琥珀の夜鷹_ep1. 星降りの守り人

EP1＿６章

６章＿１０ 未開地、七ツ森

　「七ツ森は、
貴女の父君ですら通らなかったという場所だ。

正直、私も心配は尽きないところだ。
ご無事を祈ります。

姫殿下、差し出がましい事ですが、
私は貴女の事を本当の娘のように想っております。
本心ならばあの森へは行かせたくない。
どうか、お気をつけてくだされ。」

所々、言葉を詰まらせながら、
ロクサリオはそう言った。


「そして、リード卿には、重ねて苦労をかける。
無事戻られた暁には、相応のものを約束しましょうぞ。」


カムランが金で動いているのではないと知りつつも、
ロクサリオはその意志に、厚意を示した。


「ロクサリオ、ありがとう。
メルヴィアに察知されないように事を運ぶためには、
どうしてもごく少数で行くしかないと思うの。

きっと叙任の儀を済ませて帰ります。
出発は明後日の夜明け前。戻るまで公国を頼みます。」


もう、メリッサの心に迷いは無いようだった。

出立の準備を請負うことを申し出たロクサリオに改めて礼を言い、
二人は部屋を出て、夜の帳が降りた廊下を歩きだした。


「貴方と、初めて会った日以来の旅になりますね。」

独り言のように、メリッサが呟く。
窓から差し込む月明りが照らした彼女の横顔は、
国の存亡の責を負うには余りに若く、可憐な表情をしていた。


翌日は、出発に備えて各々が準備をしていた。
部屋の洗い場で黙々とソードブレイカーを研いでいたカムランの耳に、
来客を告げるドアのノックが聞こえてきた。