6 / 46
6.お出掛け
しおりを挟む朝寝坊して、2人でゆっくり朝食を取る。
離れの侍女達は、ヘル様が私と一夜を過ごしたことを喜んでいるようだ。
「公爵様のあんなお顔、初めて拝見しました!笑うんですね。」
カリーナが驚いていた。
私が1番驚いているけどね。
食後のお茶を飲みながら、ヘル様がにこやかに話す。
「マリ、今日は仕事が休みだから、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?ドマーニ・ストリートまで行きたいんだ。」
なかなかの高級ブティックが立ち並ぶストリートだ。
「はい、お供致します。」
私はただの付き人。
デートっぽいのを期待するのはやめよう。
だって相変わらず2年で婚約解消するのだから。
恋が結婚に結び付くとは限らない。
一夜で優しくなった態度が、一夜で冷たくなる可能性もあるもの。
身の程知らずにならないように、心の中で線引きする。
でも何故か、胸の真ん中に、冷たい針がすうっと刺さったような痛みを覚えた。
そして、カリーナにアドバイスをもらって、あまり目立たない程度に身支度を整え、ヘル様と馬車で出発する。
向き合って座ったら、隣りに来るようアピールされたが無視する。
「あのぅヘルベルト様、邸宅外ではあまりそのような態度は…」
「大丈夫だ。婚約者なのだから。外でも愛称で呼んでくれ。寧ろ変な女が寄って来ぬよう、そうしてくれた方が有り難い。」
あ、モテるんですねぇ。
「承知致しました。」
「昨夜みたいな感じでいい。」
「無理です。どうしてもと仰るなら、少しお時間ください。出会って3日目で、そんなに砕けた態度は取れません。」
「でも、昨夜は、」
にやにやするヘル様。
「お黙りなさい!」
閨事を持ち出すな!!
「ぶっ、ぶふふふふっっ!」
思い出し笑いでご機嫌さん。
そんなこんなで、馬車はドマーニ・ストリートに到着した。
正直、私はこんな高級感溢れる場所でお買い物なんてしたことがない。
「マリ、あそこに行くぞ。」
「はい。」
入り口のドアを開けると、パーティ用の衣装がたくさん。
見るからに上品なマダムが出迎える。
ヘル様からすると、おばあさま位の年齢層かしら。
「お坊っちゃま、ご無沙汰しております。」
「久しぶりだな、ラムダ。今日は、こちらのマリアベル嬢のドレスを見に来た。適当に見繕ってくれないか?」
「あら、お坊っちゃま、女性をお連れしたのは初めてですね。お美しい方!」
「俺の婚約者だ。取り敢えず、30着!パーティ用と普段着になるやつ!!あとパーティ用は俺のも頼む。マリアベルと対になるデザインでな。俺のサイズは変わってない。」
「それは気合いを入れてお選びしますね!」
ラムダ様は楽しそう。
私のドレス?初耳なんですけどー。
「ヘル様?私にはそんなに必要無いかと…」
「ちゃんと聞いてた?マリは俺の婚約者だろ?公爵家の!」
「2年…」
「あっ…その話は今夜またしよう。取り敢えず、今はドレス選びが優先だから。」
普段は楽なドレスばかり着ているので、流行りのドレスに目が点になる。
しかし生地は最高級なので、見て触って楽しい。
どれを試着しても「マリ、似合う、可愛い」しか言わないベル様はあてにならないので、結局ラムダ様と相談して決めた。
「ラムダ、アクセサリーと靴もな!」
上客ですね、ヘル様。
ドレス選びが終わり、試着でクタクタ。
放心状態の私。
「マリ、近くのカフェに行くぞ。」
私の手を掴み、歩き出す。
少し歩くとオシャレな外観のスイーツ店に着いた。
「うわぁ、どれも美味しそうで可愛いですね!」
人気のスイーツって感じ。
「あれ?私達だけ??」
店内に誰もいない。
「貸し切ったんだ。マリとゆっくりしたくて。」
顔を赤らめて、モジモジしている。
「ヘル様、ありがとうございます。こういうのも初めてですか?」
「そうだ。よく分からないから、侍女達に聞いて予約したんだ。マリが喜んでくれたら嬉しいなと…」
「とても嬉しいです。こういう経験無くて…普段は家の執務ばかりでしたから。凄く美味しそうで、どれにしようか迷いますね!」
「全部注文すればいいじゃないか。食べ切れない物は侍女達に渡せばいい。」
太っ腹な公爵様。
「そうですね!カリーナ達、喜びます。取り敢えず、りんごのパイといちごタルトは今いただきたいです。」
目の前に並ぶ数々のスイーツに、気持ちも上がる。
「ヘル様は召し上がらないのですか?ほら、お口あーんして?」
「お、俺は甘い物は…」
焦るヘル様。
「あーんして?」
もう一度チャレンジ。
ヘル様が口を開ける。
真っ赤な顔が可愛い。
「わ、悪くないな…マリと食べると…」
恥ずかしがる姿もイケメン。
「一緒に食べると美味しいでしょう?」
「そうだな。食べさせてくれ。」
この人の感情や行動は『0』か『100』しか無いらしい。
昨夜からの態度、今すうっと腑に落ちた。
きっと生きづらい人生だ。
この後、馬車を半分埋めるスイーツの箱と共に帰宅した。
睡魔に勝てず、ヘル様に抱かれて公爵邸に入ったらしい。
侍女ちゃん達は、大喜びでスイーツに群がっていたそうだ。
395
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』
みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」
皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。
(これは"愛することのない"の亜種?)
前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。
エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。
それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。
速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──?
シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。
どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの?
※小説家になろう様でも掲載しています
※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました
※毎朝7時に更新していく予定です
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
【完結】賭けから始まった偽りの結婚~愛する旦那様を解放したのになぜか辺境まで押しかけて来て愛息子ごと溺愛されてます~
Tubling@書籍化&コミカライズ
恋愛
無事完結しました^^
読んでくださった皆様に感謝です!
ルシェンテ王国の末の王女カタリナは、姉たちから凄惨な嫌がらせをされる日々に王女とは名ばかりの惨めな生活を送っていた。
両親は自分に無関心、兄にも煙たがられ、いっそ透明人間になれたらと思う日々。
そんな中、隣国ジグマリン王国の建国祭に国賓として訪れた際、「鬼神」と恐れられている騎士公爵レブランドと出会う。
しかし鬼とは程遠い公爵の素顔に触れたカタリナは、彼に惹かれていく。
やがて想い人から縁談の話が舞い込み、夢見心地で嫁いでいったカタリナを待っていたのは悲しい現実で…?
旦那様の為に邸を去ったけれど、お腹には天使が――――
息子の為に生きよう。
そう決意して生活する私と息子のもとへ、あの人がやってくるなんて。
再会した彼には絶対に帰らないと伝えたはずなのに、2人とも連れて帰ると言ってきかないんですけど?
私が邪魔者だったはずなのに、なんだか彼の態度がおかしくて…
愛された事のない王女がただ一つの宝物(息子)を授かり、愛し愛される喜びを知るロマンスファンタジーです。
●完結後は感想欄開けます!
●本編は10万字ほどで完結予定。
●最初こそシリアスですが、だんだんとほのぼのになっていきます^^
●最後はハッピーエンドです。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる