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18.寄り道 ②
しおりを挟む湯浴みの後、ひと息ついてお祭りに向かう。
テオドリクスは、仮面を付けているがラフな格好だ。
念の為と短剣は服の下に潜めている。
この村のお祭りは『花祭り』というらしい。
見渡す限り黄色い花がたくさんだ。
きっとミモザだろう。
村の少女がミモザの花冠を売りに来た。
たくさんのミモザを使って、綺麗に仕上げてある。
テオドリクスは1つ買った。
支払いの時、少女がテオドリクスの仮面をじっと見ていたが、そんなに恐れている様子ではなく、ほっとした。
道路脇の屋台ではミモザの蜂蜜をかけた小さなパンケーキを売っていた。
私が小走りに買いに行き、テオドリクスと半分こで食べた。
「テオは蜂蜜って好き?私は普通。」
「嫌いじゃないよ。蜂蜜よりメイプルの方が好きだけどな。」
「あー、分かるー!ちょっとだけ蜂蜜の匂いが苦手なの。」
「俺もだ。」
こんな普通の会話だけど、テオドリクスのことが知れるのは嬉しいものだ。
「テオ、あっちの丘の方に行ってみない?」
「いいぞ!」
手を繋いで少し歩くと、小高い丘から村が一望出来る。
ミモザだけでなく、花がたくさん。
「素敵な景色ですね。首都の庭園も綺麗ですが、やっぱり人の手が入ってるのを感じますよね。ここは自然の美しさがあります。」
「自然の美しさかぁ。セシリアみたいだな。」
「え…?素朴ってこと??」
「いやいや、違う。飾らない美しさってことだよ。女性は着飾ったり化粧したり、いくらでも綺麗にする方法があるじゃないか。でも、セシリアは着飾らなくても綺麗だし、着飾ったら誰にも見せたくない位に美しいよ。一番は心の美しさだけどね。」
「おだてても何も出ませんよ?ふふ。」
「言葉にするのは難しいな。でも、俺にはセシリアが何よりも綺麗だし、愛してるよ。」
「私もです。」
繋いだ手にちゅっと口付けをする。
ふと顔を見ると、テオドリクスが真っ赤な顔をしている。
「えっ!?ちょっとどうしたの?」
「セシリアが急にそんなことするから…心臓に悪い…」
「ふっ、ふはははっ!それ以上のこともしょっちゅうしてるのに?ちょっと待って、何故照れる!?あはははっ!!!」
「それとこれは別だ。不意打ちはずるい…」
繋いだ手は汗ばんできたし、反対の手は赤らんだ顔を覆ってるし、テオドリクスの意外な一面を見た気がした。
うちのワンコ、可愛いぞと心の中でほっこりするのだった。
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