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第二章 躍動の5年間 初等部編

第7話 入学式 初等部1年生

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 今日は待ちに待った入学式だ。
 早く、専門知識が欲しくてたまらないので、待ちに待っていた。
 何の専門知識かって?そりゃ、魔術に決まってるじゃないか。
 どうやら、計算の方法や、文字の読み書きは日本語と全く同じということが、今日までの5年間でわかったことだ。
 全く違う惑星で全く同じ言語が使えるという違和感は半端ないが、その辺りを知ってそうな天使アリエルとは、魔法暴走事件以来会っていない。
 聞けないのだから調べようもない。

 さて、この惑星ボーンのジンパッグ国の常識については、5歳までの自宅学習でまなんできた。
 主に家庭教師のポーラ先生にゴリ押しで質問しまくった結果だが、それはよしとしよう。

 今日の入学式が楽しみなのは、本格的な魔術用の杖を購入する許可書を発行してもらえるからだ。
 俺は生まてすぐに杖を買ってもらっている。あれはあくまで、術式付与のできないオモチャだ。
 やはり、子どものころから魔術に触れさせるといいと言うのは、迷信のたぐいだったようだ。
 お守りとしてパパンは買ってきてくれたわけだな。
 冷静に考えたら赤ちゃんが魔術をぶっぱなしたら大惨事だとわかるよな…。

 まぁ、魔法でそれはやらかしたけどね…。
 でも、アリエルと出会うきっかけになったし、悪いことばかりじゃないよね。
 あと、このあっけらかんとした性格も魔力が影響していると言われたが、俺も確信を得ている。
 前世の俺ならどう判断したか?という問いを普段からするようにしているからだ。
 この性格は一見、元気で明るくて良さそうだか、反面、考えが足りない場面が目立つ。
 アネモネとの爛れた関係が全てを物語っているだろう。
 当時は彼女が自制してくれたので、闇落ちはしなかった。
 しかし、あのまま彼女がやめなかったと考えると、ゾッとする。

 きっと、魔力だけで性格が決まるのではないとは思うが、それだけでもないこともわかる。
 ママンがそうだろう。
 下級術師なのに、あんなに気さくで明るい人柄なんだから。
 努力もしていそうなだけに、俺もがんばろうと決めた。
 考えることなく、世界一の魔術師になることはできないだろう。
 それはそうと、入学式だ。
 前世では執り行う側だったので、新鮮だな。
 
「これから入学式を行います。一同、起立、礼、着席」

 あぁ、懐かしいなこの感じ。
 しまった、完璧な礼をしたら、逆に浮いてしまったようだ…。
 周囲の子どもたちは完全に上の空だ…。

「校長先生のお話。一年生は立ちましょう。礼。座りましょう。」

 今度は周りに合わしたぞ。
 いや、合わせる必要もないか、俺は世界一を目指すわけだし。
 今から下に合わせてしまっては、上は目指せないはず!
 とんがった小学生になろう。
 小学生とは言ったものの、この学校は大学までの一貫学校で、今日は5年間続く初等部の入学式である。
 中等部も5年で、大学にあたる高等部も5年である。
 そして、この国では、大学卒業を成人とし、就職できる。
 逆に成績が悪くて留年すれば、どんどん成人は遅れる。
 一人前かどうかをシビアに見守るシステムのようだ。
 なかなか画期的なアイデアだと感じた。

 なんて、考えていると校長の話は終わった。
 次に担任紹介や、お祝いのセレモニーがあって、式は終わった。
 担任の先生の名前は覚えていない。
 あえて聞かないように努めた。
 なぜかって?とんがった小学生になるためだよ。
 だって、感情移入しちゃうと、ヤンチャできなくなるでしょ?
 と言うのも、先ほどの留年の話は高等部だけが適用されるのだ。
 初等部と中等部は全て欠席でも進級できる。
 実際、半年以上不登校だったアネモネは無事進級して、今は中等部の1年生だ。
 あぁ、彼女との関係も良好だ。
 やはり、アネモネも一目惚れだったらしく、思わずキスをしてしまったそうだ。
 恥ずかしそうに教えてくれた。
 ちなみに、彼女とは「成人したら結婚しようね」と約束している。
 幼馴染との結婚とか、萌えるな。

 しかし、彼女の両親とは連絡がつかないままだ。
 誰も言葉にはしないが、悲しい事故があったのかもしれない。
 警察に捜索願は提出しているが、なんの進展もない。
 もしものときは、俺が彼女を支えよう。
 
 そんなこんなで、入学式は終わった。
 待合室で待っていた、パパンとママンはとても褒めてくれた。
「ライ、とっても礼が上手だったじゃない!えらいわ!」
「そうだな。がんばっていたな。これからもがんばるんだぞ?」
「パパン、はーい!がんばるー!」
 0歳でしゃべってしまった俺はキャラ作りに苦労していた…。
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