大怪獣がトリックです

天草一樹

文字の大きさ
17 / 40
第1怪:戦艦亀

奥の手

しおりを挟む
 天木の表情を見て、一倉と二宮は近づくのを止め代わりに銃口を向ける。御園生も「篝猫」と呟き、怪獣化した。
 はたから見れば完全に詰みの状況。にもかかわらず天木は上げた手を下し、愉快そうに拍手を始めた。

「正解正解大正解だ。凄いね君たち。僕のうっかりで犯行に失敗してばれる可能性は考えてたけど、まさかうまくいった上でばれるとは思わなかったよ」
「お褒めの言葉どうも。んで、大人しく捕まって――」
「でも一点だけ足りてないところがあってね。戦艦亀をより強くさせるために、怪獣人間を食べさせる。これはその通り。でも、そもそも怪獣人間はおまけなんだ」
「おまけ?」

 嫌な予感を覚え、宗吾は少しばかり刹亜に近寄る。
 天木は研究成果を褒めてもらいたいとばかりに、高らかと言った。

「もともと僕はさ、怪獣が怪獣化する方法を探してたんだよ。怪獣の血と血は反発する。それが基本原則。でもどこかに反発しない血があるんじゃないか。僕はずっとそれを探し続けていた。そして――見つけたんだよ!」

 天木はそう叫ぶと、急激に体を変貌させ始める。それと同時に「撃て!」という一倉の号令が飛び、銃弾と火の玉が一斉に天木に襲い掛かった。しかしそれらが着弾するよりも早く、まるで沼に沈み込むかのようにして天木の体が床の中に潜ってしまう。
 各隊員が全方位に警戒を向ける中、部屋中を響き渡るように天木の声が聞こえてくる。

「人の体に怪獣の血を混ぜる。それだけで脆弱な人間がそこらの怪獣よりも遥かに強い力を得ることができた! じゃあこの強化――いや進化を、ただでさえ上位の大怪獣が手にしたらどうなるか! それはもう、世界最強の怪獣の爆誕だ!」

 突如として部屋内に激しい突風が吹き荒れる。激しい風音が耳を塞ぐ中、時折誰かの悲鳴が混じって聞こえる。
 ようやく風がやみ、刹亜と宗吾が目を開けた時、周りには倒れてピクリとも動かない隊員と、一体の怪獣だけになっていた。

「こ、金剛鶴……」

 つい数秒前までは天木だった者。今その姿は、金剛鶴と呼ばれる怪獣に変化していた。
 見た目は三メートル近い体躯の鶴。ただその体は全身ダイヤモンドでできており、くちばしは本来の鶴より長く鋭くなっている。
 ダイヤモンド性の体はありとあらゆる攻撃で傷がつかないだけでなく俊敏性も高く、当然のように空も飛ぶ。金剛鶴の羽ばたきは暴風を起こし、くちばしでの一撃は戦車すら貫通すると言われる。
 予想もしていなかった天木の怪獣化に呆気にとられる刹亜と宗吾。そんな彼らを見て、天木は愉快そうに嗤い出した。

「いやあ、本当に君たちの慧眼には感服したよ。でも、僕の本当の目的に気づけなかったのは致命的だったね」

 刹亜が頬を引くつかせながら言い返す。

「……そんな力あんなら、こんなまどろっこしいことしてないでさっさと全滅させればよかっただろ」
「僕は慎重な人間だからね。篝猫の特殊な炎や、牙狼の牙はこの体にも傷をつけられるポテンシャルがある。だから確実に殺していこうと思ってね。それに一撃で仕留められなかった場合、負けなくても母体が傷つけられる可能性があるじゃない。だからいざって言う時まで隠しておいたんだ」
「成る程な。てか、金剛鶴って血なんてあんのか? 何もかもダイヤモンドでできてんのかと思ってたわ」
「これが意外とあるんだよ。まあ赤い血じゃなくて透明な血なんだけど。というか多くの一見血を持たないように見える怪獣にも血と呼べるようなものがあって――」
「講義してくれるのは有難いですが、できればあの世でお願いしてもいいですか」

 倒れた隊員を心配そうに見まわしながら宗吾が言う。
 不思議なことに、その声色に恐れや不安の色はない。
 この期に及んでなお冷静な宗吾の姿に天木は首を傾げるも、すぐに邪悪な笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...