占い師が不良少女でも信じてくれますかっ!?

しんしょう

文字の大きさ
2 / 8

占いと不良少女

しおりを挟む
 「んで? テメエは何を占って欲しいんだ? 」

 「・・・えっ? 占いって言いました? 」

 想像していたものと程遠い言葉に、キョトンとする男の子。

 「なにしてんだ。ほら、さっさと言えって」

 「いや、特に占って欲しい事なんてないですけど・・・」

 「あぁ? さっきテメエ、この占い部の方をジッと見てたじゃねえか」

 「いや、そりゃあれだけ叫んでる人がいたら見ますよ、普通は」

 男の子はあきれた様子で答える。すると不良少女は、

 「あぁん! 」

 と、言って男の子を睨みつける。

 「ひぇっ、な、何でもないです・・・」

 その凄みのある不良少女の顔に、男の子は思わずたじろぐ。

 「まぁいい。グダグタしてねえでさっさと言えって。なんかあるだろ? 恋だとか友達だとかの悩み事がさぁ」

 そう言って催促する不良少女に、男の子はこう答える。

 「あ、えーと・・・そ、それじゃあ運勢占いをお願いします」

 「ほら、ちゃんと占って欲しい事があるじゃねえか。よし、運勢だな、ちょっと待ってろ」

 そう言って、ゴソゴソと何かを探す不良少女。その顔はどこか楽しげだった。

 「んじゃ、今回はタロットで占うぞ。テメエのこれからの運勢はっと・・・」

 シャシャシャっと、手慣れた手つきでカードを切っていく。
 ある程度シャッフルしたところで、不良少女は一番上のカードをめくる。

 「っと、テメエの運勢は・・・ お、なかなかいいじゃねえか。恋人の正位置だ。よかったな」

 そう言うと不良少女は、男の子の背中をバンバンと叩く。

 「いたっ痛いですってもう・・・」

 そう男の子が呟き、占い師である不良少女の方を見ると、ニコニコと機嫌が良さそうだ。
 ここでしばしの沈黙が訪れる。

 「・・・んぇっ? これで終わりですか? なんかもっと意味とか具体的な助言とかあるんじゃ? 」

 沈黙に耐えかねて、男の子は占いの結果について催促する。

 「んなもんねぇ。とりあえずなんも考えずにいたらいいんだよ。はい、以上」

 不良少女は吐き捨てるように言う。

 「・・・もしかして、適当に言ってるんじゃないですか? 」

 そう訝しむ男の子に、不良少女は間髪入れずに、

 「あぁ? テメエ、喧嘩売ってんのか? 」

 と、男の子に凄みのある顔で詰め寄る。

 「い、いや、そんなつもりじゃないですけど」

 男の子はたまらず目線を下に逸らす。

 「ちっ、とりあえず信じてりゃあいいんだよ、いい結果がでてんだから。」

 「まぁそうですね。あんまり占いとか信じてないですけど」

 「あぁ? 今何つった? 」

 ピクリ、と不良少女の顔の青筋が反応する。

 「いやいや、何もないですよ。あ、あー、明日が楽しみだなぁ」

 「それでいいんだよ。ほら、分かったらさっさと帰りな」

 「・・・自分が無理矢理引っ張ってきたくせに」

 男の子は、ぽそっと呟く。

 「あぁ? 」

 不良少女は、その小さな呟きを聞き漏らさない。

 「いえ、何でもないです! さよならーーー!! 」

  もうこれ以上捕まってたまるかと言わんばかりの速さで、男の子は占い部を飛び出す。

 「・・・やっぱ人を占うってのはいいな、うん」

 一人部室に取り残された不良少女の顔はほころんでいた。最初に占った女の子と同じく、男の子も飛び出すように逃げたにもかかわらず。

 一方、男の子は、

 「・・・占いとか信じちゃいないけど、誰かに良いって言われるのは悪くないなぁ」

 と、呟き、軽い足取りで家路についた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

処理中です...