怒れる女神に召喚された神子は人を避けながら各地を巡ります

しらすどん

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背負っていたリュックを荷物掛けにかける。中から収納袋を取り出して、ズボンのポケットに入れた。身軽に動く時用に、小さな鞄みたいな物売ってないかな。ポケットはスリに気をつけなければ。


一応鍵はあるが、念の為に部屋全体に結界の魔法を施す。特に窓と扉には侵入しようと試みた人間が居れば、その瞬間に感知できるように警報アラートの魔法も重ねがけした。警戒をし尽くす程度でやりすぎということは無いだろう。


森の中で過ごしていた時は、小さな人型に属性によって色が着いた精霊たちが数は少ないもののちゃんと居た。しかしこの街に入ってからというものの一切見かけなくなってしまった。


確実にこの街には精霊に仇なす者がいる、もしくはいたはずだ。


精霊たちは1度危ない目にあった場所へは近付かない。よほどお気に入りの人間がいたらまた別だが。


きちんと魔法がかかっていることを確認し、部屋を出る。受付の女将さんに出かけることを伝え、部屋の鍵を預かってもらう。ついでに保存食が美味しいお店を聞き出す。


日が落ちきる前に買い物を済ませられたら。ナイフ類はまだ切れ味に変わりはないので研ぎに出す必要は無いだろう。布類も追加で買う必要は無い。下着はもう1日分有ってもいいかもしれないが、お金に限りがある現状優先度は低い。


そういえば、サボンの実が残り少なかった。現代で言うところの石鹸のような効果を持つ実だ。始めの荷物チェックの際に用途不明だった白い実。あれは濡れた衣類に実を擦り付けると泡立ち、爽やかな清潔感の香りがするものだった。洗浄の魔法で清潔になるとはいえ、気分的にはきっちり手間でも洗いたい気分になる。そして朝の洗顔時にも少し使っていた。


多めにサボンの実は補充しておこう。


サボンの実で体を洗うと体臭も気にならなくなるし、髪の毛を洗っても石鹸のようにキシキシしないため重宝する。




「生活魔法はいかが~?洗っても取れない頑固なシミでも魔法であっという間!小さいシミなら銅貨5枚から」




活気のある大通りから少し離れた路地に、生活魔法屋がいた。少し興味をひかれて眺めていると、路地は住居の裏口が面しているようで、数名が手に布や焦げ付いた鍋などを持って出てきた。


魔法屋の呪文を聞き取ろうと耳をすませる。イタリア語やアラビア語のような巻舌を頻繁に使う発音で、詩吟のように一定の音程やリズムを刻んでいるようだ。…これは人前で魔法を使うのは無理そうだな。


魔法は詠唱省略出来るものは王立魔道士団などの高官になっている。自分が無詠唱で魔法を使えば悪目立ちすること間違いなしだ。かと言ってあの詠唱をすぐ真似できるとも思えなかった。練習して形になるのはどれくらい先になるだろうか…。やはり人目を避けて道程を組むのが安全だ。


発音集のような参考になる書物があればいいが、識字率も低いこの世界で書物は相当な高級品になりそうだ。他の人が魔法を使う場面などを見た時に、良く聞いてシャドーイングしなければ。


最後に生活魔法を使う魔法使いを一瞥すれば、視線を感じたのか目が合った。軽く愛想笑いをして目礼をしておく。すると鳩が豆鉄砲を食らったような表情になり、動きが止まってしまった。魔法使いの周りに集まっていたお客さんたちも、その視線を辿ってこちらを見てくる。


あまり目立ちたくないのにこれでは目立ってしまう。魔法使いの反応に内心首を傾げながら、そそくさとその通りを後にした。


さっさと買い物を済ませてしまおう。
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