喋ることができなくなった行き遅れ令嬢ですが、幸せです。

加藤ラスク

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最低な奴

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 エドモンド! 

 なぜここにいるの? 手を放して!

 振りほどこうにも力が全く入りません。

「おやおや、ここにいるセシル嬢はどうやら酒に酔ってしまったらしい。少し休ませなくてはな」

 お酒? もしかして先ほど飲んだあのワインに何か入っていたの? 嘘、やめて!




 私の抵抗もむなしく、エドモンドに抱きかかえられ、休憩室へと連れていかれました。




 そこには、先ほど声をかけてきた男がいました。他にも2、3人いるようです。

「無事に会えたんですね、良かったです」
「年増って聞いていたが、なかなか上等じゃないか」
「だから言っただろ? こういう気の強そうな女、嫌いじゃないぜ」

 ここで何をされるのかわからないほど純粋な少女ではありません。今できる最大限の力を込めてエドモンドを睨みつけます。

「おぉ怖い。ここにいるのは裏でイロイロ俺がお世話をしてあげている方々だ。アランデル伯爵家から廃嫡となった俺は本来ならばこのパーティーには参加できない。だが、日ごろの取引の見返りとして裏からこっそりと入場させてもらったんだよ。セシルに会うために」

 なぜそこまで私に執着するの? 

「今夜再びセシルと婚約ができれば、5年前の件はチャラになる。全ては元通り。俺は再びアランデル伯爵家に戻れるし、セシルも俺と幸せになれる。そうだろ?」

 瞳孔が大きく開いた目で私を見てきます。

 何を、言っているの? 本気で元に戻るだなんて思っているの? そんなの無理よ。あなたとでは私は幸せになれないわ。

「既成事実を作ってしまえば、セシルももっと俺のことが好きになるさ。今回の計画を手伝ってくれたそこの奴らとも一緒に楽しめばもう二度と俺から離れなくなる。それで、セシルが頼めばきっとお父様も許してくれるさ」

 どこまでも最低な奴ね。

 抵抗したいのに、体が思うように動きません。

 ベッドの上に放り出された私を、男どもが取り囲み、そして何本もの手が私のドレスに伸びました。

「最初は、俺だ。後は好きなようにしていいからな」
「どうします? 『葉っぱ』焚いておきますか?」
「いいねぇ、気持ちよくなれそうだ」

 ゲスい会話。まさかエドモンドが不正薬物に手を出していたなんて。このまま私も薬漬けにされてしまうのね。

「ちぃっ、なんだこのドレス、全然脱がせられねぇ」

 このドレスはボタンやリボンがとても多く、外すのに手間がかかっているようです。

「もう破いてしまおうぜ! おい、ナイフを持ってこい」

 あぁ、私が声を出せたら、抵抗できたのに。少なくとも連れ込まれる前に助けを呼べたはず。

 悔しい、悔しい、悔しい。

 涙があふれ、頬を濡らします。

 その時、胸元のネックレスが肩からずれ落ち、ちょうどそこにあった私の手に触れました。


(絶対に守るから)


 クレイグ様の言葉を思い出します。

 クレイグ様、助けて……! お願い! 

 青いペンダント部分を握りしめ、祈ります。



「これを」

 エドモンドがナイフを受け取り、私のドレスに刃を立てました。

 あなたにいいように使われるつもりは一切ないの。たとえ、この身がなくなろうとも。この身を汚されるくらいならば、その前に死んでやるわ。

 なけなしの力で舌を噛み切ろうとしたその時。

 バタン!
 勢いよくドアが開けられました。

「そこで何をしている!」

 そこにはいつもよりも遥かに低い声で、怒りのオーラに身を包んだクレイグ様が立っていました。
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