世界一になるって決めた!〜お隣の似た宇宙に転生してました〜

ahootaa

文字の大きさ
42 / 76
第三章 激闘の魔闘士大会編 中等部1年生

幕間 凶暴姫の王子様

 そんな遠くない昔々、そう、10年ほど昔のお話でございます。

「オギャー」

「あぎゃー」
 
「あなた?大丈夫!?」

「う…」
 
 バタッ

 これが私の生まれた瞬間でございます。
 私は大きな呪いを受け、生まれ落ち、誕生と同時に強力なオーラの力で父親の首を握り潰したのです。
 私は「凶暴姫」と呼ばれ、家族とは隔離した部屋で家畜のように育てられました。
 その隔離された部屋というのが牢屋という名前であることは10歳になった頃に教えられました。
 教えられたと申し上げましたが、教えてくださったのが、私のご主人様であられるツバル・シュバルツ様でございます。

 私は姫と呼ばれるように、1国の姫であることは間違いありません。
 しかし、公には存在は公表されず、ただの生物として飼われていました。
 いや、殺されてもおかしくはないのです。
 王である父を殺害したのですから。
 それをきっかけに国を大きく動かしてしまった罪深き存在なのですから。

 しかし、王にとっては唯一の子である私を殺すことはできなかったのだと、後からご主人様に教えていただきました。
 急に王を失った王国は次第に政権を維持できず、国内情勢は不安定になりました。
 王の弟である、叔父が次代の王となりましたが、王としての教育を受けてこなかった次王は政治がうまくなかったそうです。
 次第に王派閥と、貴族派閥に分裂、民衆はそれに嫌気がさし、独立運動を始めました。
 その後、泥沼の政治闘争や、内紛を経て、民主制が敷かれるようになってきました。
 その時に、王族の扱いや貴族の扱いでかなり揉めたと聞いております。
 貴族は、権益を放棄し、政治家としての頭角を表すものだけ、政治家としての道が残され、王族は国の象徴としての扱いを受けるようになりました。
 王族は人権の多くを奪われ、国のマスコットへと成り下がったのです。
 私は王族の末端とはいえ、その存在さえも公表されていません。
 そんな私に誰も慈悲の心すら持ってくれませんでした。
 牢屋に入れられた私は犯罪者か何かだろうと取り合ってもらえず、そのまま投獄され続けたのです。
 母はどうやら内紛に巻き込まれ何処かで死んだようです。
 私はこの時、初めて1人ぼっちなんだと実感しました。
 言葉も最低限しか知らず、説明することもできません。
 知識もなく、論理的な思考もできませんでした。

 しかし、王の側仕えであった1人の青年が私の存在を覚えてくれていたのです。
 王の側仕えができるのは上級貴族の子息と決まっているそうです。
 彼は上級貴族の子息でありながら、私のような穢れた存在を認知してくれていたのです。
 その青年はいつも私にご飯を持ってきてくれました。
 その青年はいつも私に話しかけてくれました。
 その青年はいつも私に夢を語ってくれました。
 その青年の夢は魔闘士になることでした。
 その青年は上級貴族の子息であることから政治家になることを決められていました。
 それがどうも許せなかったらしいです。
 彼の言葉を聞いて言葉を覚え、彼の言葉から論理的な思考を手に入れ、彼の言葉から知識を得て、私はヒトという生き物について学びました。
 現在の国の状況や、自分が王族の末端であること、政治とはどのようなものなのかを学びました。
 その上で、私は彼のことをこう呼びました。

「ご主人様」
 こう呼ぶと彼は振り返ります。

「そのご主人様ってのどうにかならないか?むしろ逆な気がするんだが?」

「いえ、そんなことはございません。私がヒトになれたのは貴方様がおられたおかげです」

「うーん、いいか。それで、姫はこれからどうする?」

 どうすると聞かれたのも、現在の国の状況がよくないからです。
 どうやら、次の選挙を武力で潰そうとしている貴族がいるそうです。
 その筆頭にご主人様のお父様がおられるそうです。
 それにご主人様は参加したくないので、国外逃亡を図られるそうです。
 武力行使をするということは、内戦を意味します。
 今後の政治体制も落ち着くまで、王族の扱いは非常に危ういものとなるそうです。
 しかし、囚われの身である、私は何の選択権も持っていません。
 このまま放置されれば死にゆく身。

「私には何も選べません。私はヒトですが、人権はありません」

「うーん。やっぱり、ご主人様より私は王子様になりたいかな」

「王子様ですか?」

「そう、姫を助けるのって王子様の役目だろ?」

「姫を助ける?」

「そう、ここに、目の前に姫がいるじゃないか。人権は勝ち取るものだ。私が姫の人権を勝ち取ろう。まず、名前だな」

「名前ですか」

「そう、名前ないだろ?王族の名前なんて捨てて仕舞えばいい」

「そんなことができるのですね。それなら、ご主人様に名前をつけていただきたいです」

「あぁ、そうだな。それなら、シャイナ・グランテにしよう。姫にピッタリだと思うんだ。内面と外面どちらも表しているんだ」

「承知しました。私は今からシャイナ・グランテでございます。ご主人様のメイドとなります」

「いや、私は王子様になりたかったんだけどな…。まぁ、いいか。とりあえずそれで行こう。そして、こんな国は捨てて、安全な国で過ごそう。私はそれなりに教育を受けているからどこでもうまく行くと思うんだ」

「はい。ご主人様と一緒ならどこでもいいです」

 こうして私は凶暴姫からシャイナ・グランテとなり、魔闘士となりました。
 ご主人様は現役のピークを過ぎて研究職に歩を進められ、私はご主人様のためのメイドの傍ら魔闘士をしております。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。