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EP1_4章

4章_14 大公と将軍

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 「南門の付近は煙で状況がつかめない、、
全軍、煙幕の外にいる、
少し後ろに下がった位置の敵軍に当たりなさい!」


連戦に次ぐ連戦にも負けず、
エルザ率いる紅軍の士気はなお高いままだ。

エルザの合図で、紅軍は一段と速度を上げ、
南門のメルヴィア軍に突っ込んでいく。

エルザ本人もその先頭で切り進むが、
不意に現れた騎士に剣を止められた。


「各門に奇襲をして回っていたのはお前の隊か。
私の旗下であれば褒賞ものだが、
こうも食わされては許しておけない。覚悟。」

青銀の鎧を纏ったその騎士は、
エルザを圧倒する剣撃で押し返してきた。


「あんた、何を勘違いしてるのか知らないけど、
許さないのはこっちの台詞!」

エルザも負けじと奮戦するが、
剣を弾かれた隙に馬を切り付けられ、
落馬の際に地面に身体を打ち付けてしまう。


すでに満身創痍のエルザには、
それが決定的なダメージになってしまっていた。

痛みに悶えるエルザに剣が振り下ろされようとするその時、
一軍を率いる大公が場に躍り出てその刃を制した。


「そこまでだ。娘っ子同士のケンカなど感心せん。
カナリス隊長、よく戦った。そして青銀鎧よ、
貴様が大将だな、女に引導を渡すのは気が進まんが、
これで決着だ。」


大公エオメルの傍らには、
乱戦の中無事に合流したカムランとメリッサの姿もあった。

カムランは睨みあう両大将の意識の外で、
静かにエルザを抱き起して馬に乗せた。


「とうとう私の前に現れたな、エオメル・エンタール。
私は、今日この日を待ち望んでいた。
私が何者であるか、解るかな?」


狂気を感じさせるような笑顔でロキシェル将軍は意味深に問いかける。


「敵将の若娘など知るものか。
その名すら名乗らない無礼者に、
これ以上返す言葉は持たん。」

冷たく返した大公エオメルは、
返答と共に剣撃を浴びせかけた。

ロキシェル将軍は大公の重い攻撃にも引かず、
一進一退の戦いを繰り広げる。

そのあまりの激しさに、
誰一人としてその一騎打ちに参戦することが出来ないでいた。


息つく間もなく剣がぶつかりあう。
病にあっても膂力に勝る大公エオメルは、
何度となくロキシェル将軍の剣を弾くが、

彼女は馬を引きながらも、
その凄まじい剣速でそれに応じる。

しかし、大きく剣が弾かれたその時、
大公エオメルの剣はロキシェル将軍の左腕を捉えた。
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