ある日私たちは被験者になった。

恐怖による支配

私たちはただ恐怖に震え、縮こまることしかできない。痛いほどの沈黙が広がる。

「立て」

スーツの男の声が、沈黙を破る。

あまりの恐怖に体が動かない。

パーーン。また銃声が響く。また1人、撃たれ、倒れた。

「おい聞こえないのか。私は『立て』と言ったんだ」

立っていなかったのは、あの人だけじゃなかったのに……。なぜ……。
この人たちはいとも簡単に私たちを殺すつもりだ。次は自分かもしれない。

ガチャ、ガチャガチャ……

部屋のあちこちで響く金属音。私も何とか立ちあがろうとするが、恐怖で力が入らない。まるで立ち方を忘れたようによろけながら、それでも何とかその場に立ち上がった。

周りを見渡すと、何とか立ち上がった人、足に力が入らず何度も転んでいる人、恐怖のあまり座ったまま動けない人。

隣の区画の女性は恐怖のあまり動けないようだ。立たなかったら何をされるかわからない。その女性に声をかけるが、呆然として何も考えられないようである。彼女に近づこうにも、手につけられた鎖はギリギリその場に立つのに十分な長さしかない。どうにかできないかと思案していると、

パパパパパパパーーーーーンッ

けたたましい銃声が鳴り響き、私は思わずしゃがんでしまう。ハッとして、再び立ち上がり隣を見ると、女性は血を流して倒れていた。

「っっッ」
声も出なかった。火薬の匂いが立ち込めている。そして血生臭い匂いも。

4分の1ほどだろうか、立つことができなかった人たちが見るも無惨な姿に変わり果てていた。

「言ったはずだ。指示に従わない者の命はないと。」

私は恐怖のあまり「立つ」「今は立っていなければならない」と、ただそれだけしか考えられなくなっていた。