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29.魔獣狩り②
しおりを挟む魔獣狩りが始まった。
今のところ、ケガ人も居らず、淡々と野獣を倒して1日が終わるの繰り返し。
仮設テントでは、魔獣の気配さえ感じ取れない。
それはそれで、順調に進んでいるのだから安心だ。
「あと2日もあれば終了するだろう。」
ヘル様は騎士達と話している。
「公爵様、森の奥にいつもと違う黒いマナを感じるのですが…明日見て来ていいでしょうか?」
騎士団長のグレイブが申し出る。
「頼む。怪しいと判断したら、すぐに知らせてくれ。違和感は俺も感じているが、原因がよく分からないんだ。黒魔術の可能性も否めない。」
少し不安が残りつつも、明日に備えて体を休めることが大切だ。
「ヘル様、魔獣と黒魔術はどういう関係がありますの?」
「マリには話すが一応秘密事項だからな。そもそも竜の影響を受けて魔獣が発生するんだ。竜も『白竜』と『黒竜』の2種類が居て、狩るのは『黒竜』だけだ。」
昔は友好関係にあった『白竜』が、人間への羨望を拗らせ、嫉妬や悪意を増長させ『黒竜』が誕生した。
負の感情で黒いマナが蓄積され、体の表面を覆う程の憎悪の塊と化したのが『黒竜』であり、蓄積された黒いマナは黒魔術に有効らしい。
『黒竜』の中でも、先祖が人間と交わって生まれた子が黒のマナ使いとなり、黒魔術も使える。
『白竜』も『黒竜』も上位と下位の階級があり、上位の竜は人間の姿にもなれる。
「昔は、竜と人の恋愛もアリだったということなのですね?恋や愛があれば、その数だけ嫉妬もあるのでしょうね…」
「そうだ。ちなみに、俺はこの話を『白竜』の王に聞いたんだ。まだ竜が見分けられない頃、大ケガをしてな。竜に治してもらったんだ。それ以来、竜のオーラで善悪が分かるし、心臓部の魔石の色で決定的な判断出来る。」
「王と出会うなんて、不思議な出会いですね…」
「俺達もな。」
そういえば、そうだ。
「ヘル様、私を婚約者に選んだ理由、まだ聞いてませんでした。」
「皇室の貴族名簿を見て、何となく決めたんだ。何でだろう?伯爵家位なら揉めても言い負かせることが出来そうだからかな…」
「まぁ確かに。『俺は君を愛さない』ですもんね。ふふっ…婚約解消で揉める気、満々でしたのね?ふふっ…」
「マリに『承知致しました』とすんなり言われた時の衝撃な!ぷぷっ!!この女、普通じゃないって思ったさ。」
「お互い様ですわね。『成り行き』とか、暴言も甚だしい。ぷぷっ…」
「この話、なかなか封印出来ないな。ネタになってる。けど、あれがあって今が在るってことで。マリ、キスしたい。今すぐ!」
「相変わらず、意味不明なお方ですわね?分かりやすいのは欲望に忠実ってことかしら…」
今夜も軽いキスで、おやすみなさい。
垂れ耳の野獣、夜の聖剣はまだまだ封印。
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