悪党だらけの乙女ゲームに転生したけど、×亡しすぎて残機が足りない!(溺愛もあるよ★)

夕張さばみそ

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55)そ、そんな別に見たくねーしー!?

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 茨鬼君のホットミルクを頂く私の目の前では、ウィスキーをロックで飲むガルーと、ブランデーで喉を潤すサングレの姿があった。
 舐めプしている私とはうって変わって二人は真剣そう。
 ていうか、パンツ一枚にされてるのにガルーは何処か余裕そうに見えるし、サングレは真顔でカードを見つめている。

 ていうか、椅子に片膝を立てて座るなガルー! 目線が股間にいくやろがい! サングレみたいに優雅に足を組め!!

 まぁ、私も鬼じゃないので(二人の全裸とか良心が痛むので見れないし)この回で御開きに……と思った時、手の中に残ったジョーカーに硬直する。

「え」

 今までほとんど回ってこなかったジョーカーが来たのだ。

 ど、どうして……? と思っている間にガルーとサングレがアガリになる。
 二人がニヤニヤ笑いながら此方を見ているけど……あ、あっれぇ~~? おっかしいなぁ~?

 イカサマとかされてる? と茨鬼君を振り返る。

 しかし茨鬼君は上衣を脱ぎながら首を振った。

「いいえ! ディディ様、おれもイカサマがあったら即座に先輩達の指を切り落とす覚悟で見てましたが、イカサマはありませんでした!」

 重い覚悟や!! ガルーとサングレがキレかけてるじゃない!!

 でもそんな茨鬼君の注意力でもっても見当たらなかったということは、純粋に敗北したということだろう。
 まぁ、今まで勝ち続けていたのがオカシイし、負けもあるよね~!

 な
 ん
 て

 考えていたら……。

「ディディ様ぁぁ……、申し訳ありません、おれ、もう脱げませんんん……」

 私の傍では、トレイで股間を隠す、全裸の茨鬼君がッッッ!

 限界まで脱がされてしまった茨鬼君を前に、私は謝りつつも、腑に落ちなかった。
 こんなに連続で勝ったり負けたりすることある? と。
 しかしガルーとサングレも逆に驚いていた。

「急に弱すぎだろ手前……」
「なんか呪いのアイテムでも装備しました?」

 そんなもん装備するかい!! と思ってから、私は思い出した。
 マフィアクターのゲーム内でミニゲームがあったことを!

『サングレとトランプしよう★(負けたら死にます)』というものだったけど、それは何故かコーヒーを飲むと勝率が上がり、ホットミルクを飲むと勝率がダダ下がりするのだ!
 そしてサングレがアルコールを摂ると、奴の勝率が爆上がりしてしまうことも!!

「お、思い出したぁぁあああああああああああああああ!! うぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉおぉぉおおおお! なんで今まで忘れてたのよコレェエエエエエエエエエエエエエエ!」

 私が野太い咆哮を上げると全員がビクッ! としてたけど構わん!

「茨鬼君! コーヒー頂戴! とびっきり濃いやつを!」
 叫ぶ私にガルーとサングレがツッコミを入れた。

「自分で淹れろよ! 茨鬼に両手使わせてんじゃねぇ!」
「そうですよ! そこまでして見たいんですが茨鬼の茨鬼を!!」

 そ、そんな別に見たくねーしー!? 美少年の美少年とかー!? と私が誤魔化していると、茨鬼君は半泣きで空のコーヒーの瓶を見せてきた。

「ディディ様! 申し訳ありません! さっきのでコーヒーが無くなってしまいました! あっ、あのっ、おれ、今から買ってきます!」

 全裸で窓から市街地に飛び出そうとする茨鬼君。

 アカーーーーーーン!!

 私が止める前にガルーとサングレが止めてくれた!

 けど、先輩としての武士の情けではなく『全裸でコーヒー買いに行くアサシンがいるマフィアの先輩』と思われたくないかららしい。
 汚いな! 根性が!!

 でもどうすりゃいいのよ! コーヒー飲まなきゃ負けちゃう!! 

 半泣きになる私に、缶コーヒーが差し出された。

「やった! ありがとー! これでガルー達をすっぽんぽんにして勝てるわ! ガーハハハ!」

 と、笑った私は、缶コーヒーを差し出す紅龍様の笑顔に瞬時に凍結した。

 紅龍様は抱えた紙袋からコーヒーの瓶やお菓子を覗かせながら(お土産買ってきてくれたみたい)こめかみに青筋をたてていたのだ。

 即座にガルーとサングレが「ヤベッ! ジジイが帰ってきやがった!」「うわっ! これだからロートルは!」と距離をとる。(ついでの暴言やめろ!)
 しかし紅龍様の怒りは当たり前だけど収まらない。

「……好きなだけ男を囲えと言った端からコレかヨー……。こ の 浮 気 女 が!!」

 果物ナイフを取り出す紅龍様に私は椅子を盾にしながら首を振った。

「ち、違うんだコレは! 誤解なんだよ! 聞いてくれ!」(浮気男の常套句)
「何がどうなって誤解やねん! 若い男すっぽんぽんにして何のサバトや!!」

 ああ!! 紅龍様がキレすぎて第二の故郷弁に!!

「紅龍様! 若い男の全裸を見ると美肌になるっていうSNS情報なんですよ! つまり誰も悪くない! 悪いのは悲しいSNS社会であって……」
「ド阿呆! オマエのスマホはミラーリングしとるわボケ! そこまでして男の裸が見たいんなら、真っ先にワタシに言えよクソがヨー!」

 謎のキレ方をする紅龍様に私が「えっ♥ 紅龍様の全裸見たいって言っていいんですか!?」と目をハートにすると、紅龍様はドヤ顔で頷いた。

「当たり前だろうがヨー。他人に見せられねぇ鍛え方なんざしてねぇからヨー」

 そう言いながらチャイナ服の襟を色っぽく緩める紅龍様。
 しかし私がハワワしている間に、紅龍様がドスの利いた声で告げた。

「……まぁ、その前にガルー達をぶっっっっっっ殺すけどナ!」
「待ってェーーーーーー!!!!」

 私はガルー達がぶっっっっっっ殺されないように、ひたすら紅龍様の御機嫌をとるのだった……。
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