氷焔の冒険者~元ヲタは異世界で侍になるそうです~

不知火 氷雨

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第一章

12 水晶の街『クォーツリク』

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今、俺の目の前には大きな......フランスの凱旋門といえば想像できるだろうか。そんな中世を想起させる門がある。......この世界の文明レベルはどれほどなのだろうか?
 門の傍では二人の門番が応対をしていた。見れば、許可待ちであろう人がちらほら見える。
 俺たちがそこへ近づいていくと、門番の片方がこちらに気づき、声を掛けてくる。

「うん? アリアじゃないか。しばらく見なかったが、なにしてたんだ?」
「アインさん、お久しぶりです。他の街への遠征と弟子の育成ですかねー?」
「弟子ねぇ......弟子!? パーティすら組まない君がか?」
「まぁ、成り行きですし、軽く初歩を教えただけですよ」
「それでも驚きだよ」

 どうやら、アリアと門番の......アインさんだっけ? は知り合いのようだ。アリアは冒険者だし、当たり前か。
 
「で、こっちの彼がアリアの弟子かい?」
「そう、これから冒険者になるし、紹介しますよ。田舎から、冒険者になるために出てきたソウジ・アカツキ君です」
「あ、ああ、いえ、はい! ソウジ・アカツキです。よろしくお願いします」

 急に俺に話題を振られて驚いてしまった。思わず、変な挨拶をしてしまった。

「これは、丁寧な挨拶、痛み入る。私は、この街の騎士団に所属しているアイン・クロースウェルだ。そんなに緊張しなくていいよ。私はただの門番だからね」
「あ、はい。よろしくお願いします」

 彼――アイン・クロースウェルは、20代後半くらいの金髪碧眼のイケメンだ。しかも、優しそう。
俺の! 嫉妬の炎が燃え上がる! ......地球でも一回くらいはモテたかったなぁ。

「よく言いますね、どこがただの門番ですか。騎士団団長のくせに......」
「あはは......。もう30代後半の老害さ、気にしないでくれたまえ」
「え!? き、騎士団長ですか!? ていうか、30代後半......」

 どうやら彼はイケメンでエリート、しかも年齢にそぐわない見た目。俺の魂が警鐘を鳴らす......やはり彼奴は俺の敵だ!

「団長ー!」
「おっと仕事の途中だった。見ての通り、混み合っててね。すまないが、通行には少し時間がかかる」
「大丈夫ですよ。それくらい待ちますから」
「うん、じゃあまた後でね」

 そう、本当に申し訳なさそうに言って去っていく。前言撤回だ、彼はいいイケメンだ。

「アリア、騎士団長って門番なんてしてていいのか?」
「彼は変わり者でね、平民から実力のみで騎士になって成り上がって行ったんだけど、上に上がってもずっと下の仕事を手伝っているんだ。もちろん、民衆からの支持もいいんだよ」
「へぇ......凄い人なんだな」

 視線の先には、商人と話して通行の許可を出しているアインさんの姿がある。

「そんな話をしている間に、そろそろ私たちの番だよ」
「案外、早いな」
「そりゃ荷物の確認と犯罪を犯してないかの確認だけだし」
「犯罪の確認......? そんなのどうやって」
「まぁすぐわかるよ」

 そして、俺たちの番が来た。俺たちの担当は、アインさんのようだ。

「やぁ、大丈夫だと思うけど、確認させてもらうよ」
「はい。ほら、ソウジ君も」
「お、おう」

 俺たちは手持ちの荷物を取り出し、アインさんに渡した。
 彼は、中のもの取り出して検分を始めた。
 俺は、疑問に思ったことをアリアに小声で尋ねた。

「ディメンションバッグの中身は、いいのか?」
「うん。まず基本的に、時空属性持ちの冒険者は少ないしそんなものまで見ていたらきりがないしね」
「......そんなものなのか」
 
 元日本に居た俺からすれば、少し釈然としないが、郷に入っては郷に従えというし、これが普通なのだろう。そう思って割り切ることにした。
 検分が終わったのか、アインさんが荷物をこちらに持ってくる。

「終わったよ、特に問題はないね、気になるものは何点かあったけど......」

 そういって、彼はこちらをちらりと見る。おそらく、日本語で書かれた本や写真、それに貴金属の類だろう。しかし、それに彼は言及できないそうだ。
 これは事前にアリアが言っていたのだが、危険性がないと確認できたものに関しては、如何におかしなものであろうとも検査側は言及してはいけないそうだ。魔道具などは用途を説明しないといけないそうだが。

「ありがとうございます。じゃあ、次ですね」

 アリアは彼の無言の訴えをスルーして、荷物を背負う。俺は彼の視線が痛く、目線を逸らすことしかできなかった。

「......はぁ、アリアが大丈夫だと思うならいいか。じゃあ行こうか。」

 どうやらアリアは思った以上に信頼されているようだ。一人で納得した様子のアインさんに連れられて向かった先には、一つの綺麗な水晶玉があった。

「じゃあここに手をかざしてくれ」
「私から行くよ」

 アリアがその水晶玉に手をかざせば、ぼんやりと青く光る。どういう原理かは知らないが、これで犯罪者の選別を行っているということだろう。

「次はアカツキ君だね。頼むよ」
「あ、はい」

 緊張しながら、手をかざす。若干、魔力が吸われたようだ。ほんとに微量だが。
 固唾を呑んで、見守っていると水晶玉がぼんやりと光を放ち......

「青だね。これで二人とも大丈夫だ」
「じゃあ、はい。これ、私のギルドカードとソウジ君の分の通行料」
「確かに。じゃあ、ようこそ! 『クォーツリク』へ!」

 異世界に来て、約二週間やっと文明へとたどり着いた。
 わくわくが抑えられず、にやけた顔のまま、俺は門を潜った。
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