深愛なる魔女 〜場違い女ですが、信仰対象は前世の私のようです。〜

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プロローグ

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「初めまして、親愛なる旦那様。あなたの妻のアシュリーです」

 突然の見知らぬ女の登場がよほど衝撃だったのだろう。
 招集の場ということもあり、格式ばった正装に身を包んだ彼は、ぽかんと口を開けていた。

 艶やかな黒髪とほのかに青みがかった黒目。
 色のついた装飾で華やかさはあるものの、全体を占める装いがほぼ漆黒なので漂う空気にはどこか鋭利さがあった。


「…………妻だと?」

 石像のごとく固まっていた彼は、ようやく唇を動かした。

「ええ、一応肩書き上、あなたは私の夫らしいので」

 にこりと当てつけたように微笑めば、合点がいったのか相手の眉間に軽く皺が寄る。あら、私もよくそんな顔をしていた気がするわ。ここにたどり着くまで何度もね。

 それでもなお、彼──ギルベルト・シュヴァルツィアは、すぐに余裕そうな表情に変えて述べた。

「では、我が妻殿。ここがどのような場かお分かりで?」
「入った瞬間に理解しました。旦那様だけがいると聞いていたもので、各諸侯の皆々様がお揃いだとは思わず……無礼をお許しくださいませ」

 私はスカートの裾を持ち上げて深々と礼を取る。

 招集会の場に乱入してしまったというのに、ここに集う諸侯たちは怒る様子もなくこちらを静かに見定めていた。中にはこの状況を面白がるように口元をニマニマとさせている諸侯もいるほど。

 ルベスト諸侯連邦。ここにいる人たちは、大陸『テイル』の最東端、六つの領土を治める領主らだ。

 しかし、そんな人物達を前にしても一歩も引かずにいる私が奇妙に映ったのか、シュバルツィア公爵は率直に尋ねた。

「なにが目的だ、妻殿」

 即刻退室を命じるわけでもなく、彼から話を振ってくれるなら話は早い。
 私は待っていましたと言わんばかりに口を開いた。


「離婚していただけませんか」

 途端に広がる静寂。もともと傍観されていたので静かだったけれど、世界から音が消えたような静けさにまでなった。
 それもニコニコと嬉しそうな顔をしてトンデモ発言をしたものだから、誰もが呆気に取られている。

 このような状況になったとしても今の私に怖いものはない。
 だってうまく離婚が成立すれば、私は自由の身になれる。

 自由。なんて魅力的で甘美な響きだろう。
 なにしろ私はそれを、今世はもちろん──魔女様と呼ばれていた前世から密かに願い続けていたのだ。

 

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