【完結】 二年契約の婚約者がグイグイ迫ってきます

紬あおい

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6.お出掛け

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朝寝坊して、2人でゆっくり朝食を取る。
離れの侍女達は、ヘル様が私と一夜を過ごしたことを喜んでいるようだ。

「公爵様のあんなお顔、初めて拝見しました!笑うんですね。」

カリーナが驚いていた。
私が1番驚いているけどね。

食後のお茶を飲みながら、ヘル様がにこやかに話す。

「マリ、今日は仕事が休みだから、ちょっと買い物に付き合ってくれないか?ドマーニ・ストリートまで行きたいんだ。」

なかなかの高級ブティックが立ち並ぶストリートだ。

「はい、お供致します。」

私はただの付き人。
デートっぽいのを期待するのはやめよう。
だって相変わらず2年で婚約解消するのだから。
恋が結婚に結び付くとは限らない。
一夜で優しくなった態度が、一夜で冷たくなる可能性もあるもの。
身の程知らずにならないように、心の中で線引きする。
でも何故か、胸の真ん中に、冷たい針がすうっと刺さったような痛みを覚えた。

そして、カリーナにアドバイスをもらって、あまり目立たない程度に身支度を整え、ヘル様と馬車で出発する。

向き合って座ったら、隣りに来るようアピールされたが無視する。

「あのぅヘルベルト様、邸宅外ではあまりそのような態度は…」

「大丈夫だ。婚約者なのだから。外でも愛称で呼んでくれ。寧ろ変な女が寄って来ぬよう、そうしてくれた方が有り難い。」

あ、モテるんですねぇ。

「承知致しました。」

「昨夜みたいな感じでいい。」

「無理です。どうしてもと仰るなら、少しお時間ください。出会って3日目で、そんなに砕けた態度は取れません。」

「でも、昨夜は、」 

にやにやするヘル様。

「お黙りなさい!」 

閨事を持ち出すな!!

「ぶっ、ぶふふふふっっ!」

思い出し笑いでご機嫌さん。

そんなこんなで、馬車はドマーニ・ストリートに到着した。
正直、私はこんな高級感溢れる場所でお買い物なんてしたことがない。

「マリ、あそこに行くぞ。」

「はい。」

入り口のドアを開けると、パーティ用の衣装がたくさん。
見るからに上品なマダムが出迎える。
ヘル様からすると、おばあさま位の年齢層かしら。

「お坊っちゃま、ご無沙汰しております。」

「久しぶりだな、ラムダ。今日は、こちらのマリアベル嬢のドレスを見に来た。適当に見繕ってくれないか?」

「あら、お坊っちゃま、女性をお連れしたのは初めてですね。お美しい方!」

「俺の婚約者だ。取り敢えず、30着!パーティ用と普段着になるやつ!!あとパーティ用は俺のも頼む。マリアベルと対になるデザインでな。俺のサイズは変わってない。」

「それは気合いを入れてお選びしますね!」

ラムダ様は楽しそう。

私のドレス?初耳なんですけどー。

「ヘル様?私にはそんなに必要無いかと…」

「ちゃんと聞いてた?マリは俺の婚約者だろ?公爵家の!」

「2年…」

「あっ…その話は今夜またしよう。取り敢えず、今はドレス選びが優先だから。」

普段は楽なドレスばかり着ているので、流行りのドレスに目が点になる。
しかし生地は最高級なので、見て触って楽しい。

どれを試着しても「マリ、似合う、可愛い」しか言わないベル様はあてにならないので、結局ラムダ様と相談して決めた。

「ラムダ、アクセサリーと靴もな!」

上客ですね、ヘル様。

ドレス選びが終わり、試着でクタクタ。
放心状態の私。

「マリ、近くのカフェに行くぞ。」

私の手を掴み、歩き出す。
少し歩くとオシャレな外観のスイーツ店に着いた。

「うわぁ、どれも美味しそうで可愛いですね!」

人気のスイーツって感じ。

「あれ?私達だけ??」

店内に誰もいない。

「貸し切ったんだ。マリとゆっくりしたくて。」

顔を赤らめて、モジモジしている。

「ヘル様、ありがとうございます。こういうのも初めてですか?」

「そうだ。よく分からないから、侍女達に聞いて予約したんだ。マリが喜んでくれたら嬉しいなと…」

「とても嬉しいです。こういう経験無くて…普段は家の執務ばかりでしたから。凄く美味しそうで、どれにしようか迷いますね!」

「全部注文すればいいじゃないか。食べ切れない物は侍女達に渡せばいい。」
太っ腹な公爵様。

「そうですね!カリーナ達、喜びます。取り敢えず、りんごのパイといちごタルトは今いただきたいです。」

目の前に並ぶ数々のスイーツに、気持ちも上がる。

「ヘル様は召し上がらないのですか?ほら、お口あーんして?」

「お、俺は甘い物は…」

焦るヘル様。

「あーんして?」

もう一度チャレンジ。

ヘル様が口を開ける。
真っ赤な顔が可愛い。

「わ、悪くないな…マリと食べると…」

恥ずかしがる姿もイケメン。

「一緒に食べると美味しいでしょう?」

「そうだな。食べさせてくれ。」

この人の感情や行動は『0』か『100』しか無いらしい。
昨夜からの態度、今すうっと腑に落ちた。
きっと生きづらい人生だ。

この後、馬車を半分埋めるスイーツの箱と共に帰宅した。
睡魔に勝てず、ヘル様に抱かれて公爵邸に入ったらしい。
侍女ちゃん達は、大喜びでスイーツに群がっていたそうだ。
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