リースス・レーニス

狡猾

ティーラは、アジトの奥にある談話室に案内された。4人は、木製の円形テーブルを囲って座っている。ティーラの正面にはサラ、右にはイスナ、左にはアルバという席順だ。
全員が席に座ると、ティーラは手を組んでテーブルに肘をつき、ニヤッと微笑んで口を開いた。
「さて、話し合いを始めましょうか。僕の要望はただ一つ。僕達のファミリーへの加入、ただそれだけです。」
ティーラは試すような視線をサラに送った。サラは膝に置いた拳をプルプルと震わせながら、ティーラと目を合わせた。
「…断ればどうするのよ。」
サラはティーラから目を離さなかった。ティーラの瞳から目を背ければ、負けた気になるからだろう。
しかし、そんなサラの心の葛藤を嘲笑うかのように、ティーラは目を細くしてニコニコとしている。
そんな2人の様子を見たイスナは、バァン！と机を叩いて立ち上がった。
「おいお前！何がおかしい！」
イスナがティーラの胸ぐらを掴もうと手を伸ばしたが、後ろからアルバがイスナを羽交い締めにした。
「イスナ！落ち着いて下さい！話し合いで手を出せば、僕らの負けですよ！」
アルバがそう言うと、イスナは歯を食いしばってティーラを睨みつけた。しかし、ティーラはイスナに目もくれず、サラと目を合わせ続けている。
サラはそんなイスナの様子を見て、ティーラに言葉を投げかけた。
「勿体ぶってないで、さっさと言いなさいよ。そういう男は嫌われるわよ。」
サラがそう言うと、ティーラは「おっと、それは失礼。」と言ってクスクスと笑った。
「では端的に話しましょう。貴方達が僕の要望を断った場合…」
ティーラはイスナ、アルバ、サラを順に見つめると、グイッと口角を上げて悪魔のように微笑んだ。瞳には怪しげな光を帯びている。その時のティーラの顔は悪魔そのものだった。
3人はそんなティーラの表情を見て、生唾を飲み込んだ。