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5.急変
しおりを挟む体中が痛い。
目を開けると、ヘルベルト様が目の前で眠っていた。
抱き締められたまま、私も眠ったらしい。
今動いたら起こしてしまう。
昨夜あんなことがあったにしろ、ヘルベルト様はイケメンだなぁとか思ってしまう。
キリッと形の良い眉、長い睫毛、スッと通った鼻筋、艶やかな唇まで、全てが完璧だ。
何故こんな美しい人が私と体を交えるのか、まるで分からない。
しかも、昨夜ワインを飲むまでは、ちょっとぶっきらぼうで、私の他愛のない一言にツボる変な人って感じだったのに。
起きたら話してくれるのだろうか。
それよりも、私は何故受け入れてしまったのだろう。
ワインのせいには出来そうもない。
「体は大丈夫か?」
急に声がして、体がビクッとなる。
「あちこち、痛いです…」
股が、とは言えない。
「すまない、抑えが効かなかった…」
「何故ですか?そこまで酔っているようには見えませんでした。」
「酔ったせいではない…気持ちが昂ってしまった…」
「一夜の過ち、でしょうか…」
急に、ヘルベルト様の抱き締める腕に力が入る。
「違う!違うんだ!!」
「君を愛さないと仰ったじゃないですか。知り合ったばかりで、流石に私も愛だとは思いませんが、酔ったからではないとすると何なんですか?!」
「恋、だと思う…」
ヘルベルト様は私の目を見て、小さく言った。
「初めてなんだ…誰かを想うのも…抱くのも…」
耳や顔が赤い。
「え…あんなにしておいて…?ヘルベルト様は、下半身のソードマスターとか…?夜の聖剣とか?!公爵様の秘技とか、いろいろ浮かんで来るんですけどーっ!!」
あまりにも下品かしら…
「ぷっ、はははっっ、あはははははっ!や、やめろ、やめてくれっっつ、腹痛いっ!」
急に笑い出す。
この人、いつもこんなふうに笑ってればいいのに。
「笑い過ぎだし。たぶんそこ、怒るとこですよ?」
怒らせたいわけじゃないけど。
「ふっ。だって頭おかしいだろっ!真面目な話に戻すと、俺は本来なら感情の起伏が無いんだ。せいぜい感じても怒りだけなんだ。でも、マリアベルと一緒に居ると何故か、昂ったり笑ったり出来るんだ。これは恋なんじゃないか?」
真っ直ぐ見て来る。
「うーん…どうなんでしょう…たまたま変な奴に遭遇しただけかもしれませんよ?」
こっちが有力な説な気がするけど。
「じゃあ、マリアベルはどうなんだ?どうして俺を拒否しなかった?」
「酔ってたから…でも、途中で酔いも覚めて…うーん…嫌ではなかった…」
「寧ろ最後は、」
縋りついて、と言いたいのね。
「おやめなさい!!」
恥ずかしい。
「あははっ、やっぱり面白いよ、マリアベル。」
捩れて笑う、ヘルベルト様。
「いつの間にか、名前呼びしてるし。」
「ダメか?マリアベルは長いから『マリ』とか『ベル』は?俺のことは『ヘル』と呼べよ!」
「では、『マリ』と呼んでください。ヘル様。」
「うわっ、マリ、もぅ愛称で!嬉しいもんだな!!」
一夜を共にして、態度が180度急変するヘルベルト様。
困惑する私を置き去りにして、楽しそう。思ったよりも、ずっと可愛い人。
気不味いよりはいいのだろうか。
自分の気持ちも整理したいし、私はしばらく様子を見ることにした。
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