずの井上綾香いのうえあやかが目の前に現れた。

「井上さん!? 取材は?」
「さっき終わって、急いでこっちに来たの。わき道から来たら、丁度南君の姿が見えたから」
「そうだったんだ……」

 ここで使を諦めても、振り返ればの美人女優、井上綾香がいる。
 なんてすばらしい光景何だろうと感動してしまいそうになる。

「よっす、目的のサークルには行けた?」

 すると、厚木と高本たちもこちらへ向かってきた。


「お、綾香っちじゃん! もう取材は終わったの?」
「うん、さっき終わったところ」

 そんな会話をしていると、厚木がふと後ろの方を見て口を開く。

「ってか南、サッカーサークル入るの?」
「えっ、なんで?」
「いや、だってここサッカーサークルのブースっしょ?」

 俺がテントの方を見ると、そこには、『サッカーサークル、FC RED STAR』と書かれた張り紙が貼られていた。

「あ、ほんとだ」
「あ、ほんとだって、じゃあなんでここにいるの? ウケる」

 高本が俺の反応を見て、面白おかしく笑いだす。

「いやぁ、それは……」

 どう説明しようか悩んでいると、再び今度は後ろから声を掛けられた。

「こんにちは」

 声の元へ振り返ると、そこには先ほどまで大勢の人に囲まれて身動きが取れなくなっていたはずの、使が目の前に立っていた。しかも、信じられないことに、向こうから俺に声を掛けてきたのだ。
 
 何故このような状況が起こったのか理解できず、俺はただ茫然とその女性をぼっと眺めることしか出来ない。

「あれ? もしも~し。聞いてる??」

 その女性は、何も反応がないことに疑問を抱いたのか、俺の目の前で手を振っていた。
 俺は「はっ!」と意識を取り戻して、その女性に向き直る。

「あ、どうも」
「やっと気づいてくれた」

 その女性は、あどけなさが残るにこやかな笑顔で、優しく微笑んでいた。

「あ、そうだ。はい、これ!」

 思い出したかのように、俺の前にチラシを配ってくれた。

「『サッカーサークルのFC RED STAR』っていいます。そこにいる君も、それからそっちの美人な女の子ともう一人の子もどうぞ!」
「い、いやだなぁ~美人だなんてそんなぁ!」
「いや、間違いなくお前じゃなくて井上さんに言ってるんだよ」

 照れる高本に対し、冷静に突っ込む厚木。
 その後ろで、井上さんは苦笑いを浮かべている。

 とにもかくにも、全員に一枚ずつチラシを配り終えた天使のような女性は、俺達に優しく話し出す。

「うちのサークルは、フットサルじゃなくて本格的な方のサッカーをするサークルです。みんなは、サッカーの経験とかはあるかな?」
「あ、はい。中学ぐらいまではサッカー部でした」
「そうなんだ、そっちの三人は?」

 天使のような女性は、後ろにいる三人にも尋ねる。

「あ、えっと。やったことないっす」
「うちも……」
「私も、体育でしか……」
「そっかぁー。あっ、でもうちのサークル未経験でも全然オッケーだから、是非よかったから下のアドレスに連絡してみてね!」
「はい、わかりました」
「じゃあ、私向こうに戻らないといけないから! 前向きに検討してみてね、新入生君」

 その女性は、俺にくりっとした瞳でウインクをして、手をひらひらさせながら、また人だかりの中へと戻っていった。
 俺はその姿をしばらく黙って目で追っていると、後ろからバシバシと背中をたたかれた。

「え、何あの人! めっちゃ美人で可愛いんだけど。えっ、何? 南の知り合い?」
「いや、話したのは今が初めてだけど……」
「あれはヤバいって! なんかこう一言では言い表せないけどヤバイ。井上さんも美人だけど、そういう感じのヤバさじゃなくて、なんというかエロい!」

 ボキャブラリーが少なくて何を言ってるのかよく分からないまま興奮している厚木。まあ、その気持ちは分からなくはない。ってか、井上さん本人がいるのにそれは失礼すぎるだろ。
 すると、そんな興奮気味の厚木を、容赦なく高本がパンフレットでぶっ叩く。

「少し黙れ!」
「いってぇ! 何すんだよ!? いいじゃねーか!」
「あんなの媚売ってるに決まってるっしょ。簡単に騙されて」
「いやいや、あれはそうじゃなくて」
「あ、もういい、わかったから。南っちもああいう女に騙されちゃダメだよ」
「えっ、どういうこと?」

 高本は、その天使のような女性の方を向きながら、俺達の方へと向き直り、至極真剣な表情で俺と厚木を睨みつけながら忠告してくる。

「ああいうタイプは絶対に裏があるっしょ。他の男もたぶらかしてるよ。ね、綾香っち!」
「へっ!? う、うん……そうだね……」

 高本の威勢に気圧けおされて、苦笑の笑みを浮かべながら井上さんが頷いた。

「あ~怖い怖い、ほら二人ともとっとと行くよ」

 高本はふいっと顔を背けて、スタスタと歩いていってしまう。

「あ、詩織待てって! 南と井上さんも早く!」
「おう……」
「うん……」

 俺は、もう一度天使のような女性に渡されたビラを見つめて呟いた。

「サッカーサークル『FC RED STAR』か……」
「南くん、このサークル入るの?」

 不意に井上さんに尋ねられた。

「え!? あっ……えっと……まあ検討してみようかなとは」
「ふ~ん……」

 そう言って、井上さんも配られたチラシに目をやる。

「井上さん?」
「へっ? あっ、何でもない! ほら、詩織ちゃんのところ行こう!」
「あ、うん……」

 俺はもう一度だけ、天使のような女性の方を振り返る。
 彼女は、先ほどと同じようににこやかな笑みを浮かべて、一人ひとり丁寧に対応していた。

 井上さんには検討するといったけど、俺はここに書いてある連絡先に絶対に連絡しよう! そう心に決めた。
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