101 / 104
EP1_7章
7章_2 予感
しおりを挟む
レフコーシャへの道中、
ロクサリオの書簡を携えた駿馬の斥候が二騎、
公都へ向かう隊を別れて台地北部の国境を越え、
メルヴィア公国領へと馬を進める。
書簡がロキシェル将軍へと親書が到着したのは翌日の夜の事であった。
ロキシェル将軍の返書は、さらにその二日後、
大公エオメルの国葬を終えたロクサリオの元へと届けられた。
固く閉じられた封緘を確認するなり、
ロクサリオは自室へ急ぎ、返書の封を解く。
一縷の思いに胸が高鳴り、
封筒が手を滑ってひらひらと床へ落ちていく。
しかし、ロクサリオはそれを拾うこともなく文章に目をやった。
『虜囚交渉の場は、メルヴィア公国領内南西の村、
ナルヴァにて。新月の夜。一人で来なければ、交渉には応じない。』
文章を舐めるように追うロクサリオの瞳から、
不意に一滴の涙が返書に落ちる。
思い出すのも辛い過去の中に、
公都とアムリタの街の距離を越え、
愛しき内縁の妻と娘との文通の記憶が蘇る。
「見知った字体だ・・・。やはり、
我が娘であるというのか・・・。」
次の新月と言えば、もうそんなに日がない。
ロクサリオは出立の準備を急がなければならなかった。
数日後の夜、深くフードを被った男が一人、
馬を駆って公都レフコーシャを出て、
真っすぐに北へと向かって行く。
緊急により三日空けると側近には伝えたものの、
用事も告げずにそう何日も外すことが許される立場ではない。
ロクサリオは、公都随一の早馬を急かし、
夜の闇へと溶けていった。
ロクサリオの書簡を携えた駿馬の斥候が二騎、
公都へ向かう隊を別れて台地北部の国境を越え、
メルヴィア公国領へと馬を進める。
書簡がロキシェル将軍へと親書が到着したのは翌日の夜の事であった。
ロキシェル将軍の返書は、さらにその二日後、
大公エオメルの国葬を終えたロクサリオの元へと届けられた。
固く閉じられた封緘を確認するなり、
ロクサリオは自室へ急ぎ、返書の封を解く。
一縷の思いに胸が高鳴り、
封筒が手を滑ってひらひらと床へ落ちていく。
しかし、ロクサリオはそれを拾うこともなく文章に目をやった。
『虜囚交渉の場は、メルヴィア公国領内南西の村、
ナルヴァにて。新月の夜。一人で来なければ、交渉には応じない。』
文章を舐めるように追うロクサリオの瞳から、
不意に一滴の涙が返書に落ちる。
思い出すのも辛い過去の中に、
公都とアムリタの街の距離を越え、
愛しき内縁の妻と娘との文通の記憶が蘇る。
「見知った字体だ・・・。やはり、
我が娘であるというのか・・・。」
次の新月と言えば、もうそんなに日がない。
ロクサリオは出立の準備を急がなければならなかった。
数日後の夜、深くフードを被った男が一人、
馬を駆って公都レフコーシャを出て、
真っすぐに北へと向かって行く。
緊急により三日空けると側近には伝えたものの、
用事も告げずにそう何日も外すことが許される立場ではない。
ロクサリオは、公都随一の早馬を急かし、
夜の闇へと溶けていった。
0
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
私は彼を愛しておりますので
月山 歩
恋愛
婚約者と行った夜会で、かつての幼馴染と再会する。彼は私を好きだと言うけれど、私は、婚約者と好き合っているつもりだ。でも、そんな二人の間に隙間が生まれてきて…。私達は愛を貫けるだろうか?
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる