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エピローグ
帰り道
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【エピローグ】
六月。
藤宮さよにとって目紛しい五月が過ぎ去り、兄妹が能力に目覚めてから二ヶ月が経った頃。
晩春から初夏へと移り変わり、風の匂いも変わってきた。
夜、二二時。
さよとレクは本日も罪獣退治を終え、帰宅の途についていた。
「いや~今日もすごかったな」
「…………罪獣が?」
「バーカ。俺が、に決まってんだろ? 新たなる能力に目覚め、戦いの中で進化する俺、カッケー」
「はいはい……」
さよは辟易としながら、午前中の雨で濡れたアスファルトを踏みつける。
飲食店や呉服店が並ぶ大通りから、青い歩道橋を渡る途中、「さよ、悪い。ちょっと寄りたいところがあるんだけどいいか?」とレクが話しかける。
特に急ぐ理由もないので「いいよ」と返し、兄妹は家のある方向と逆へ進む。
見えてきたのは広い駐車場のあるコンビニ。
レクは自動ドアを抜けると、レジの横にある発券機の前に立ち、何やら番号を打ち込んでいた。しばらくすると印刷されたレシートを手に「さよ、ジュース飲むか?」と尋ねる。
「うーん、じゃあこれ」とさよは紙パックのオレンジジュースを差し出すと、レクは財布を手に会計を済ます。
店内を後にしたレクから、オレンジジュースと一緒に一枚のチケットを手渡される。
「えっ……」
手中の文字を凝視する。
そこには、つい二ヶ月前に、さよが連れてってとお願いした隣町の遊園地のチケットだった。
「いやーこの前トクとヤマちゃんと行ったんだけど思ったより楽しくってさ。よかったらさよ、今度の日曜、一緒に行こうぜ?」
「たまには二人で出かけるのもいいよな」兄はもう一枚のチケットを握りしめ、八重歯を覗かせて微笑む。
その表情はどこか照れ臭そうであった。
さよは自分の頬が赤くなるのを感じた。
今が夜でよかった。
そんな心中を悟られぬように、小さな頭を何回も縦に振る。
なんだ。
やっぱりお兄ちゃんは。
世界一カッコいい最強の能力者なんだ―。
レクは恥ずかしそうに遠くを眺めながら。
さよは日曜に向けて逸る気持ちを抑えながら。
兄妹は、我が家へと続く帰り道を歩く。
六月。
藤宮さよにとって目紛しい五月が過ぎ去り、兄妹が能力に目覚めてから二ヶ月が経った頃。
晩春から初夏へと移り変わり、風の匂いも変わってきた。
夜、二二時。
さよとレクは本日も罪獣退治を終え、帰宅の途についていた。
「いや~今日もすごかったな」
「…………罪獣が?」
「バーカ。俺が、に決まってんだろ? 新たなる能力に目覚め、戦いの中で進化する俺、カッケー」
「はいはい……」
さよは辟易としながら、午前中の雨で濡れたアスファルトを踏みつける。
飲食店や呉服店が並ぶ大通りから、青い歩道橋を渡る途中、「さよ、悪い。ちょっと寄りたいところがあるんだけどいいか?」とレクが話しかける。
特に急ぐ理由もないので「いいよ」と返し、兄妹は家のある方向と逆へ進む。
見えてきたのは広い駐車場のあるコンビニ。
レクは自動ドアを抜けると、レジの横にある発券機の前に立ち、何やら番号を打ち込んでいた。しばらくすると印刷されたレシートを手に「さよ、ジュース飲むか?」と尋ねる。
「うーん、じゃあこれ」とさよは紙パックのオレンジジュースを差し出すと、レクは財布を手に会計を済ます。
店内を後にしたレクから、オレンジジュースと一緒に一枚のチケットを手渡される。
「えっ……」
手中の文字を凝視する。
そこには、つい二ヶ月前に、さよが連れてってとお願いした隣町の遊園地のチケットだった。
「いやーこの前トクとヤマちゃんと行ったんだけど思ったより楽しくってさ。よかったらさよ、今度の日曜、一緒に行こうぜ?」
「たまには二人で出かけるのもいいよな」兄はもう一枚のチケットを握りしめ、八重歯を覗かせて微笑む。
その表情はどこか照れ臭そうであった。
さよは自分の頬が赤くなるのを感じた。
今が夜でよかった。
そんな心中を悟られぬように、小さな頭を何回も縦に振る。
なんだ。
やっぱりお兄ちゃんは。
世界一カッコいい最強の能力者なんだ―。
レクは恥ずかしそうに遠くを眺めながら。
さよは日曜に向けて逸る気持ちを抑えながら。
兄妹は、我が家へと続く帰り道を歩く。
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