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第十一話:証拠
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「犯人ならわかってる」
俺がそう言うと、飯島を含めこの場にいる全員が固まった。俺は頭の中で再び、昔読んだ推理小説を思い出す。
俺の発言に、驚きながらも最初に反応したのは藤宮だった。
「犯人が分かったって……、本当なの?」
俺は首を横に振る。
「今のセリフは正確じゃなかったな。俺も今は犯人が誰だか分かっていないんだ。ただ、犯人を指し示す動かぬ証拠、いや、動く証拠って言ったほうがいいかな? があることに気付いたってことだ」
「それは本当ですか?」
涼森が疑わしそうに俺を見てくる。俺は涼森をはっきりと見返しつつ頷く。
「本当だ。まあ、その証拠が存在するか、そして提示した証拠が犯人を特定するものだと皆が認めてくれるかどうかを含めると、半々だけどね」
水谷がおずおずと言う。
「そんな証拠、一体どこに? そ、それにもしその証拠が犯人特定に不十分なものだっていうのなら、余計な争いを生むかもしれないから言わないほうがいいんじゃないですか」
「は、何でだよ。おい日暮、その証拠っていうのを早く見せろよ。それで犯人が分かるっていうんならな」
「でも、やっぱり危険ですよ。もし日暮さんの言い当てた犯人が本当の犯人じゃなかったら、僕たち……。それにもし言い当てた犯人が……」
水谷はそう言って飯島のほうを怖々と見た。水谷の視線に気づいたのか、飯島が再びテーブルをたたき威嚇する。
「おい水谷、てめぇ俺が金光を殺した犯人だと思ってんのか」
「あんたがそういう態度をとるから、水谷がやめようって言ってるんでしょうが。もし本当に犯人じゃないっていうならもっとおとなしくしてなさいよ」
藤宮がそう言うと、飯島と藤宮の間で睨み合いが始まった。すると、二人を無視する形で、涼森が俺に言ってきた。
「今、この瞬間まで言わなかったのには何か理由があるんですか」
俺は真面目な顔をして頷く。
「ああ、正直俺の考えてる証拠だけで犯人に自白させる自信はあんまりないからな。誰かがこの状況にこらえきれなくなるまでは、もっと決定的な証拠を見つけようと思っていたんだが、そろそろ限界ぽかったから」
「……分かりました。皆さん、とりあえず日暮さんの推理を聞いてみましょう。仮に犯人が飯島さんで、ばれたと分かったとたんに暴れだしたとしても、五人……実質四人ですが、皆で戦えば十分に抑え切れると思いますし」
ちなみに彰子であるが、飯島の威勢にビビったらしく、かなりしおらしくなっている。もしかしたら、今更ながらに自分の命が俺たちに握られていることに気付いたのかもしれない。
「それに、これ以上探してもきっと犯人を示す手掛かりは見つかりません。もし日暮さんの推理が全く的外れであった場合は、犯人捜しをやめて、最後の話し合いをしましょう。警察を呼ぶか、金光の遺体を隠し、彰子さんにも私たちのことを話せなくなるような行動をとるか」
彰子がびくりと体を震わす。水谷も藤宮も覚悟を決めたのか軽く頷く。飯島は相変わらず不機嫌そうな顔をしたまま黙って俺を見ている。早く言えと促しているのだろう。
「それじゃあ日暮さん。犯人は誰なのか、教えてください」
俺は一度深呼吸をすると、口を開いた。
「さて、……」
俺がそう言うと、飯島を含めこの場にいる全員が固まった。俺は頭の中で再び、昔読んだ推理小説を思い出す。
俺の発言に、驚きながらも最初に反応したのは藤宮だった。
「犯人が分かったって……、本当なの?」
俺は首を横に振る。
「今のセリフは正確じゃなかったな。俺も今は犯人が誰だか分かっていないんだ。ただ、犯人を指し示す動かぬ証拠、いや、動く証拠って言ったほうがいいかな? があることに気付いたってことだ」
「それは本当ですか?」
涼森が疑わしそうに俺を見てくる。俺は涼森をはっきりと見返しつつ頷く。
「本当だ。まあ、その証拠が存在するか、そして提示した証拠が犯人を特定するものだと皆が認めてくれるかどうかを含めると、半々だけどね」
水谷がおずおずと言う。
「そんな証拠、一体どこに? そ、それにもしその証拠が犯人特定に不十分なものだっていうのなら、余計な争いを生むかもしれないから言わないほうがいいんじゃないですか」
「は、何でだよ。おい日暮、その証拠っていうのを早く見せろよ。それで犯人が分かるっていうんならな」
「でも、やっぱり危険ですよ。もし日暮さんの言い当てた犯人が本当の犯人じゃなかったら、僕たち……。それにもし言い当てた犯人が……」
水谷はそう言って飯島のほうを怖々と見た。水谷の視線に気づいたのか、飯島が再びテーブルをたたき威嚇する。
「おい水谷、てめぇ俺が金光を殺した犯人だと思ってんのか」
「あんたがそういう態度をとるから、水谷がやめようって言ってるんでしょうが。もし本当に犯人じゃないっていうならもっとおとなしくしてなさいよ」
藤宮がそう言うと、飯島と藤宮の間で睨み合いが始まった。すると、二人を無視する形で、涼森が俺に言ってきた。
「今、この瞬間まで言わなかったのには何か理由があるんですか」
俺は真面目な顔をして頷く。
「ああ、正直俺の考えてる証拠だけで犯人に自白させる自信はあんまりないからな。誰かがこの状況にこらえきれなくなるまでは、もっと決定的な証拠を見つけようと思っていたんだが、そろそろ限界ぽかったから」
「……分かりました。皆さん、とりあえず日暮さんの推理を聞いてみましょう。仮に犯人が飯島さんで、ばれたと分かったとたんに暴れだしたとしても、五人……実質四人ですが、皆で戦えば十分に抑え切れると思いますし」
ちなみに彰子であるが、飯島の威勢にビビったらしく、かなりしおらしくなっている。もしかしたら、今更ながらに自分の命が俺たちに握られていることに気付いたのかもしれない。
「それに、これ以上探してもきっと犯人を示す手掛かりは見つかりません。もし日暮さんの推理が全く的外れであった場合は、犯人捜しをやめて、最後の話し合いをしましょう。警察を呼ぶか、金光の遺体を隠し、彰子さんにも私たちのことを話せなくなるような行動をとるか」
彰子がびくりと体を震わす。水谷も藤宮も覚悟を決めたのか軽く頷く。飯島は相変わらず不機嫌そうな顔をしたまま黙って俺を見ている。早く言えと促しているのだろう。
「それじゃあ日暮さん。犯人は誰なのか、教えてください」
俺は一度深呼吸をすると、口を開いた。
「さて、……」
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