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10.生い立ちと公爵との密談
ディート・ダグラスは、幼い頃に流行り病で両親を亡くし、祖父と祖母に育てられた。
祖父は剣術に秀でており、辺境伯として魔獣征伐を行っていた。
祖父は、孫には継がせたくないと、幼い頃からひと通りの知識を身に付けさせたが、血は争えずディートも剣術に長けていた。
ある時、祖父の命の危険を救う程の活躍を見せ、後を継がせることを決意した。
辺境伯と行っても、領地の民は左程多くなく、邸内の使用人も数名だ。
魔獣が出現する山を管理するだけの役割りと言っていい。
こんな辺鄙な領地で、孫は結婚出来るのだろうかというのが祖父の唯一の悩みだった。
そんなディートは、特に大きな野望もなく、魔獣征伐以外は静かに暮らしたい人間だった。
両親の記憶はなくて、穏やかな祖父母に育てられ、山と湖しかないような、静かなこの地が好きだった。
ディートは、首都の陛下に報告に行くのさえ面倒だったが、ある日一人の令嬢が話し掛けてきて、考えが変わった。
それまでは、毎年の陛下への報告の義務を怠り、一年おきに行っていたが、令嬢と出会って毎年行くようになった。
「あの令嬢に、また会いたい!」
それだけの想いで。
しかし、何度か挨拶を交わしても上手く話せなかったせいで、そのうち令嬢は話し掛けて来なくなった。
焦ったディートは、それからキャンベル公爵家に求婚書を五回送った。
一度公爵から断りの手紙が来ただけで、あとは無視された。
こうなったら!と魔獣征伐の報告で、陛下に如何に苦労したことかと切々と訴え、褒賞をもらう方向に話を持って行った。
今まで、陛下に対しても無表情・寡黙を貫いてきたので、陛下も、たまには褒美位は…と思ってくれたらしい。
「そなたは何が欲しい?領地か?爵位か?何でもいいぞ?」
「フィリア・キャンベル公爵令嬢と結婚したいです!」
キッパリ言うと、陛下は笑った。
「そなたが女性を望むとは!これは驚いた!!うん、あの子はいいな。聡いし明るくて、そなたには合うかもしれん。早速、キャンベル公爵に皇命として伝える。あとは自力で頑張るがよい!!」
やっとだ。
やっとここまで来た。
ディートは、キャンベル公爵に隠密に会いに行った。
そこで、今までの想いを全て打ち明けた。
「フィリアのことを、まだよく知らないのではないか?ディート殿が女性慣れしていないのは見て分かる。それなのに、うちの娘で良いのか?」
「フィリア嬢にしか心が動かないのです。あの笑顔をずっと見ていたいのです。もう今回ダメなら諦めて、生涯独り身でいようと思います。」
「分かった。そこまで言うなら、こちらとしても手を打とう。あの子は一筋縄ではいかないところもあってな。親だから出来る秘策がある。」
こうして、ディートはフィリアの前に立つことが出来た。
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