366日の愛の花束

辛已奈美(かのうみなみ)

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1月

1月31日 チューリップ(赤)

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陽は傾き、オレンジ色に染まった空の下、真紅のチューリップが風に揺れていた。その花束を抱え、私は駅前で彼を待っていた。出会って三年、付き合って一年。いつもは賑やかな駅も、今日は静かに感じられた。彼との最後のデートになるかもしれなかったのだ。

彼は約束の時間になっても現れなかった。携帯に何回かけても、メールを送っても繋がらない。不安が胸に広がり、冷たい風が身に染みる。涙が溢れそうになるのを堪え、チューリップを強く握りしめた。真紅の花びらは、私の焦燥感を映し出す鏡のようだった。

彼はいつもから遅刻魔だった。だけど、今日のこの遅れは、いつもとは何かが違う気がした。どこが違うとは断定できないが、彼の軽率な遅刻とは、明らかに質が違った。30分、1時間、2時間と時間が経つにつれ、私の胸には確信が芽生えていった。彼は、私を置いていってしまったのだ、と。

すると、突然、背後から声がした。「ごめん、遅れた。」あわてて振り返ると、彼が立っていた。息切れしながら、汗を拭う彼の手には、私が持っているのと同じ、真紅のチューリップが、一輪だけ、握られていた。

「どうして?もう来ないのだと思った。」

「実は、君に渡す前に、事故にあってしまったんだ。大きなけがはしなかったんだけど、それで、持っていたチューリップの花束もつぶれてしまったし、携帯も壊れてしまったから、連絡を取ることもできなかったんだ。」彼は言葉を詰まらせる。

「だから、病院で検査をしてから、花屋さんによって、同じチューリップを買いに行ってからこっちに来たんだ。何時間も君を待たせてごめん。」

彼の顔は青ざめ、震えていた。彼の手に握られたチューリップは、私の花束より少しばかり、小さかった。よく見ると、彼の手足やほほには、小さな擦り傷があった。服も汚れていて、持っているものにも小さな傷がたくさんあった。

その瞬間、私は全ての不安が消え去るのを感じた。彼の遅れの理由、そして、彼の真心。真紅のチューリップの花言葉には、「愛の告白」と、「真実の愛」というものがある。二人が持っていたのは、彼の、そして私の、本気の熱い愛の始まりを告げる、真紅のチューリップだったのだ。










1月31日
誕生花:チューリップ(赤)
花言葉:愛の告白
    真実の愛
    思いやり
科・属:ユリ科・チューリップ属
和名・別名:鬱金香




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