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EP1_4章
4章_21 ブラナス平原の戦い 終幕
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「せっかくの機会だ、
この台地の民が自惚れる星の力、
身を持って知らしめてやる。」
冷徹に微笑む将軍は、
赤い光を湛えた左手で大弓を引き絞ると、
レフコーシャの本隊目掛けて赤く輝く矢を打ちはなった。
矢は前線にいた兵を穿ったと同時に、
紫色の毒の瘴気を辺りに漂わせる。
瘴気に侵されて、次々と倒れていくレフコーシャの兵たちを
嘲笑するように視線を送った彼女は、
メルヴィア軍の全軍に退却命令を下した。
「これでエンタール共はろくに動けない。
全軍、領内へ引き上げよ!」
敵前を毒の瘴気の霧に包まれて
追うことも出来ないレフコーシャの軍勢は、
去っていく敵軍を追撃することもできず、
毒に侵された兵たちは、
その場で衛生兵を待つばかりとなってしまった。
「あの甲冑の射手は何を放ったというのだ?」
突然の出来事に、ロクサリオは状況を掴めないでいた。
戻ってきた斥候によれば、敵軍の後方にいた迷い星、
二等星コルヒドレを打ち倒し、その毒を用いて攻撃してきたようだ、という。
「なんと、星の力をその身に宿したというのか。」
ロクサリオの隣で報告を聞いていた若き軍師は驚きの声をあげた。
星の力はこの台地に生まれた者にしか宿らない、
誰もが知っていることだった。
しかも、星の力をその身体で直接扱うような能力は、
過去に遡っても一切記録にない、珍しいものだ。
「あの甲冑の騎士を、徹底的に調べねばならない。
早馬であの毒霧を迂回するのだ!」
はやる若軍師を、ロクサリオが手で制する。
「・・・今はもう良い。皆、損耗が大きい。悔しいが、
毒霧が晴れる頃にはもうメルヴィア領内に逃げ帰ってしまうだろう。
我らも潮時だ。」
ロクサリオは独り言のように呟くと、
力の限りを尽くして戦った兵たちに労いの言葉を送った。
「皆、この劣勢の場をよく持ちこたえてくれた。
しかし、まだ終わりではない。ブラナスを復旧せねばならん。
負傷者を除き、まだ動ける者は私と共に、
ブラナスへ入城するのだ。」
ロクサリオの号令と共に前進を開始した兵は、
総兵力の半分を下回る数だった。
後世にその名を残す激戦となったブラナス城塞防衛戦の陰に隠れ、
多くを語られないロクサリオが対峙したこのブラナス東部戦線もまた、
数多くの悲劇を生んでいたのだった。
この台地の民が自惚れる星の力、
身を持って知らしめてやる。」
冷徹に微笑む将軍は、
赤い光を湛えた左手で大弓を引き絞ると、
レフコーシャの本隊目掛けて赤く輝く矢を打ちはなった。
矢は前線にいた兵を穿ったと同時に、
紫色の毒の瘴気を辺りに漂わせる。
瘴気に侵されて、次々と倒れていくレフコーシャの兵たちを
嘲笑するように視線を送った彼女は、
メルヴィア軍の全軍に退却命令を下した。
「これでエンタール共はろくに動けない。
全軍、領内へ引き上げよ!」
敵前を毒の瘴気の霧に包まれて
追うことも出来ないレフコーシャの軍勢は、
去っていく敵軍を追撃することもできず、
毒に侵された兵たちは、
その場で衛生兵を待つばかりとなってしまった。
「あの甲冑の射手は何を放ったというのだ?」
突然の出来事に、ロクサリオは状況を掴めないでいた。
戻ってきた斥候によれば、敵軍の後方にいた迷い星、
二等星コルヒドレを打ち倒し、その毒を用いて攻撃してきたようだ、という。
「なんと、星の力をその身に宿したというのか。」
ロクサリオの隣で報告を聞いていた若き軍師は驚きの声をあげた。
星の力はこの台地に生まれた者にしか宿らない、
誰もが知っていることだった。
しかも、星の力をその身体で直接扱うような能力は、
過去に遡っても一切記録にない、珍しいものだ。
「あの甲冑の騎士を、徹底的に調べねばならない。
早馬であの毒霧を迂回するのだ!」
はやる若軍師を、ロクサリオが手で制する。
「・・・今はもう良い。皆、損耗が大きい。悔しいが、
毒霧が晴れる頃にはもうメルヴィア領内に逃げ帰ってしまうだろう。
我らも潮時だ。」
ロクサリオは独り言のように呟くと、
力の限りを尽くして戦った兵たちに労いの言葉を送った。
「皆、この劣勢の場をよく持ちこたえてくれた。
しかし、まだ終わりではない。ブラナスを復旧せねばならん。
負傷者を除き、まだ動ける者は私と共に、
ブラナスへ入城するのだ。」
ロクサリオの号令と共に前進を開始した兵は、
総兵力の半分を下回る数だった。
後世にその名を残す激戦となったブラナス城塞防衛戦の陰に隠れ、
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数多くの悲劇を生んでいたのだった。
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