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転生生活初のクエスト
スキルの意味
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ジリジリとゴブリン達が近づいてくる。どうやら、数で押し切ろうとしているらしい。
「先程ワタシが言った通りに、焦らずに。剣の届く範囲にきたら、迷わず薙ぎ払って。後ろはダイジョウブ、ワタシがいますから、前だけ見てッッッ!! 」
ドドドドッっと、一斉に襲ってきた。ゴブリン達の手には、ボロボロだが、攻撃という役割は果たせる剣があった。貰った装備を着ていても、当たれば無傷ですむはずがない。
そこからは無我夢中だった。助言通り、剣を払いに払いまくる。それはもう、右に左にブンブンと。予想していたよりも、ゴブリン達にダメージを与えられている。どうやらゴブリンは、動きが自分よりも鈍いらしい。
後ろのチョビヒゲちゃんも対応している。ホァッ、ヒィャッっというかけ声とともに、斬られたゴブリン達の声が耳に届く。直接見ていないので分からないが、剣術はかなりのもののようだ。
そう思った矢先、ゴブリン達が攻める手をピタッと止めた。何だ? と思うやいなや、傷を負ったものに手を貸しつつ、ゴブリン達は去っていった。
た、助かった~
安堵のため息がこぼれる。命の危機は、思ったよりも早く去ってくれた。しかし、ベテランの顔は険しいままだった。
「……急いで戻りましょう。ワタシタチだけでは対処できない事態です。」
そう話す血の気の引いた顔は、足の痛みだけが原因だと思えないほど真っ白で、険しかった。
なんとか集会所まで帰ってきた。このままベットで横になりたかったが、そうはいかないらしい。
「すぐに統括者を呼んで下サイ。早急に対処すべき報告がありマス」
怪我を心配する若い受付嬢の声も無視して、まくし立てる。
「は、はいっ! ですが、まずは落ち着いて下さい! そのまま話されても、伝わりませんから」
若いながらも落ち着いている受付嬢にそう促され、徐々に荒ぶる心が静まっていく。
「騒いでしまいスミマセン。では、かいつまんで……」
遺跡へ定期調査に向かう最中、多くのゴブリンに襲われたこと、そして、すぐに去っていったことを伝える。
「かなり危険な状態です。すぐに統括者に伝えて、討伐隊を作って下さい!」
「で、ですが、数は非常に多いようですが、下級魔物のゴブリンですよね? そこまで緊急の案件ではないのでは?」
それは少し私も思っていた。数は多けれど、ゴブリンはかなり弱かったし。実際、素人の自分は無傷だ。
「理由は2つありマス。1つ目は、ワタシタチを囲んで一斉に襲いながらも、すぐに去ったこと。普通のゴブリンなら、一斉にも、囲んでもこないですし、ましてや斬られたものに手を貸して去るなんてありえません。」
「確かに、普通のゴブリンとは違うみたいですね、ですが……」
「もう1つは、ほぼ確実にゴブリン達の王が誕生している事です。その王が統率しているカラ、ゴブリン達はまとまって行動し、さらに計画的になっているのデス。早く、統率者にこう伝えて下さい。【ゴブリン専門家】の名にかけ、ランクB-の討伐クエストを依頼する、と」
「えっ!! 専門家って、その経験と知識が認められた人しか、名乗る事を許されていないあのっ!? わっ、分かりました!! すぐに伝えてきまする!」
少し懐疑的だった態度は一変し、早口で噛みながら、慌てて奥の方へ走っていった。
「お嬢ちゃんもお疲れ様デシタ。色々ありましたが、もう安心ですよ♪ スキルに専門家を持つワタシが言ったのですから、すぐに討伐隊が向かうでしょう」
ランクやらスキルやら、まだまだ分からない事だらけだ。でも、1つだけ、スキルは才能だけが全てではないらしい。その人の積み上げたものが認められれば、スキルに成り得るようだ。このチョビヒゲさん、お気楽そうに見えるが、相当な熟練者だ。最初のクエストがこの人と一緒でよかったと、心底思った。
「先程ワタシが言った通りに、焦らずに。剣の届く範囲にきたら、迷わず薙ぎ払って。後ろはダイジョウブ、ワタシがいますから、前だけ見てッッッ!! 」
ドドドドッっと、一斉に襲ってきた。ゴブリン達の手には、ボロボロだが、攻撃という役割は果たせる剣があった。貰った装備を着ていても、当たれば無傷ですむはずがない。
そこからは無我夢中だった。助言通り、剣を払いに払いまくる。それはもう、右に左にブンブンと。予想していたよりも、ゴブリン達にダメージを与えられている。どうやらゴブリンは、動きが自分よりも鈍いらしい。
後ろのチョビヒゲちゃんも対応している。ホァッ、ヒィャッっというかけ声とともに、斬られたゴブリン達の声が耳に届く。直接見ていないので分からないが、剣術はかなりのもののようだ。
そう思った矢先、ゴブリン達が攻める手をピタッと止めた。何だ? と思うやいなや、傷を負ったものに手を貸しつつ、ゴブリン達は去っていった。
た、助かった~
安堵のため息がこぼれる。命の危機は、思ったよりも早く去ってくれた。しかし、ベテランの顔は険しいままだった。
「……急いで戻りましょう。ワタシタチだけでは対処できない事態です。」
そう話す血の気の引いた顔は、足の痛みだけが原因だと思えないほど真っ白で、険しかった。
なんとか集会所まで帰ってきた。このままベットで横になりたかったが、そうはいかないらしい。
「すぐに統括者を呼んで下サイ。早急に対処すべき報告がありマス」
怪我を心配する若い受付嬢の声も無視して、まくし立てる。
「は、はいっ! ですが、まずは落ち着いて下さい! そのまま話されても、伝わりませんから」
若いながらも落ち着いている受付嬢にそう促され、徐々に荒ぶる心が静まっていく。
「騒いでしまいスミマセン。では、かいつまんで……」
遺跡へ定期調査に向かう最中、多くのゴブリンに襲われたこと、そして、すぐに去っていったことを伝える。
「かなり危険な状態です。すぐに統括者に伝えて、討伐隊を作って下さい!」
「で、ですが、数は非常に多いようですが、下級魔物のゴブリンですよね? そこまで緊急の案件ではないのでは?」
それは少し私も思っていた。数は多けれど、ゴブリンはかなり弱かったし。実際、素人の自分は無傷だ。
「理由は2つありマス。1つ目は、ワタシタチを囲んで一斉に襲いながらも、すぐに去ったこと。普通のゴブリンなら、一斉にも、囲んでもこないですし、ましてや斬られたものに手を貸して去るなんてありえません。」
「確かに、普通のゴブリンとは違うみたいですね、ですが……」
「もう1つは、ほぼ確実にゴブリン達の王が誕生している事です。その王が統率しているカラ、ゴブリン達はまとまって行動し、さらに計画的になっているのデス。早く、統率者にこう伝えて下さい。【ゴブリン専門家】の名にかけ、ランクB-の討伐クエストを依頼する、と」
「えっ!! 専門家って、その経験と知識が認められた人しか、名乗る事を許されていないあのっ!? わっ、分かりました!! すぐに伝えてきまする!」
少し懐疑的だった態度は一変し、早口で噛みながら、慌てて奥の方へ走っていった。
「お嬢ちゃんもお疲れ様デシタ。色々ありましたが、もう安心ですよ♪ スキルに専門家を持つワタシが言ったのですから、すぐに討伐隊が向かうでしょう」
ランクやらスキルやら、まだまだ分からない事だらけだ。でも、1つだけ、スキルは才能だけが全てではないらしい。その人の積み上げたものが認められれば、スキルに成り得るようだ。このチョビヒゲさん、お気楽そうに見えるが、相当な熟練者だ。最初のクエストがこの人と一緒でよかったと、心底思った。
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