リースス・レーニス

大神ヒラメ

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悪い人

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3人は緊張しながらティーラの次の言葉を待った。しかし、ティーラの口から零れた言葉は意外なものだった。
「特に何もしません。」
「「「…は?」」」
3人は揃って素っ頓狂な声を上げ、拍子抜けしたような顔をした。口をあんぐりと開けてとぼけた顔をしている3人に向け、ティーラは念を押すように言葉を繰り返した。
「だから、特に何もしませんって。」
ティーラがそう言うと、3人はティーラの方へズイッと顔を近づけた。
「誘拐したり…」
「暴力をふるったり…」
「殺したりとかしないのか!?」
「しませんよ、そんな物騒で面倒な事。」
ティーラは目の前にある3つの顔を細目でジトッと睨むと、心底鬱陶しそうな顔をして、シッシッと追い払うような仕草をした。
「はぁ…なんだよ…脅かすなよ…」
イスナは心から安堵したようで、ドカッと大きな音を立てながら椅子にもたれかかった。サラとアルバも、ホッとため息をつきながら自分の椅子に戻った。席に着いた3人は、先程のように身体を強ばらせず、全身の力が抜けているようだった。
ティーラはそんな3人の姿を見ると、口元を隠しながらニヤニヤと意地の悪い顔をした。
「貴方達が勝手に勘違いしただけでしょう。僕は何もしてませんし。」
「さっきの自分の行動を忘れたのかしら…。」
サラは、白々しい態度を取るティーラを呆れた目でジッと見た。
「失礼、そうですね。まぁ、そもそも貴方達が僕に銃口を向けたので、そうせざるを得なかっただけなんですが。」
ティーラは、ハァーとわざとらしいため息をつくと、やれやれという仕草をした。
サラはそんなティーラのジェスチャーを見ると、バツが悪そうな顔をして視線を落とした。
「…あれには理由があるのよ。」
サラは、口を尖らせてボソボソと口ごもらせた。
そんなサラの姿を見たティーラは、ボソッと「いい事を聞きました…。」と言うと、悪い顔をして頬杖をついた。そして、先程まで人をからかっていた口を艶めかしく開いた。
「ほぅ…詳しく聞かせていただけますか?」
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