琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

朝河 れい

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EP1_3章

3章_14 急報

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 「姫様、公都レフコーシャより
急報が届きました。

台地最北の街、ブラナスに、
山脈を超えたメルヴィア軍が越境攻撃を仕掛けてきました。

ご存知の通り、
ブラナスには現在大公殿下がいらっしゃる。
公都からは宰相殿の率いる援軍が既に出たとのことですが、
敵軍の規模が大きいため、

このイントレドにも出陣要請が入った次第です。
宰相殿の指示により、
私めはこの地の防衛にあたることになりましたが、
二名の隊長に出陣を命じ、まもなく兵を送ります。」


コーエン将軍の突然の報告を聞いたメリッサは、
顔面蒼白になる。

一等星の迷い星の悲劇に、
追い打ちをかけるようなメルヴィア軍の侵攻。

それでも、
彼女はしっかりとした足取りで将軍に歩み寄った。


「報告、ありがとうございます。
今から出陣となると、
ブラナスに着くのは夜になりますね。

夜であれば、私の力も使えます。
私も援軍に入り、ブラナスを目指します。」


メリッサの言葉に、将軍は諭すように反論した。

「それはなりません。どうかお考え直しください。
父君の危機でお気持ちがはやるのは十分理解しておるつもりですが、
それでは大公殿下だけでなく、
姫様まで危険に晒してしまうことになる。

そのお申し付けは承服致しかねます。」

このイントレドに留まるよう、
将軍は重ねて進言するが、メリッサも頑なだった。


「このところ頻発している迷い星の被害は将軍も知っているでしょう。
夜は危険なのです。
私が守りたいのはお父様だけでなく、
この地に住まう民全て。

当然ブラナスに暮らす人々も、
その救援に向かう軍も例外ではありません。」

援軍の指揮官に会う、
と残して足早に部屋を出て行くメリッサを、
将軍は肩を落とし、
無念の表情で見送るしかなかった。

その背中には、将軍自身が出陣できれば、
という思いがひしひしと感じられる。


「やはり、こうなるか。」

独り言のように、コーエン将軍は呟く。

「私も、援軍に加えてください。
メリッサ様は命に代えても私が守りましょう。」

カムランの言葉に、将軍は力なく頷いた。

「すまないが、お願いする。リード君、
君は姫様と中々に親交が深いようだ。
こうして姫様の私室に客人が招かれているところを、
私は初めて見た。

援軍の目的は当然ブラナス救援になるが、
君にはさらに絶対の優先事項として、
姫様の護衛を頼む。
失敗は無しでお願いするよ。

あと、晩餐会は残念ながらお預けだな。」

力なく微笑む将軍の言葉に黙って頷くと、
カムランは一礼をして、
部屋を出て行ったメリッサを追った。
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