喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。

加藤ラスク

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事件の真相<後編>

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「戦術書を盗んだのはセシルなのよ? 何で私が修道院送りにならないといけないのよ! さては、セシルに唆されたわね? 騎士としたことが、見損ないましたわ」
「全てはセシルがしたことだ。我々には関係ないだろう。騎士団の調査能力も落ちぶれたものだな」
 ラーラと室長は周囲の目も関係なしに、苛立ちを隠すことなく大声で文句を言っています。

「騎士団を侮辱したな? 侮辱罪も追加しておこう。さて、我々の判断は証拠に基づいている。君たちが結託してセシルを貶めようとした証拠があるんだよ」

 どういうことですの? 私の無実を証明できるものがあると……? 

 ちらりとヴィンス様を見ると、またニヤリと笑ってゆっくりと頷きました。どうやら証拠については魔術師団が何か関係していそうです。でも、いつ、何をどうやって?

「では、これを見ていただこう」
「セシルに渡した花瓶じゃない。それがどうしたっていうのよ。まさかこの花瓶が全部聞いていました、なんて冗談言わないでくださいね」
「察しがいいな、そのまさかだよ」

 クレイグ様が以前、私にお詫びの品としてくれた花瓶を持ちあげ、ヴィンス様に渡します。ヴィンス様が何か呪文を唱えると、何もない空間に画像が現れました。

 映っているのは、嬉しいとジェスチャーをして、花瓶を机に置く私です。

 これは、私がクレイグ様から花瓶をいただいた時のようです。

「……この花瓶にはね、魔術師団が新しく開発した監視装置を付けていたんだよ……」

 監視装置付き……クレイグ様は私を監視しようとしていた……? 疑いの目でクレイグ様を見ると、手と顔をブンブン横に振って、大慌てで否定されました。

「いや、これは、ちょうど騎士団に事務室に関する良くない噂が流れていたために調査のために置いたのだ。決して、セシルの様子を見たいからとかいうのではないぞ」
「……ふーん……そういうことにしてあげるよ……」
「ヴィンス! コホン、では、事件当日の様子を見よう」

 再度、映像が流れます。

「室長ぉ~、セシル先輩って本当に性格悪いですよねぇ。こんなかわいい後輩に仕事させるだなんて。それに、行き遅れババアのくせに窓口担当とかウケるんですけど。男狙ってるのかもしれないけれど、今まで箸にも棒にも掛かっていないの。あ~おっかしいわ。室長ももっと若い子が来てくれた方がテンション上がるんじゃないですかぁ?」
「ははっ、確かにな。真面目で面白味もない女なんて仕事のやる気をそぐだけだよ」
「それなら、いい考えがあるんですけどぉ」

 机の上に行儀悪く座りながら談笑するラーラと室長の姿が映し出されると、二人は顔面蒼白です。

 怒りに震える私の肩をクレイグ様が抱きしめてくれました。しかし震えは止まりません。見上げてみると、クレイグ様も歯を食いしばらせ、震えていたのでした。

 映像は続きます。

「これを」

 室長がラーラに戦術書を渡すと、私の机に隠し、その直後から騒ぎ出す様子が映し出されました。

「実は今朝から行方不明になっていて、今可能性のあるところをひっくり返して探している最中なんです。この部屋の残りは先輩の机の中だけなんですが、探してもいいですか?」



「室長! もしかして戦術書とはこれでしょうか?」
「それだ! セシルの机の中から見つかったぞ!」

 私が謹慎処分を言い渡され、部屋から退出する様子が映し出されました。

「ふふっ上手くいったわね」
「ははっ本当だな。今日はもう仕事仕舞いだ。新規採用候補にでも会いに行こうかな」
「え~私よりかわいい子は嫌ですよぉ。お酒はほどほどにしてくださいねぇ」

 映像はここで終了しました。

「……戦術書の持ち出しはどうみてもセシルじゃないよねぇ……」
「さぁ、この二人をひっ捕らえよ!」

 騎士様が、呆然としていたラーラと室長を後ろ手に縛ります。

「許してくれ! 俺はこの女に唆されただけなんだ! 全てはこの女が計画したんだ、俺は悪くない」
「私はほんの冗談のつもりだったのよ。でも室長が実際に戦術書を持ち出してきて……私は上司からの命令でやっただけよ、許して!」
「ええい、煩い! 話なら後で地下牢でゆっくりと聞いてやる!」

 二人は騎士様に引っ張られるように去っていきました。



この場にはクレイグ様、ヴィンス様と私の三人が残されています。

「……何はともあれ、無事に解決できて良かったねぇ……映像記録装置を作れないかと言われたときは、ストーカーになってしまったのかと心配したけれど……」
「ははは……いや、実際にこの事務室メンバーによる不正の噂が寄せられていてね。調査をしなくてはと思っていたところだったんだよ。今回のセシルへの陥れだけに留まらず、窃盗、横領、書類偽造など余罪がたくさん見つかっていたのだ」

「……」

 私が真面目に仕事をしていても、そこから先が不正のオンパレードだったなんて、悔しい。

 それにしても、こんなにも不正だらけの事務室を継続させるとは考えにくいですわね。解散……でしょうか。私の行く場はあるのでしょうか。

「心配しないでくれ、セシルは真面目に働いているのはセシルと関わったことのある奴ならみんな知っている。」

 俯いてしまった私にクレイグ様が優しく声をかけてくださいました。

「事務室は今回解散させる。そして事務局全体で再編成させることになっている。そもそもセシルが謹慎処分の間、あいつらだけで仕事が回せるわけがないだろう? 着々とこの日のために準備を進めていたんだよ。そして、セシルの次の配属先は……騎士団事務だ。よいだろうか」

 騎士団事務とは数ある事務室の中でも優秀な者しか配属されないという花形の部署です。私で良いのでしょうか。でも……クレイグ様が私を認めてくださったのです。やるしかありませんわ。

 私は大きく頷きます。

「……職権乱用……」

 ぼそっとヴィンス様の声が聞こえましたが、こうして私は明日から騎士団事務として勤務することになったのです。
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